【山行名】  :暴風の飛騨沢
【日程】   :2007年4月28日
【山域】   :槍ヶ岳 飛騨沢
【メンバー】 :伊能さん、のーきょーさん、ごましお
【行程】    :駐車場4:50 〜 穂高平5:45 〜 柳谷過ぎ6:5 〜白出沢6:50 〜 チビ谷7:55、8:10 〜藤木レリーフ8:40 〜 槍平9:20、9:40 〜標高2550m11:30、12:0 〜標高2900m13:10 〜飛騨乗越13:55、14:55 〜2950m地点15:10 〜槍平16:5、16:25 〜藤木レリーフ16:47〜白出沢 17:50〜柳谷過ぎ18:20、18:35 〜駐車場19:40

夏山を含めて飛騨沢から槍ヶ岳に行ったことが無いので、以前からスキーで登ってみたいと思っていた。
2003年の秋に西鎌尾根を歩いている時、眼下に広がる飛騨沢の紅葉が綺麗だったのを思い出す。
今回、昨年行った伊能さんの企画に便乗して初めて出かけることになった。


どうやら天気予報では、寒気の南下に伴って雷雲が発生するようなので、北アルプスに来ないうちに山荘まで登ってしまうよう、早出をして深夜新穂高に入った。
ここで問題発生、のーきょーさんが寝袋を忘れてきたので、伊能さんのカバーを借りて寝ることになった。
明日の出発を決めるため、携帯で天気状況を確認するが、雨雲が早くも架かってきている、1日停滞も考えるが、暇になるので計画通り行くことになった。





出発前に雨が降り始め小雨の中へっ電点けて出発だ。穂高平辺りで明るくなり小屋前で少し休んだ。ガスが垂れ下がり今日1日天気が好転することは無さそうだ。柳谷までは林道歩きが続くが、直ぐに雪が残っておりスキーに履き替えた。
遠くで雷鳴が聞こえて不安が過ぎるが行くしかない。





白出沢を過ぎて、一旦河原に下り立つ。雨はほとんど止み、一瞬晴れ間も覗いていた。雪の上には微かなトレースが有るだけで先行者がいるか分からず進む。伊能さんが河原沿いにルートを取りながらトップで歩いた。チビ谷に近づくと大きなデブリが谷一面を覆っている、真冬に来たら危険なのは想像できる。この時期でも不気味さを感じた。
滝谷手前で、二人組が下りてくるので様子を伺うと、槍平から上はガスで視界が無いらしい。一人は昨夜避難小屋に泊まり、もう一人の女性は2時に新穂高を出て歩いて登ったが、ルートが分からず諦めて下山すると話していた。
何れにしても天気が悪そうで撤退もあり得ると思っていた。




雪に埋もれる滝谷避難小屋と藤木レリーフを発見する。右の谷は滝谷で上部はガスで真っ白だった。ルートを左に折れ槍平を目指した。




ほぼ5時間で槍平に到着する、ここまでは予定通りに登れた。まだ少し疲れた程度で、余裕はある。
小屋に近づくに連れ昨夜からの新雪が積もり気温が下がって来ているのが分かった。幸い前方にはテントが一張り見え展望が開けているし時間もまだ早いので、この時はまだ大丈夫だろうと判断した。




小屋を出てしばらく雪原を歩くと上りになる、疲れ始めたが順調に高度を上げて行ってると、上から歩いて下りてくる人がいた。どうやら稜線は風が強く、この人は下りるタイミングを計って小屋を出たそうだ。これを聞き私は少し不安になってしまった。だがここまで来たのだから登るしかないと覚悟を決めた。





宝の木辺りから傾斜が強くなり、休憩する頻度も多くなると、雲行きも悪くなってきた。
標高が高くなる従ってガスも出てきて視界が無くなってくる。新雪も徐々に深くなってきた。
右手に赤布の旗竿が見え始めたので辿って登った。




標高2550m11:30〜12:0
急に近くで雷鳴が轟き雪も降り始め立ち止まることが多くなった。さっきまであった視界も無くなりホワイトアウトになり始めた。危ないので穴を掘りツエルトを張りしばらく通り過ぎるのを待つことにした。
寒気が下がって空気も寒くなってくる。30分ほど待っている間に体が冷えて指先が冷たくなって少し辛い。
時間は12時になったばかりで余裕があるのでそのまま登った。

