ディック・ライダー著 (サンマーク出版)
序文――朝、なぜ起きるのかわからない人へ
目的。
あなたの目標。
あなたが存在する理由。
あなたが、朝、起きる理由。
誰でも、朝、起きるための理由が必要だ。
本書は、その理由についての本である。あなたが自分の人生の目的を発見する手助けをすることが、この本の目的だ。
それぞれの人生には、すべて、もって生まれてきた存在理由がある。目的とは、その人が生まれてきた理由である。ほとんどの人は発見できずに終わってしまう。しかし、私たちが各自の目的を発見しないかぎり、この世界は完全なものにはならない。
本書は、自分のもっている最も強い価値やエネルギー、才能を、仕事を通じて発揮することができると信じている人々のために書かれた本である。
自分の仕事が、心身そして魂の健康にどのような影響を与えるかについて、もっとよく知り、自覚することがとても大切だ。
今こそ、個人の創造性や目的のある仕事が重要なときである。また、そのチャンスの大きさはこれまでになかったほどだ。
目的とは、自分のいちばん奥深くにある次元――中核、真髄――である。自分はいったい誰なのか、どこから来て、どこへ行こうとしているかについて、深いところで感じる場所だ。目的とは、これこそ自分の人生の中心に据えようと選んだ特質だ。エネルギーを与え、方向性を示す源でもある。
一生の間に自分自身にどのような問いかけをしていくか、もしくは問いかけることを拒むかこそが、自分の人生を形づくっていく。しかもそれは、一度答えれば、それでもうおしまいというものではない。
私たちは、一生を通じてほぼ10年ごとに、目的にかかわる問いかけを引っ張り出してくる。このようなとき、そして人生の大きな節目節目に、私たちは自分に質問する。
自分は誰だろう?
ここで何をしようとしているのだろう?
自分の人生で何をしようとしているのだろう?
これらの問いかけがもっている力が、目的の力である。私たちが自らに発するあらゆる問いかけのなかで、最も答えるのが難しい質問はこの三つだ。
もしあなたがこのような問いかけをしていたり、以下のようなことを思っているなら、本書はあなたのための本だ。
● この人生で、自分の天職を手に入れ損なってしまった気がする。どうやって見つけたらいいのだろう?
● 私はこれまで成功を収めつつ、人生の半ばまできた。でも、これがすべてなのだろうか?次に起こることは何だろうか?
● 私は精神的に成長してきた。自分の精神的な成長を仕事に結びつけるには、どうしたらいいのだろうか?
● 私は今、大きな転換期にある。離婚、失業、退職、卒業、愛する人の死、病気などだ。この状況下でどのようにして、出来事の意味と方向性を見つけたらいいのだろう?
● 私は、物質的な成功はもう十分手にしている。それだけではなく、人生に満足を見出すには、どうしたらよいのだろう?
