(海象社)
枝廣さんの環境ニュースを読んで誰でもまず圧倒されるのが、その情報量でしょう。「普通の」主婦が、いくら朝2時に起きたとしても、よくもこれだけ多様なテーマを、これだけの深さで扱えるものだと感心してしまう。それだけでなく、その人的交流の幅の広さ、通訳も翻訳もこなし講演もし会議にも出席するという、その行動力にも驚嘆。そんな著者をぼくは、ガリガリ勉強してカッカッと素早く歩き、ファッションには全く興味がなくて、男どもを叱咤激励するこわーいスーパーウーマンじゃないかと想像してましたが、実際にお会いした枝廣さんは意外なことに、人の話しをよく聞く、もの静かで才色兼備な女性でした。
この本には、様々な「気づき」へのヒントが散りばめられています。そして気づいたら次にどのように行動すればいいかも。枝廣さんが紹介する多くの事例から浮かび上がってくるのは、人と人との関係、人と他の生物との関係とそれをとりまく自然との関係について、近代を支配してきた思考方法―――、例えばGNPを豊かさの指標とする、あるいは自然を資源とみなす、―――ではなく、新な見方、新たな関係を築くことなしには、現在のような自然破壊、生き物破壊の趨勢は止まらないということだと思います。新たな思考は一つではないので、枝廣さんは、観念的、哲学的に一直線に語るのではなく、多くの事例とともに、たくさんの人々の試行を枝廣さん自身が学びながら、人間の関係を再生させることと、環境を再生させることが実は同じ根っこをもつ問題なのだということを、その饒舌な言葉の下で、静かに見つめているような気がします。
実はぼくがこの本で一番印象に残った記事は、No. 521 (2001.07.25)「学級崩壊から総合授業へ」でした。これは、ある小学校での学級崩壊の危機から総合授業を通して、子供たちがお互いに自由に意見を言えるようになり、学級崩壊の危機が救われる過程を紹介したものです。本物の民主主義を「手づくり」で模索する子供たちと、それをやさしく助ける大人たちがいることに、ぼくはまるで奇跡を見るように感動します。そして、自分たちで問題を考え、議論し、意見を交換し、意見の違いを認め合うという、子供にできることが、なぜぼくたち大人社会ではなかなか機能しないのか、不思議に感じます。
このように、この本は頭と心で考えることを促します。それをさらに「身体で考える」ことにつなげていくかどうかは、私たち読者が踏み出すほんの小さな一歩にかかっています。
by 坂本 龍一
何だかとても不思議な気がしています。「思いつきで」環境メールニュースの無料配信を始めてから、2年と数ヶ月しかたっていませんが、「メールニュースを始めるまえは、私は何をやっていたんだろう?」と思うほど、自分にとって大切な部分となってきました。
いまは昔(?)、1999年11月4日に、20人弱の読者に宛てて第1号を配信しました。1年後の2000年11月に、それまでのメールニュースを編集した『エコ・ネットワーキング!』を出版してもらいました。そして、その続編ともいえる本書を用意している現在、号数は700号に近づきつつあります。登録者数は3300人を超え、特に宣伝もしていないのに、1日約10人のペースで増え続けています。
これはどういうことなのだろう???
ひとつには、まぎれもなく、「私は書くのが大好き!」ということなのですが(^^;)、それ以上に、「書きたいこと、紹介したいこと」が目白押しで、1つ書けば2つも3つも次に書きたいことが出てくる、“芋づるニュースの畑”に私はいるらしい、ということです。
昔から公害問題はありましたが、いわゆる「地球環境問題」は、比較的新しい分野です。「温暖化」だの「オゾン層」だの、私たちが子どもの頃には(いえ、学生の頃だって)“日常語”ではありませんでした。ごく限られた専門家や科学者の分野でした。
それが、地球環境のすさまじい悪化が明らかになるにつれて、また、その原因が私たちひとりひとりの生活や経済活動に存在することがわかるにつれて、「みんなの問題」になってきました。「あの工場からの排水が原因だ」という公害型ではない、「全員が被害者、全員が加害者」という問題だからです。
このように「新しい分野」であることと、「みんなの問題」であることから、私のように、環境を専攻したわけでもない人間が、自分の興味と関心の導くままに勉強し、現場を見せてもらったり、いろいろな人に教えてもらうことができる。そして、そこで考えたことや感じることを発信しているメールニュースを、たくさんの方が読んで下さり、フィードバックや情報を寄せて、私の勉強を手助けして下さっているのでしょう。
私の専攻は教育心理学で、カウンセリングを専攻していました。人のこころも地球環境も、“本当はひとつのもの”が効率や競争のために細分化されたときに、傷つくのではないかな……。人のこころも地球環境も、あまりに成長ばかりを求め、何かに追われるように、大切なものとのつながりを断ってしまったときに、すさむのではないかな……。
家族とのつながり、近所や知り合いとのつながり、自然とのつながり、大地や地球とのつながり、そして、自分自身とのつながり。その分断されてしまったつながりを、もう一度思い出し、取り戻すためのひとつのきっかけが「環境問題」なんじゃないかな。私はこんなふうに思うようになりました。
うれしいことに、日本にも世界にも、あちこちで、わくわくした取り組みが始まっています。技術や制度、企業の活動や私たちの暮らし方、そして、その根っこにある考え方や思い――。
それにしても、この「わくわく」を少しでも伝えたい! いっしょにわくわくしたい!という思いが強すぎるのかなあ〜と思いつつ、まったく反省せず、相変わらずのマイペース(私の場合は、多すぎるペース、という意味)でニュースを書き続けている私です(^^;)。
本書は、前書『エコ・ネットワーキング!』に掲載していないニュースから、さまざまな分野の根底に共通して流れている「考え方」や「物の見方」を取り上げているものを中心に選びました。エッセイ的なものが多いので、環境問題は初めて、という方にも読んでいただければとうれしいです。レイアウトも読みやすく工夫してもらいました。(後略)