「は、」
最初の言葉の一言目で田辺の上に、なぜか金物が降ってきた。
割れる眼鏡。
「…ご、ごめんなさい。
はじめまして…た、田辺、田辺 真紀(たなべ まき)です。」
[選択1]
(今、眼鏡割れてなかった?) / (呆然とする。)
[「え、はい…それはもうしっかりと。
…。
あ、こ、交換したんです。
ちゃんとアイテムを見たら、割れた眼鏡が増えてます…よ。
…あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないですよね。その…昔から運が悪くて。
…ごめんなさい。」]
田辺は、頭を下げた瞬間に、落ちていたジュースの缶に足を滑らせて転んだ。
割れる眼鏡。
「…ご、ごめんなさい。ごめんなさい!」
田辺「そ、その。
よろしかったら、今日は、今日は…
いい天気ですね。」
[選択1-1]
(そうね。)
(以下※に続く)
[選択1-2]
(頼み事?)
田辺「…い、いえ、その、私の家に…
遊びに来ませんか…。」
[選択2-1]
(いや、用事があって…。)
※
田辺「…………。」
田辺は、泣きそうな顔をしている。[イベント終了]
[選択2-2]
(行こう。)
田辺「ほんとですか? よかったぁ。
昨日、親切なひとからイチゴ貰ったんです。
それで、…その…いっしょに…。
すぐ近くなんです!
3分くらいで、それで、あの。」
- 10分後 -
田辺の家が、燃えていた。
田辺「…。」
おばさん「あら、真紀ちゃん。
弟さんから、伝言預かっているわよ。」
炎を眼鏡に映したまま、田辺は、よろよろと手紙を開いた。
全員無事、現在空き地でテントを広げた。
今日はメザシ。
おばさん「…気を落とさないでね。」
田辺「…。」
[選択3]
(…なんて言おうかな。) / (燃える家を見上げる。)
呆然としました。
田辺は無一文になった! 所持金0!
「○○さん!
…見てください。
アルバイトで、縫ってみたんです。
素敵でしょう? うふふ。
これを着る人って、…きっと、綺麗でしょうね。」
[選択1]
(あんまり騒ぐと…。) / (とりあえず上を見る。)
田辺の髪が、不自然に引っ張られている。
「…きっと…私なんか着ても、似合わないでしょうね。」
上から、突然巨大なやかんが現われた。
降ってくる。
「…はい?」
田辺は、頭にやかんが当たった瞬間に、ドレスをやぶってしまった。
「はうぅぅ。」
田辺は無一文になった! またも所持金0!
「…お金に、困ってるんですか?」
[選択1-1]
(うん…実は。)
「…え、ええと。これ、使ってください。」
田辺からお金を貰った!
「え、あ、いいんです。この間、宝くじに当ったんで。
困ったときはお互い様ですもんね。」
例によって、田辺の所持金0!
[選択1-2]
(いいえ、困ってないけど。)
「そうなんですか?
ええと、なにか困ったら、言ってくださいね。
少しくらいなら、力になれますから。」
「あ、あの…。
運…
いえ、なんでもありません。」
田辺はこちらを見た後、下を見た。
「…この髪…切っちゃおうかな。
え、…あ…聞こえました?
冗談、冗談です。
…冗談…。」
田辺の肩に乗っている小神族が、田辺の髪を引っ張ってる。
あれでも幸運の女神のようだ。
不幸の方に行かないように誘導しているらしい。
こちらを見ると、慌てて頭をさげた。
照れている。
「ど、どうかしたんですか?」
笑って首を横に振りました。
田辺「わたしって、極度の近眼なんです。
それで…すぐ何かにぶつかってしまって…。」
[選択1]
(とりあえず上を見る。) / (とりあえず下を見る。)
田辺「え、…あの…。」
田辺は、指で眼鏡をあげて至近に近づいた。
田辺「なに、ですか。」
田辺の髪が、不自然に引っ張られている。
[選択2]
(なぜか照れる。) / (とりあえず横を見る。)
田辺「…見えません。
…額に…息が当たります。くすぐったくて…。
…て…。
…え、あっ…ご、ごめんなさい。」
本田先生が、全開で突っ込んでくる。
[足音]
本田「おらおら! なんか知らんけど!
なんぴとたりともぉぉぉ!
俺の前は走らせん!」
田辺は、跳ね飛ばされて盛大にこけた。
本田「はっ、俺はなぜ暴走を?
ああ、田辺! バキッ…って…なんだ。
…えへへへへ。
ごめん。眼鏡…ふんじゃった。」
田辺は倒れたまま、いい雰囲気だったのにという気持ちを指にこめた。
本田「い、いや、悪気はなかったんだ。
その、なんか、お前見たら急がないとって。
…なんでだろ。
…いやその、またバキッって
アハハハ、許せ。じゃ!」
本田は、首をひねりながら逃げていった!
田辺「…。」
○○「…。」
田辺「…だい…丈夫です。
眼鏡、変えましたから…。」
○○「…。」
田辺「ごめんなさい…いえ、大丈夫です。
…私、前向きですから。」
田辺は眼鏡修理で無一文になった! またも所持金0!