この本の第一稿を書くにあたって、私はまず、65歳以上の人に、このような深いレベルの質問をしてみた。そして、そこから得られた知恵に、大人の成長とカウンセリング心理学というテーマでの私自身の研究とを結びつけて執筆を始めた。私はすべての方々に、特に「もう一度自分の人生を生きられるとしたら、違う生き方をしてみたいですか?」と尋ねた。
インタビューに応じてくれた方々の歩んできた道にはすべて、三つのテーマが織り込まれていた。年を重ねてきた彼らは口をそろえてこのようにいった。
「もし、私の人生をもう一度生きられるとしたら、私は……」
● もっと自分自身を振り返りながら生きたい。
● もっと勇気をもっていきたい。
● もっと早い時期に、目的を明確にして生きたい。
これらのインタビューから私は、「目的とは、人間の魂の内側深くに自然に備わっているものだ」という結論に達した。すべての人が、人生に貢献したいという自然な願いと、貢献できる能力をもっている。私たちは皆、自分の足跡を残したいと願う。一人ひとりの目的は、それぞれユニークなものだ。私たち一人ひとりが、それぞれの目的の実験台だ。他人の目的から学ぶことはできても、他人の目的をそのまま取り入れることはできない。私たちはそれぞれ、自分自身の目的を発見しなければならないのだ。
この本はまた、前著『人生に必要な荷物 いらない荷物』をもとに、目的についての対話をさらに広げ、深めたものでもある。私は10年にもわたって、目的を探求中のあらゆる年齢の人々に数多くのインタビューを行ってきたが、そのインタビュー内容のインプットを通じて、私は第一稿の演習や引用文、不必要な箇所を削った。それは、私たちが生きてきている世界は精神的な世界であると確信したためだ。そしてまた、世界の誰もが、ユニークな生まれながらの才能と、その才能を用いて世界のために役立つという目的をもって、神のイメージのなかに創り出されたのだと深く信じているからである。
目的はもうすでに、私たちのなかにある。発見されるのを待っている。自分自身を解放して、自分の内側にあるものに向き合えば、きっと発見できるだろう。いったん見つけることができれば、たとえそれがまったく非現実的に思えても、その目的を生きてみようとせざるをえなくなる。
目的は、直感の影響を受ける。直感は、自分を自分自身の目的へと導いてくれる、ほとんど聞き取れないほどの小さな声だ。直感とは、第六感であり、知ることのできないものに対する感覚である。意識的な論理づけとはまったく別のものなのだ。私たちはときどき、どうしTそれを知っているのか、説明できないことがある。「ただ知っている」という状態だ。自分の目的を発見するためには、自分の直感を信じなくてはならない。
目的に基づいて行動するうえでの鍵は、世界が必要としているものと、仕事における自分のかけがえのない才能を結びつけることだ。これが天職なのだ。天職とは、自分がこうだと思う世界に対して、自分が積極的に貢献するひとつの方法である。本書には、それぞれ自分の天職に従って行動している人々の物語が数多く紹介されている。
目的に基づいて仕事をすることで、方向感覚が得られる。目的なしでがむしゃらにつき進んでいては、最後には迷子になってしまうだろう。それどころか、人生や仕事における真の喜びなしに生きることになってしまうだろう。自分が自分の目的と平和な関係を結ばないかぎり、自分の仕事に充足感を見出したり、自分のもてるものに満足することもできないはずである。
目的とは、ひとつの生き方である――自分に対する躾のようなもので、来る日も来る日も練習すべきものだ。仕事へ行く日は毎日、「自分が朝起きるのはなぜだろうか?」という問いかけにまともに向き合うことを約束しなくてはならない。このシンプルな問いかけを発する知恵と、それに答えようとする勇気こそが、目的に基づいて働くことの本質である。
目的の神秘を通じて、魂が私たちの人生に触れ、人生を動かしていく。これが、私が人々の天職を発見する手伝いを仕事にした出発点である。価値の多様化した社会では、誰もが私のこの前提に同意してくれるわけではないだろう。それはそれでいい。価値観はそれぞれだ。私はないも、宗教的な信念や、特定の宗派の教義について説明しようとしているわけではない。だから本書で、自分と違う信念をもつ人々を排除しようとしてはいない。この前提があるからこそ、私は人々のいろいろな違いを受け入れることができるのだ。私の出発点――天職といってもいい――のおかげで、私はすべての人には精神的な存在理由があり、私たち一人ひとりがそれを発見しないかぎり、この世界は不完全であると信じている。
あなたが自分の天職を発見されるよう、願っている。私が自分の天職を見出すことができたように、本書があなたの天職を見出すきっかけになれば幸いである。
日本の読者のために
1997年10月 ディック・J・ライダー
謝辞
序文――朝、なぜ起きるのかわからない人へ
第1章 ときどき思い出したい人生の目的
1 天職を逃していませんか?
