写真集「人間燦々」
神奈川新聞 「読書」 欄   1994.12.18
人物写真で定評のあるカメラマンが六年かけて撮り下ろした。
副題に「20世紀末日本を彩る103人の肖像とメッセージ」とある
ように現在の日本を代表する「表現者」がずらりと並ぶ。

実に豪華な人選だ。黒澤明、小澤征爾、勅使河原宏、中丸三千繪ら世
界的に名高い文化人もいれば、後藤田正晴といった政治家や「日本の
ドン」笹川良一氏、さらに青森県・恐山のいたこ小笠原ミヨウさん、
東京・浅草ロック座ストリッパー蘭錦らの姿もある。
幅広い分野の第一線にいる面々百三人が自宅や仕事場でリラックスし
た表情を見せている。

著者は撮影だけでなくインタビューも試みており、各氏が明かした人
生観を短い文章で紹介している。
「絶対に誰の影響も受けないし、誰にも学ばない」〈映画監督・大島
渚氏〉、「六十年俳優やってて自分がうまいと思ったことない」
(俳優・笠智衆〉。

いろいろな思いを抱えていても、自己を表現する道を究める人間の表
情には共通した迫力がある。それを自然に引き出した著者の力量は
見事だ。
紙面の記事のみ掲載