世にも不幸なできごと

米国で人気の児童書「世にも不幸なできごと」がドリームワークスによって映画化されました。
両親を火事で失った3人の孤児が、行く先々、さまざまな不幸に直面するというアンハッピーな物語です。
シリーズ13巻で完結ということで、日本での翻訳は8巻まで出ています。
映画は、1〜3巻までの内容をまとめて製作されているようです。

この本の前置きには、「この物語にはハッピーエンドは無い。悲劇的な話が嫌ならこの本は読まないほうがいい」といったことが書かれています。
この前置きには作者の何らかの意図が隠されていると思うので、内容が本当に読むに耐えないものであるかどうかはコメントできないのですが、 私が考えるに、この作者、かなりのひねくれたユーモアの持ち主のように思えます。

娘に感想を聞いたところ、主役の子供たちは魅力的で、オラフ伯爵は怖くて、物語は面白かったそうです。
私の感想としては第1巻、第2巻は不可なしですが、第3巻以降は免疫ができたせいでしょうか、とても面白く読めました。
子供だましの展開や外人特有のブラックユーモアがあるので、人それぞれ好みが分かれそうです。

映画の方は、昨年12月に全米公開されて、大人気だそうです。
2005年5月に日本でも公開の予定です。

なお、原作者のレモニー・スニケットは、ダニエル・ハンドラーという作家の別名です。(05/02/21改稿)

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最悪のはじまり
【1】最悪のはじまり

塩からビーチの海岸で遊ぶ3人の子供たちの前に、遺産執行者を名乗るミスター・ポーという男が現れます。
ポーは3人の運命を大きく変える悲しい知らせを伝えに来たのでした。
ボードレール家の遺産をねらうオラフ伯爵から、子供たちは逃れることは出来るのでしょうか。

子供たちのキャラクターが、とても魅力的です。
発明が得意な長女のヴァイオレット、読書好きな長男クラウス、何でも噛むのが好きな次女のサニーと、 3人とも、それぞれ自慢の特技を持っています。
特に、サニーは、とてつもなく赤ちゃんばなれしていて笑えます。

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爬虫類の部屋にきた
【2】爬虫類の部屋にきた

前回のできごとの後、ボードレール家の3人の子供たちは、ミスター・ポーの車で、次なる悲劇の舞台となる場所へ向かっていました。
そこで子供たちを待ちうけるのは、爬虫類学者のモンゴメリー博士。
はたして、博士はどのような人物なのでしょうか。

オラフ伯爵は、さらに強暴になり、ミスター・ポーは、さらに頼りなく、レモニー・スニケットのナレーションは、さらにうっとうしさが増しました。
情けない大人たちに囲まれて、子供たちの苦難は続きます。

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大きな窓に気をつけろ
【3】大きな窓に気をつけろ

次に子供たちが向かった場所は、哀切の湖を見下ろす丘の上にある家でした。
そこにはジョセフィーンというおばさんが一人で住んでいました。
ジョセフィーンおばさんは、変わった性格の持ち主でしたが、悲しい過去があったのです。

1作目2作目を読んで、余り期待していなかったせいでしょうか、本作はとても面白かったです。
ジョセフィーンおばさんの困った性格や、オラフ伯爵やミスターポーの間抜けぶりは、心底笑えました。
はらはらするアクション場面があったり、3人姉弟妹のチームワークが見事に決まっていたのも良かったです。

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残酷な材木工場
【4】残酷な材木工場

孤児たちが次に訪れた場所は、活気がまるでない町の材木工場でした。
しかし、着く早々、工場の従業員として、過酷な労働につかされてしまいます。
さらに、眼鏡を壊され目医者へ治療に行ったクラウスの様子がおかしくなります。

意地悪な工場長や怪しい目医者など、今回もろくでもない人物ばかり登場しますが、やはりどこか抜けていておかしいです。
終始、どたばたコメディ調で、笑える場面が満載でした。

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おしおきの寄宿学校
【5】おしおきの寄宿学校

プルフロック寄宿学校の墓石のような校舎の風貌を見た孤児たちは、今回も不吉な予感を感じるのでした。
そこは、ヴァイオリンにしか興味のない意地悪な副校長や、いじめっ子ばかりいる学園だったのです。