● 誰もがいつか「ひとかどの人物」になりたい
● 「自分以外の誰か」にはなれない
★ CHECK LIST
2 人生から自分へ、質問させる
● 逆境や危機があなたに尋ねること
● 18歳で死に直面したテリーの目的
★ CHECK LIST
3 自分の内側に根ざす目的
● 人生の物語は、自分との対話でつくられる
● 「人生を見つめなさい」と語るメアリーの目的
● 地球に存在する理由を考えてみる
● 人間に必要な三レベルの調和
● 内から外へ――自分の内側に忠実に生きる方法を発見する
● 自分に生まれながらに備わっている才能を発見する
● 何が自分をかき立てるかを発見する
● 孤独を発見する
★ CHECK LIST
4 呼びかける声が聴こえますか?
● 目的が人生に及ぼすプラス効果
● 自分の人生を組み立てる
● 生きること・行動することに意味を与える
● そのままの自分の心に従う
● 自分の天職をはっきりさせる
★ CHECK LIST
第2章 人生の目的に忠実に生きる
5 なぜ月曜日の朝、起きるのか?
● 自分の「芯」にたどり着く
● 人生に必要なもの・人生にほしいもの
★ CHECK LIST
6 目的のらせんを見ませんか?
● 命はすべて曲線を描く
● 自分の時間と交換できるものは何か?
● 死と向き合う・目的と向き合う
★ CHECK LIST
7 いつ生き生き、していますか?
● 生涯でいつ、自分を知るチャンスがあるのか?
★ CHECK LIST
● さらに「生き生き」を考える10の質問
8 さびつき症候群
● 人生に必要なストレス・いらないストレス
● 自分の人生を動物にたとえると?
● 本当の自分を起こす「目覚まし時計」
★ CHECK LIST
第3章 人生の目的に基づいて仕事をする
9 天職が呼ぶ声が聴こえますか?
● 宇宙に対しての自分の役割
● 自分の経歴を「包装」し、「売りだして」いないか?
● 天職を聴き取るための三つのプロセス
★ CHECK LIST
10 毎日の意味と、毎日の生計
● 職場で目的をもつための勇気
● 「自分はそれが好きだから」仕事をしよう
11 目的ある仕事はどこにある?
● 仕事への期待に関する四つのレベル
★ CHECK LIST
● 目的を見つけるための旅
12 目的を盛り上げるリーダーとは?
● 自分で自分を導くリーダーになる
● 自分で人生を選んでいますか?
● なぜ、このリーダーについていくのか?
★ CHECK LIST
第4章 人生の目的にたどり着く道
13 自分の内側に忠実に生きる
● 暮らしのなかで目的は見つかるのか?
● 何かを行うこと
● 価値を体験すること
● 苦しむということ
14 自分の才能を発見する
● 楽しくラクラクできることが才能だ
● すべての人がもつ八つの知性
★ CHECK LIST
15 かき立てられるものを発見する
● 自分の才能=力/自分を動かすもの=目的
★ CHECK LIST
● 「目的の力」を妨げる三つの勘違い
● 「フロー」を体験するための五つのステップ
16 孤独を発見する
● ひとりの時間をつくり出す
● 自分を振り返るための「ソロ」・五つのエクササイズ
● もっとも興味のあるものを、人生に引き寄せる
★ CHECK LIST
17 目的の時代へ
● 人生を延長してもらったビルの目的
● 目的の力は思いやりの力
★ CHECK LIST
訳者あとがき
監修者あとがき
その日私は東京国際フォーラムの同時通訳ブースの中で、軽い武者震いを覚えていた。日本ウィルソン・ラーニング株式会社の15周年記念クライエント・コンファランスの特別講演である。ガラス越しに、ディック・ライダーが壇上に上がるのが見える。私は手元のマイクのスイッチを入れ、いろいろな思いを込めて、通訳を始めた。