「私、思うんです。
明日は、きっといい日だって。
昨日よりも今日よりも、明日はきっといい日だって。
裏づけないけど、そう思うんです。
明日は、きっといい日になります。
いつも、努力してるじゃないですか。
昨日よりも今日よりも、明日は努力した分だけ、きっと前に進んでますよ。
努力は報われないときもあるけれど、それよりもっともっと努力すれば、前に進めます。
-1+2なら答えはプラスになるんです。
-1億+1億1でも、答はプラスです。
だから、昨日よりも今日よりも絶対に明日は良くなります。努力する限り。
先に寿命はつきるかも知れないけど、その時は天国で努力すればいいんです。」
青い髪の田辺が、綺麗な青い髪の女神に見えた。
「誰が、どう言ったって、いいじゃないですか。
重要なのは…きっと重要なのは、みんながどう自分を思うかじゃなくて…、
みんなが、どれだけ幸せになれたか、です。
ね?
だから、きっと、なんとかなりますよ。
運も、他人も関係ない、自分だけで、答えは決まるんだから。
努力すれば…きっと。」
「…え? 私の髪…ですか。
…気に、なりますよね。やっぱり。
………ええと。
私、みんなと違って…実験体だったから、髪、青いんです。
元々、幸運遺伝子を書き換えて、究極の運が良い戦闘種族を産んだつもりだったんですけど…なんか…失敗したみたいで…。
…元々、能力が勝手にあがるなんて…、虫が良すぎますよね。
わたしを作った人達は…。
…それで…、わたし、生まれたときから失敗作で…。
運が、すごく悪くなったんです。
研究所も潰れちゃうし、戦争もはじまっちゃうし、お金は…ないし…。
それで…それでも、お父さんとお母さんが、それでもいいからって、私を引き取ってくれたんです。
そのお父さんも、破産して失業しちゃって…。
でも、まだ笑ってて、…それが…哀しくて…。
大事なことだから…言わなきゃいけないと…
ずっと、ずっと思ってたんですけど。
…勇気…なくて…。
…ごめんなさい。
今まで…黙ってました。
私の近くだと、だから…不幸になるんです。
…ごめんなさい。ごめんなさい!
ずっと、ずっと秘密にしてたんですけど、
悪気は…、
…ごめんなさい。」
田辺は、走っていった。
「…なんで…なんで…、まだ関わろうとするんですか。」
[選択1]
(不運が恐いの?) / (こっちの勝手でしょ。)
「…。」
田辺は、目をつぶり上を向いて、しばらく何かを我慢した後、こちらを見た。
「…信じて、ないんですか。
私の言ったこと。
…遺伝子に、幸運も不幸もないと、そう言いたいんでしょう。
…それとも、すごく、前向きなんですか。
私を、…私を受け入れてくれた家族みたいに。
………。」
[選択2]
(前向きかな。) / (遺伝子に運命が書いてあったら大変だ。)
「………。
なんで…なんで…こうなるのかな。
私が…好きな人ばっかり…。
…そばに…居てくれなくてもいいのに…。
幸せで居てくれればいいのに…。
なんで…かな…なんで…、…こんなに不幸なんだろう…。」
[選択3]
(そういうのも幸運といわないか?) / (微笑んでいる。)
「…え…?
…。(※真剣顔)
…。(※俯き顔)
…ごめんなさい…。
その…誰にも負けないくらい…
前向きに生きようと思っているんですけど…。
…ごめんなさい…もっと、頑張ります…。
…だから…
…ええと、その…。
…す…
…意気地なしだけど…頑張ります…。」
田辺の上に士魂号の装甲が落ちようとしています。
[選択1-1]
(助ける。)
とっさに身体が前に出ていた。
降ってくる装甲板から、田辺をかばう。
背中に衝撃。思わず血反吐が出そうになった。
田辺は、青い髪を淡く輝かせて眼鏡を少し上げた。
眼鏡の奥の表情は分からないが、きっと、驚いているのだろう。
髪が不自然に引っ張られている。
田辺「ありがとうございます。ありがとうございます! 怪我はありませんか、怪我はありませんか?」
普通死ぬぞ、と思いながら田辺を見た。
どうやっていつも切り抜けているんだろ。
骨のいくつかが折れたような感触。
流れる汗。
中村「滝川ぁ、腕動かしてはいよ。」
滝川「うぃーす。」
士魂号の腕が上がった瞬間、二つ目の装甲が田辺と○○の上に落ちてきた。
森「なにやってんですか!」
中村「滝川!」
滝川「俺のせいかよ!」
田辺「あ、あの。」
○○は、田辺の上で、意識を失った。
[整備員詰め所]
田辺「…よかった。気を取り戻したんですね。」
本田「バカ、動くな。いくつか骨がやられている。」
田辺「…よかった、よかったぁ。」
田辺が肩を落として抱きついてきた。
激痛が走った。
本田「おっ、おい。」
田辺は、泣きながら○○を抱きしめている。
二度、三度走る激痛。
田辺「昔から、私を助けに来てくれた人がみんな、大怪我していて…それで…死んじゃったらどうしようと思ってて…だから、だから。」
ガクッ。
本田「男だな。○○。
[女だけど。]」
[選択1-2]
(いつものことなのでほっとく。)
田辺の眼鏡の破片が、奇麗に舞った。
よろよろと装甲の隙間から、こぶをつけて田辺が出てくる。
中村「いつも思うばってん、よお、あれで死なんね。」
滝川「それより記録的な運の悪さを気にするべきだとおもうけど。」
森「変なこと話してないで、救出してください。」
中村「はい。」
滝川「はい。」
※この後、田辺嬢はステータスが減ることもなく、至って元気であるようです。さすが。
「…最近、空き地に家庭菜園を作ったんです。
…食料品が高くて…その、困ります。」