連続テロに対する報復戦争の国際法的な正当性は成り立たない

加藤尚武

 

1 国際法上の「戦争」とは、単に軍事行動が行われたという時点では成立せず、主権国家もしくはゲリラ団体が戦争の意思表示をすることで成立します。ゆえに、今回の連続テロは犯罪であって、戦争ではありません。犯罪として対処すべきです。
(典拠: パリ不戦条約 TREATY FOR THE RENUNCIATION OF WAR AS AN INSTRUMENT OF NATIONAL POLICY 1929)

2 国際法では、いかなる紛争にたいしてもまず平和的な解決の努力を義務づけています。ブッシュ大統領が、連続テロの今後の連続的な発生の可能性に対して、平和的な解決の努力を示しているとは言えないので、新たな軍事行動を起こすことは正当化されません。
(典拠: 国連憲章2条3項、33条)

3 国際法は、報復のために戦争を起こすことを認めていません。したがって、たとえ連続テロが戦争の開始を意味したとしても、現在テロリストが攻撃を継続しているのでないかぎり、報復は認められません。
(典拠: 国連憲章51条)

4 連続テロに対する報復戦争が正当防衛権の行使として認められるためには、現前する明白な違法行為に対しておこなわれなくてはなりません。予防的な正当防衛は、国際法でも国内法でも認められていません。連続テロに対する報復戦争を正当防衛権の行使として認めることはできません。
(典拠: 国連憲章51条)

5 国家間の犯人引き渡し条約が締結されていないかぎり、犯人引き渡しの義務は発生しないというのが、国際法の原則です。「犯人を引き渡さなければ武力を行使する」というアメリカ大統領の主張は、それ自体が、国際法違反です。
(典拠: 国連憲章2条4項)

以上の理由によって、私は連続テロに対する報復戦争は正当化できないと判断します。このアピールのいかなる形の転載にも同意します。

9月19日 加藤尚武 (鳥取環境大学学長、日本哲学会委員長)
kato@kankyo-u.ac.jp