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「政治 人間通しアップ」 |
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後藤田正晴元副総理、中曽根康弘元首相の写真集を出し
た写真家がいる。
蛭田有一さん(五九)。現在、民主党の鳩山由紀夫代表を撮
影している。
『やじ馬的な好奇心からです。代表的な政治家の公私にわた
る活動を追って、政治の内側を撮りたい。よいしょするつもり
はありません』と話す。
十二月初旬のある日の午前十時、千代田区永田町の民主党
代表室。蛭田さんが撮影を始めた。
ポーズはほとんど注文せず、シャッターを押す。こうしてしば
しば民主党本部を訪れ、遊説先や選挙区へも同行する。
鳩山代表が撮影を申し込まれた4年前を思い出しながら言
った。『後藤田さん、中曽根さんの次が、なんで私?と思いま
した。変わった趣味の方だな』 と。
一九四一年、品川区で生まれた。父は写真館経営。東京写
真短大(現・東京工芸大学)を卒業後、広告制作会社につと
めたが、人物写真を撮りたいと退職した。
ヌード写真を週刊誌に発表した。しかし、ヌードを一生のテー
マにするかどうか悩んだ。
『自由で独自の生き方』をしている人を撮ると決めた。
黒澤明、笠智衆、太地喜和子、淀川長治、武満徹、高橋竹山、
岡本太郎さんらを六年がかりで撮影。
九四年、『人間燦々―20世紀末日本を彩る103人の肖像と
メッセージ』(求龍堂刊)にまとめた。
この本の百3人目の被写体が、後藤田正晴氏だった。ドロドロ
した政治の世界にいながら、強烈に自己流を貫いているよう
に見えた。そこで、しばらくしてさらに三年間撮りたいと申し出
ると、『こんな顔でよかったら』と、快諾してくれた。
蛭田さんが撮る姿は代議士らの話題になった。『だれだ?』。
『後藤田正晴』(朝日ソノラマ刊)を出すと、代議士らが高く評
価したという。
中曽根康弘氏は、撮影したいシーンのメモ書きを渡すと、じっ
くり読んだ。了承してもらっての別れ際に、こう言われた。
『後藤田さんのよりは、いいものをつくってくださいよ』。
三度の外遊に同行した。入浴姿まで撮らせてくれた。『中曽根
康弘の肖像』(求龍堂刊)が生まれた。
鳩山代表が、撮られながら言う。『自然に撮ろうと思っておら
れるようで、無理をさせない。撮られていて、気になりません』
(紙面の記事のみ掲載) |
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