ディックの本に最初に出合ったのは、2年半以上前に遡る。フリーランスの通訳者として仕事をしながら、日本ウィルソン・ラーニングにコンサルタントとして顔を出していた私に、森社長が手渡してくれた本が『Repacking Your Bags』だった。同書(邦題『人生に必要な荷物 いらない荷物』)は、著者のディック、日本ウィルソン・ラーニング、そして訳者としての私も力を合わせて日本で刊行することができ、多くの方々に読んでいただくことができた。寄せられた読者カードを見ても、多くの人々がディックのメッセージに心を動かされた様子が伝わってきたが、私もそのひとりだった。
サンマーク出版からディックの次作を出したい、という話がきたのと、ディックがもうすぐ米国で自作を出す予定だ、といってきたのはほぼ同時だった。こうして本書『ときどき思い出したい大事なこと』の翻訳が始まった。
本書の原題は『The Power of Purpose――目的の力』である。前書『人生に必要な荷物 いらない荷物』で、仕事・人間関係・場所・目的という四つの分野で人生全体について「自分の背負っている荷物をいったんほどいてみよう。これからの人生に必要なものだけを詰め直して、身軽に生き生きと生きよう」と呼びかけたディックは、今回は人生のなかでも特に大きな領域「仕事」を取り上げ、天職とは「目的」(何のために働くのか)と「力」(自分のやる気をかき立てるものは何か)を結びつけたものであると語り、どのようにしたら自分の天職を見つけて、生き生きとした仕事人生が送れるかを示している。
前書では疑問点はファックスでやり取りしていたが、今回はメールが何度も何度も太平洋を渡っていった。しつこく語句や文の意味を確認する訳者に、ディックはきっと苦笑していただろう。しかし疑問点についてやり取りするなかで、私は「あ、これか」と気がついたことがある。通常、著者は自分の表現を変えられるのはいやがるものだが、ディックは「その表現で、いいたいことが伝わりにくいなら、表現を変えよう」と大変柔軟で、原文とは違う文章を示して返事をくれるのだ。
本書にも述べられているが、ディックの考え方のひとつに「エッセンス」と「フォーム」がある。「真髄・本質」と「形・外形」ということだが、「まずエッセンスありき」がディックの基本姿勢だ。「フォーム」にこだわって「エッセンス」を失うのは本末転倒である。エッセンスとフォームという考え方は、「なぜ生きるのか」「なぜ働くのか」と「どのように生きるのか」「どのように働くのか」を分けて考えるところにも見ることができる。翻訳作業を通じて、私はこの「エッセンス」と「フォーム」を実感として理解することができた。
本書の翻訳を行う一方で、ディックの研修コースを日本に導入するための翻訳・通訳、日本版への修正にも携わった。ディックというひとりの素晴らしい人とその考えに、私は「通訳」「翻訳」「コース作成」と全方位からかかわることができた。得がたい体験をさせてもらったとありがたい気持ちでいっぱいである。
またこの時期は、自分自身の「天職」を考える時期にもなった。翻訳中のディックの本にどれほど勇気づけられ、励まされたことか。本を通じて、個人的にも影響を与え支援してくれたディックに感謝している。
講演会が終了し、講演者・通訳者ともに興奮の波が引いていくなかで、私は彼の本に励まされて、自分の「天職」を考え、行動をとることにした、と話した。前から関心をもち、個人的にかかわってきた米国のシンクタンク、ワールドウォッチ研究所の日本での活動にもっと本格的に参画して、環境問題への関与を深めていくことにした、と話した。ディックは、子どものように澄んだ目をきらきらさせて、嬉しそうにうなずいた。 「よかったね。すごくいいと思うよ。僕の女房も環境問題に取り組んでいるんだよ」
毎日星の数ほど出版される本のなかで、一生の間に読める本の数は限られている。一生の間に翻訳できる本の数はもっと限られている。前書に続き、本書の翻訳の機会を得た私は、本当に幸せ者だと思う。ディックをはじめ、質問メール攻撃に耐えてくれたインベンチャー・グループの方々、機会と助言を与えてくれた日本ウィルソン・ラーニングの森捷三社長をはじめとする社員の方々、そして前書同様、訳者を支えてくれた高橋由佳里さん、サンマーク出版の青木由美子さんに心からの感謝を申し上げる。
1997年 秋
枝廣 淳子