帆立

これ以上単純な味付けはありません。しかしその味わいの深さは比類ないものです
香りと弾力のある歯ごたえ、噛むほどに貝のうまみが湧き出てきます


帆立貝は北海道から東北にかけて生育します。今市場にでまわっているもののほとんどが養殖ものです。養殖3-5年のものが市場に出ます。天然物のときは旬があったのでしょうが現在では年中買うことができます。
帆立は3つの形態で販売されています。
貝殻付きは下拵えの手間をおしまなければもっとも新鮮でしょう。剥身は鮮度はいささか低下しますが手軽に調理できます。冷凍物は大きな粒が手にはいります。
私は剥身を使用しています。
冷凍物を一度使ったことはありますが条件が悪かったためか作ってから数ヶ月で異常に硬く変質してからは使用していません。すぐ食べるのであれば見栄えのする立派なものが手に入ります。

帆立貝柱下ごしらえ

貝柱
・買ってきた剥身は貝柱とひも・卵巣精巣に別け、卵巣精巣は燻製に使わないのですてます(食べる人もいる)。
・きれいに水洗いする。貝柱の周りにある薄皮は取らないようにします。取ると崩れることがあります。
・以後の調理のどの時点でも乱暴にあつかわないこと。バラバラになります。

帆立 煮沸

煮沸
・水5リットル+天然塩350gを沸騰させる。
・貝柱を入れ大粒20分、中粒15分、小粒10分煮沸する。水が牛乳のように真っ白になります。
・時間がきたらお湯を捨てて余熱で貝柱の表面を乾かします。
・この水の量で一度に処理できるのは100粒ぐらいです。

燻煙・乾燥の工程を経て、煮沸後の重量の80%から75%になったら完成です。最終重量(乾燥度)は食感に大きく影響します。
75%はやや固め、80%は軟らか。しかし、水分量だけが軟硬を左右するのではなく、煮沸時間や燻煙の温度も影響します。

帆立煮沸後計量

燻煙・乾燥
・貝柱を金網にならべます。金網の各所から貝柱を10ケ取り出し目印として小さくちぎった楊枝を突き刺して重量をはかります。この重さの75%または80%が仕上がり重量になります
・60℃で60分間乾燥します。その後55℃で90分燻煙します。燻材は「くるみ」か「りんご」。燻煙中に30分おきに上下を返したり位置を変えて均一な色が着くようにします。
・印をつけた10ケを取りだして重量を秤り乾燥がたりないようなら60℃で乾燥を続けます。燻煙の度合いは好みで決めます。

帆立 油漬け

油漬
・貝柱が冷えたら油に漬けます。太白胡麻油(非加熱ごま油)ならば酸化にも強く高級でしょう。サラダ油でも結構です。
・一日漬け込みます。
・使い終わった油は油いためなどの料理に使えます。煙成分には抗酸化作用がありますから料理には最適ではないでしょうか。

帆立 製品
完成品大写し

仕上がり
・カゴにあげて油をきる。キッチンペーパーで握り込むようにして油をしっかり取る。いくら吸い取っても貝柱に染み込んでいますから安心してしてください。
・真空パックしてから92℃から95℃で60分殺菌します。水分量が高いためです。殺菌せずに保存すると「ネト」がでます。殺菌後水で冷やしてから冷蔵庫に保管。
・写真は作ってから数ヶ月経過したもので色が均一に着き、表面には塩と貝のうまみ成分が結晶しています。

ビールのおつまみにも、おやつにも結構です。うちの猫の大好物です。
友人は炊き込みご飯にいれて美味しかったとのことです。
もう少し塩味を強くするには塩を10%増量します。

帆立のヒモ ヒモ
・ヒモは塩を大量にふりかけてザルのなかで力を入れてもみ洗いする。真っ黒な水が出るので水道水で洗う。これを数回繰り返す。
・いろいろ加工しましたが下記の方法が一番美味しかった。
ヒモのおやつ
上記の煮汁1000cc+水1000cc+醤油100cc+、ミリン100ccを沸かし、トウバンジャンを適宜入れて煮出します。
砂糖を大さじ二杯を入れてトウバンジャンの辛みがちゃんと感じられる汁を作ります。
沸騰している汁に洗ったヒモを入れて沸騰してから9分間煮ます。
ザルに受けて熱いうちに水を切り、攪拌して蒸気を飛ばして乾かします。
網に広げてホタテの燻製と一緒に処理します。30分ごとに攪拌して乾かします。
ただしあまり乾燥させるとカチカチになって美味しくありません。
姿はちよっとグロテスクですが、味はうまい。