おしおき(?)の数々が、とてもくだらないので笑ってしまいました。
それにしても、3人の精神力と体力は人間離れしています。

本作より、3人と境遇が良く似ているダンカンとイサドラのクァグマイヤー兄妹が登場します。

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まやかしエレベーター
【6】まやかしエレベーター

暗闇大通りに建つ巨大なマンションの最上階に、孤児たちの次の後見人エズメ・スクアラーが住んでいました。
この界隈では、流行をインとアウトで区別する極端な習慣があって、エレベーターは流行遅れということで使用できなくなっていました。
果てしなく続く階段が、3人の子供たちの前に立ちはだかります。

迷路のようなペントハウス、エレベーターの大アクション、イン・オークションでの駆引きと、見所はたっぷりです。
そして、謎が最高に深まる本書は、シリーズを通じて大きなターニングポイントとなるに違いありません。

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鼻持ちならない村
【7】鼻持ちならない村

村人全員で孤児の世話をしてくれるという村に行くことになったボードレール家の子供たち。
そこは、カラスの大群と、不可解なルールがまかり通った恐怖の村でした。

今回は、2つの事件に巻き込まれることもあって、緊迫した展開が多くなっています。
この物語中で語られているカラスの習性は、本当か嘘かわかりませんが、とても興味深いです。

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敵意ある病院
【8】敵意ある病院

不幸のどん底にあえぐ3人の子供たちが辿りついた場所はハイムリック病院。
ここでも新たな苦難が孤児たちを待っていました。

これまでは謎ばかり先行して煙にまかれた印象が強かったのですが、今回は、いつくかの謎の解明に関して前進がありました。
ただし、オラフ伯爵たちの残虐さは、今まで以上にエスカレートしています。

作者の饒舌なナレーションもますます快調です。
「眠れる森の美女」の解釈は、とてもひねくれていて唖然としてしまいました。

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肉食カーニバル
【9】肉食カーニバル

ボードレール三姉弟妹が、辿りついた(?)場所は、カリガル・カーニバル。
そこでは、占いが得意なマダム・ルルにより、フリークショーの準備が始められていました。

オラフ伯爵の恐ろしい策略にビックリ仰天です。
なんだか、第3巻「大きな窓に気をつけろ」を思いおこしてしまいました。
本当にオラフは"悪の師匠"ですね!

もどかしいストーリー展開は、あいかわらずですが、謎に一歩一歩近づいていきます。

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つるつるスロープ
【10】つるつるスロープ

亡霊山で、離れ離れになってしまった三姉弟妹たち。
獰猛な生き物やキテレツな集団に遭遇しながらも、全ての謎が解き明かされる場所に向かいます。

これまでの作品と関連ある重要な人物も登場。ストーリーは核心にせまります。
ひとまわり成長した赤ん坊のサニーの活躍や、「まやかしのエレベーター」さながらのアクション場面など、今回も見どころいっぱいです。

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ぶきみな岩屋
【11】ぶきみな岩屋

亡霊山から、舞台は深海に移ります。
息苦しい海中での冒険がボードレール三姉弟妹を待ち受けていました。

暗くて、狭くて、湿った場所、キノコの大群・・・
私はジメジメした場所や地衣類、菌類が、わりかし好きなので、そんなに不気味には感じられませんでした。

「水の循環」の挿入文が面白いです。
読者に対して、こういう使い方もできるのかと感心しました。

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終わりから二番めの危機
【12】終わりから二番めの危機

海中から地上に舞台を移し、いよいよ最終(から二番目の)局面に突入します。

今までに出会ったなつかしい人物たちも登場します。
でも、相変わらず大人たちは、もどかしくて役立たずです。

最後から二番目なのに、全く展開が読めません。
最終巻では、一体どのような結末が待っているのでしょうか?

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終わり
【13】終わり
執筆予定

レモニー スニケット 著
宇佐川 晶子 訳
草思社 200〜270ページ 漢 児

【関連リンク】

映画『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』公式サイト(英語サイト) (終了)

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