人が住める環境とは? 〜宇宙の視点から地球環境を考える〜

  公開:2013年9月4日〜
更新:2013年9月13日  *一部訂正しました

NASA発表の写真を引用

とある会報の原稿(冒頭部分) (2013年9月)

 近年、夏が暑いです。インドには3つの季節しかなくて(hot、hotter、hottest)、とても暑い事で有名ですが、何年か前に東京の夏の平均気温はデリーを超えた時があり、「インド人もビックリ」、とか。
 さて、湿度も大きく関わりますが、快適な気温は10数℃〜20数℃、それでも人間は-40〜40℃、時にそれを超えて生活しています。100℃もの気温差があるのも驚きですが、海水温がたった1℃上昇するだけで地球環境が変り、生態系に多大な影響を及ぼす事が知られています。では、太陽系の他の惑星ではどうなのでしょうか。

 地球の兄弟星とも言われている火星。平均気温は-43℃で、大気の95%は二酸化炭素。酸素は0.1%しかありません。大地が赤いのは、宇宙放射線で地面が酸化したためで、仮に温度と酸素が供給されたとしても、強烈な放射線のため、人はすぐに癌になってしまいます。地球では、宇宙放射線は大気、オゾン層で遮られていて、その遮蔽効果は鉛の壁90cm、水なら10mに相当するそうです。火星の大気圧は地球の0.8%しかなく、火星地表では、地球型生命は存続できません。

 では、地球と同じ位の大きの金星ではどうなのでしょうか?金星の大気の成分の97%は二酸化炭素で90気圧(水深900mに相当)、地表の平均気温は400℃にも達します。仮に金星の地表に瞬間移動したら、即死してしまいます。地球の大気の二酸化炭素濃度の上昇による温室効果、気温の上昇が問題になっていますが、そのなれの果てが金星ともいえます。

 では、大気の無い月ではどうでしょうか?太陽の光が届いている所の表面温度は110℃、日陰で-170℃もの開きがあり、宇宙放射線も容赦なく降り注ぎます。宇宙服を着て月面をかっ歩する動画はおなじみですが、酸素を供給し、大気圧を維持し、過酷な温度差から身を守り、宇宙放射線を遮り、しかも自由に手足が動ける宇宙服の製作には、とてつもない高度な技術を要します。
 
ちなみに、木星や土星、天王星、海王星はガスでできた惑星なので、いわゆる地表、というものはありません。

 地球に生命が溢れ、本当に美しいのは大気のお陰ですが、仮に地球を13cmの球体とすると、宇宙との境界線:地表から100kmは1mm、人類が生活している上限:約4000mは、わずか0.04mmしかありません。10倍して地球を1.3mの大きさにしても、0.4mmの厚みです。現在、人類にとって身近な宇宙:国際宇宙ステーション(ISS)は、13cmの地球の、わずか4mm上を回っているに過ぎません。

 オゾン層は、成層圏に幅広く存在しますが、仮に1気圧の地表にある、と換算すると、わずか3mmの厚みにしかならなりません。また、地球は大きな磁石になっていて、この地磁気が宇宙放射線から我々を守っています。

 人類が生きている地球表面、というのは、かくも薄く、希少な微小環境です。宇宙を知る、という事は、地球を知る、という事でもあります。我々は宇宙的視線から地球を考え、保護し、目先の国益(結局は、ほとんどは政治家個人の益)などというものから、とうに脱却すべき時が来ています。

 (*とある会報の原稿の、宇宙に関係した冒頭部分のみ掲載しました。)

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