植物逸話

 

マリーゴールドの悲劇

蜘蛛の序章

それは八月初めの暑い日のことだった。
鉢植えに水をやろうとしていた私は、4鉢あるマリーゴールドの1鉢に、葉と茎を覆うように蜘蛛の巣が張っているのに気が付いた。
「まったく・・蜘蛛がこんなところに巣をはったのか」
目を凝らして見ると、たくさんの小さな蜘蛛が歩き回っている。
「さては子蜘蛛がたくさん生まれたんだな」
私は、気持ち悪いのと面倒くさいので放っておくことにした。しかし、それは大きな間違いだったのだ。

褐色の悪魔

3日もしないうちに、蜘蛛の巣に覆われた株が枯れ始めてきたではないか! 多くの葉が惨めにしおれ、日に日に茶色く変色していく。
この蜘蛛たちのせいなのだろうか? しかし蜘蛛が巣を張った植物を枯らすなんて話は聞いたことがない。わたしは、蜘蛛よりもここ数日の猛暑が原因ではないかと疑っていた。
そうこうするうちに蜘蛛の巣は他の鉢にも広がり、他の株の葉も枯れ始めていた。そして最初の株は茎まで変色し、すでに手の施しようがない状態になっていた。

聖戦の狼煙

「やはりこの蜘蛛はおかしい」
そう思った私は、蜘蛛の巣を丁寧に取り去り、枯れた葉を取り除いて、手元にある唯一の農薬「オルトランC」を散布した。しかし、いっこうに効果が出ない。相変わらずマリーゴールドの葉は枯れ続けているし、ペースこそ落ちはしたが蜘蛛は巣を作り続けている。

光りあれ

最初に被害を受けた株は、すでに枯れてしまった。他の株も、ほとんどの葉を切られ、茎にはシワが寄り、変わり果てた姿になっている。
「もう、どうしようもない・・」
その日から水やりを止めてしまった。数日後、全てのマリーゴールドは完全に枯れ果てた。
最初に蜘蛛の巣を発見してから10日も経たない間だの出来事だった。
私が、この虫が蜘蛛ではなく「ハダニ」という害虫であることを知ったのはつい最近のことである。

 

病害虫

ハダニ

体長0.2 0.4 mm。羽はない。群せいし、ときに蜘蛛の巣状の網を張る。きわめて短期間で世代を繰り返し、ひどい被害を及ぼすことが多い。高温、乾燥を好み、雨を嫌う。
葉水をかけることで発生を防ぎ、発生してしまった場合はケルセン、モレスタン等の殺ダニ剤を散布する。