動力史の時代区分について
1998
年7月24日 木本研 小林 学
労働における矛盾
(1)
動力と制御動力労働手段の抱える問題
◎出力の増大
vs.増加する出力に対応する制御機能の発展それ自体に動力と制御の矛盾を内包して発展
石谷清幹
労働が動力と制御という相矛盾する
2要因から成り立っていること,この動力と制御こそ労働過程の発達の根本要因であることをボイラー発達史研究の中から実証し,動力と制御の2要因が労働という一つの過程の内容と形式を形づくっており,動力は運動の量的な面を担うのに対して,制御は運動の質的な面を担っており,両者は量と質の関係にあり,労働過程の根本矛盾は動力と制御であって,動力と制御が単一の矛盾の両側面である当然の帰結として,動力技術と制御技術への分化の進行には限界はなく,無限に分化が進行する可能性を持っている,と定式化した.「動力史の時代区分と動力時代の変遷」(『科学史研究』第28号,1954年4月)
(2)
制御の類型手動制御=人間の直接的な判断と操作
自動制御=制御機構
(装置)を用いて行われる.(
日本機械学会編『機械工学便覧』改訂第5版,1968年,第21編第一章)→人間の労働はフィードバック制御に当たる.
(A)
電気動力−発電機・電動機の歴史的意義エネルギが電力という商品としての売買の対象となる.歴史始まって以来のことであり,それが経済社会に与えた影響ははなはだ大きい.技術史家の多くは中央発電所方式の確率,発電機や電動機の産業への導入を契機に動力史に新紀元を画し,蒸気(機関)時代から電気あるいは電力時代への移行を宣言している.この区分は年代的にも独占資本主義への成立期にも相当しているため,経済史家の多くも受け入れ一般的になっている.
しかし,エネルギを取り出す,あるいは受け取る蒸気原動所の構成方式においては,蒸気タービンの場合もワットの時代と変わっていない.
◎発電機を動かしているのは蒸気タービン←原理はワットの時代から変わっていない.
現代はなお蒸気動力時代,熱機関時代とする.
(石谷)
中村=現在は真の電力時代への移行期間とする.
→電力の商品化を出発点,または基礎に始まった独占資本主義の過渡的性格
動力史の変遷を独占資本主義に対応させるとすれば,熱機関時代
(資本主義の全期)を前期と後期に2分できる.○前期=蒸気機関時代−作業機が蒸気機関によって駆動されている段階=産業資本主義
○後期=蒸気タービン
+発電機時代−作業機が電動機によって駆動されている段階=独占資本主義
★次の時代
蒸気タービン+発電機という電力生産を止揚した電力
(機関)時代電気動力の登場に伴う生産力の発展はもはやブルジョアジの手に負えない.
(B)
作業労働手段と動力労働手段の相互関係動力労働手段の分化・発達は作業労働手段の発達に条件づけられた動力需要の増大に基づくもの.
→労働過程の根本矛盾において支配的なものが制御の側面である.
いかなる動力で道具や機械が動かされるか,ということではなく,いかなる道具や機械がいかに労働対象を変化させることにある.
生産様式の変革は,作業労働手段による新方式がこれに相応する動力手段の発達を呼び,両者の統一によって成し遂げられるのである.
○中央発電所方式による配力方式の変化によって電力時代を出発させるのはともかく,ここに第二次産業革命を設定するのは,単に産業革命の歴史的意義を撲殺し,この概念を混乱に導くだけでなく,技術史的にみても大きな誤りである.
主要側面である作業機あるいは労働対象に直接働きかける質的な変化が,産業革命当時の道具→機械に比肩できるものでない限り,比喩として第二次産業革命をいうのは適当でない.
それは,自動制御機構を持ったいわゆるオートメーションであるから,「第二次産業革命」ないし「新しい産業革命」は,第二次世界大戦後の今日に当たる.
まとめ
@労働過程の根本矛盾は動力と制御にある.
A労働と制御のうち主要な側面は制御の方にある.したがって生産様式の変革は,作業労働手段による新方式がこれに相応する動力手段の発達を呼び,両者の統一によって成し遂げられるのである.
B
動力よりも制御の方が主要な側面なので,電気の利用の時代を第二次産業革命と呼ぶのは歴史的に見て間違い.制御の革命は自動制御機構であるオートメーションであり,それが始まるのは第二次大戦後の今日に当たる.