標高2900m辺り
真っ白な視界の中、赤布を探しながら登る、サングラスも凍り始め視界が無くなってきた。
標高が上がると段々強風が吹き始め、空気も薄くなって呼吸し難くなってきた。体感気温が急激に下がり寒くなってくる。
雪面も氷化してクトーを付けても流れるようになった。アイゼンを付け登ったのだが、風と冷気で装着に手間取り2人に遅れてしまった。ベルトが固まり上手い具合に閉め込む事が出来ない、それに素手で装着したものだから手に感覚が無くなってきた。
時折ガスが切れ、稜線が見えるが、先行する2人は風を受け立ち止まったまま動かない、相当に強そうだ。
気持ちが焦ってくる、何とか付けて後を追った。

飛騨乗越 13:55〜14:55
稜線に近づくと烈風が轟音を鳴り響かせ乗越を通り過ぎている。背負っている板が風を受けて歩き難いし、油断すると飛ばされそうになる。
伊能さんが小屋に向かって稜線を上がろうとするが、風で体を持って行かれそうになる。このまま進むのは危険なので、スキー板を残値して小屋を目指すことにした。板をそれぞれ繋いで固定している時私のアイゼンが外れ、付け直すが上手く付けられない。伊能さんの強力な歯で装着出来助かった。
再び小屋を目指して、数メートル進んだところで、「アッ!」。今度は伊能さんのアイゼンのプラスチック製の紐が切れてしまったのだ。この状況で片足アイゼンでの歩行は死に行くようなもの。あと少しだが、1時間以上稜線にいて風で体力が奪われ、低体温症になりつつあり身震いが始まった。長い下山を考えると辛いが潔く撤退決定だ。


標高2900m辺り 15:10
兎に角、烈風から逃れたいのでシールを付けたまま凍った斜面を慎重に滑るが、硬くなった体では思うように操作ができない。転倒するとズルズル新雪の貯まった所まで滑り落ち怖い思いをする。
漸く風が少し治まったのでシールを外した。身震いが止まらず苦労した。
アイスバーンの上に新雪が程良く貯まっている。四ッ岳以来のフカフカパウダーなのだが今日は楽しむ余裕は無い。体力を奪われた3人は、それぞれターンの度に転倒する有様だった。



標高2500m辺り
ガスが無くなり視界が出てきた。振り返って私のシュプールを撮影するのが精一杯で、写真撮影する余裕は無い。
ここまで下りると随分暖かく感じ、震えも無くなった。
下から6人ほどのパーティが歩いて登ってきた。この時間帯で無事に小屋に辿り着けるか心配だ。

槍平 16:5 〜16:25
途中から数本のシュプールが出来ている、悪天候なのできっと今夜は避難小屋に泊まって明日登るのだろう。
小屋には大勢のスキーヤーが入っており、今夜は満員御礼のようだ。
無事にここまで下れ一安心だ、体はヘトヘトに近いが泊まるわけにはいかない、名残惜しいが下った。

柳谷 18:20〜18:35
槍平から下は何本も下ったトレースが有り、人も多かったようだ。滝谷避難小屋前で一度のーきょーさんがトレースを外し川に落ちそうになりヒヤッとするが、それ以外は何もなく林間を縫うようにしてひたすら滑るだけだ。夕方になり雪面が凍りつつあり意外と滑り易かった。
白出沢手前で一度休み、登り返しが体に堪える。林道に出てからはスケーティングしながら下ことが出来た。
再び板を担ぐと肩に重くのし掛かってくる。この状態での林道歩きに滅入ってきた。

新穂高駐車場 19:40
穂高平手前から暗くなったが、へっ電を出すのが面倒なのでそのまま歩く。のーきょうーさんの温度計では、稜線で−7度まで下がったらしい。体感温度はそれ以上に感じた。
林道周辺の木々に粉雪が積もっており、真冬並みの寒気団が下がったのが伺える。
真っ暗の中、退屈な林道歩きにウンザリしながら漸く帰って来た。約15時間の行動によく耐えました。

あとがき
予想以上の天候の悪化に対応出来ず、装備不足や問題が発生し、思わぬ厳しいスキーになった。
今回の教訓を、来シーズン以降に活かしたい。
それに、飛騨沢日帰りトレーニングに行って、しまなみ海道ウルトラの練習ができたと思うと納得できる。


P.S 実際1カ月後のしまなみ海道ウルトラ遠足は、今回とほぼ同じ行動時間でゴールできたので、敗退が役立ちました。