高速道路予定地選定の一般的指針としてのハビタット影響評価の試み





今西純一、森本幸裕. 2002. 高速道路予定地選定の一般的指針としてのハビタット影響評価の試み. 国際景観生態学会日本支部会報 7(2), 41-49.

摘要

高速道路等の大規模構造物の建設にともない、計画初期段階から生態系への影響を評価し、その影響を回避することは欠かせない。できるだけ詳細で長期間にわたる調査が望ましいことは明らかであるが、道路予定地を選定する計画初期段階において、多数の箇所でそのような調査を行うことは現実的ではない。従来の生態系影響評価の方法は基本的にメリットを持っているのであるが、生物全体を保全する全体論的な視点に欠けていた。このような背景のもと、高速道路ルート選定初期における一般的指針として、複数代替ルートがハビタットに与える影響を評価する手法について研究を行った。評価手法は、景観生態学的知見に基づき設定された生物種群とそのハビタット依存度指数(habitat dependency index(HDI))を用い、全体論的アプローチを具体化した。評価手順は以下の通り。1)評価対象域を決定、2)現状土地被覆レイヤーを作成、3)ハビタット影響評価のための生物種群を設定、4)各土地被覆にたいする各生物種群のハビタットバリューレベルを定義(ハビタットバリューマトリックス)、5)各生物種群について、現状土地被覆レイヤーから、ハビタットバリューマトリックスに基づき、各ハビタットバリューレベルに0(最低)から1(最高)までのあいだの数値を割りあてたハビタットインパクトレイヤーを作成、6)各生物種群ののHDIを算出、7)道路影響幅の設定、8)各生物種群のハビタットインパクトレイヤーの値にHDIを乗算、9)道路影響範囲内にあるHDIにより重みづけられたハビタットインパクトレイヤーの値を合算し、ハビタットインパクトとする、10)2つの変数(手順5のハビタットバリュー数値、手順8の道路影響幅)を変化させ、手順5から10を繰り返して、変数にたいする感度の解析を行う、11)感度解析の結果をあわせて、各ルートのハビタットインパクトの結果を評価する。アメリカ合衆国モンタナ州フラットヘッド特別保留地を通るUS highway 93を事例とし、提案した手法の結果の適正さと変数の感度を考察した。その結果、3つのルートの順位は変数を変化させてもほぼ一貫しており、本評価手法が高速道路初期段階におけるルート選択の一般的指針として使用が可能であることを示唆した。感度解析を行った2つの変数の効果は比較的小さいかった。ハビタットバリュー数値の変数の効果は、グリッドの数とともにHDIの値を操作すること、より長いルートに対する肯定の度合を変化させることの2つであった。道路影響幅の変数の一般的な効果は、ルート間のハビタットインパクト評価の差を増加・減少させることであり、より狭い道路影響幅はより大きな差を作る傾向があった。景観生態学的生物種群の使用は、全体論的評価法としてのメリットがある。本評価手法の相補的使用は、種の稀少性、典型性、上位性に基づく従来のハビタット影響評価を補強するであろう。ハビタット影響評価手法の詳細な特徴を調べるために、実際のフィールドデータを用いたさらなる検証が必要である。








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Last updated on February 23, 2003