政治評論家・森田実
2008.9.1  於港区白金台五丁目
森田 実 政治評論家
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
政治評論家としての森田さんの信念とは。
戦争反対ですね。どんなことがあっても再び戦争を政府にやらせてはい
けない。戦争に反対して平和を守るというのが政治評論家として第一の
信念です。
そういうことを口にする評論家は最近少ないですね。
この頃は少なくなったのではないでしょうか。
戦争体験者の中には多かったと思うのですが、あまりそのことを明確に
口にしなかったと思います。
私が中学一年生の時に戦争が終わりました。私は最後の最年少学徒動
員体験者です。
その時から戦争だけはさせてはいけないということで生きてきました。
言論活動を始めた後も、このことが終始一番大事な信念です。
そういう思いに至った経緯にはどんなことがあったんですか。
私は7人兄弟の6番目でした。家業は江戸時代からの建築業でした。
代々大工の棟梁の家だったのです。
一番上の兄は私が生まれる前に病死しました。二番目の兄は家を継い
だ後に召集され、戦地でそのまま行方不明になりました。
戦争が終わり半年ぐらい経って、お宅の息子さんが死にましたと、駅に
息子の復員を迎えるために毎日通っていた母親が復員兵の一人から知
らされたのです。
忘れもしない1946年3月15日でした。母親が家に駆けこんできました。
岸壁の母ならぬ駅頭の母でした。
戦争が終わってから毎日、息子が帰ってくるのではないかと駅に通って
いたのです。復員兵の中の一人から知らされたのです。
ばあさん、お袋、姉たちの慟哭を、私は近くでじっと見ていたのです。
言いしれぬ怒りがこみ上げてきました。
その後、私の母と同じ境遇の母親が多くいたことも分かりました。
こんなに人を苦しめる戦争は何なんだと。その時から反戦が私の原点と
なりました。
その後、編集者になってからも反戦が原点でした。著述業になって40年
近くなりますが、ずっと反戦平和が原点です。
今の日本の状況で特に心配していることは。
今の日本は進路をアメリカに決められています。アメリカに言われれば
日本の指導層は全部イエスです。
国民に公表できないものは秘密にして、国民が起こらないものだけ公表
しながら、全くアメリカの言う通りやっています。
アメリカは最近たちが悪くなり、日本に戦争させようとしています。
かろうじて憲法第九条が防波堤になって、アメリカの言う通りになってい
ないのですが、危ない状況です。
日本は自主的判断ができないのです。日本はアメリカに利用されていま
す。日本の指導層は風にそよぐ葦です。アメリカという風で日本は自由に
動かされている。
このまま行けばアメリカは日本を食い尽すと思います。メチャメチャにな
って日本はアメリカの奴隷国として滅んでいくという恐れがあります。
このことに日本の指導層が気づかなければいけないと思うのです。
今は、一般の国民の方が政治家より健全です。
指導層はアメリカに言われればついて行きます。一般国民は違う。
だから一般国民のセンスで日本の政治を作り直さないとダメではないか
と思っています。
日本は独立国とはとても言えませんね。
日本政府は日本国民に対しては独立国のように振る舞ってきましたが、
実際は完全にアメリカの言いなりの国です。
小泉首相が言い続けた自由競争と自己責任。これ実はブッシュ米大統領
のスローガンと同じです。
つまり全てを市場にゆだねよう、規制緩和で行こう、小さな政府で行こう
それから公的な支出は減らそう、新自由主義の経済競争理念を、ブッシュ
は『自由競争と自己責任』という言葉で強調し叫び続けたのです。これを
小泉が同じように叫び続けました。
競争を自由にするというのは、強い人間が勝つということです。
だjから自由競争主義は強い人間を保護する論理です。
新自由主義の公的関与をなくして、社会福祉を減らそうというのは弱者切
り捨ての論理です。
小さな政府というのも弱者切り捨ての論理です。自由競争にゆだねれば、
強い人間が勝ち、弱者が負けます。
これは大資本の論理を露骨に推進するアメリカ政府の政策だったのです。
これをアメリカはグローバリズムと称して世界も同じことをやらなければ
いけないと世界各国に押し付けたのです。
しかし新自由主義を実行した国はどこも事実上潰れました。
これらの国々は犯罪社会になり、階級社会になり、貧しい人が増えて社
会がガタガタになった現実に世界中が気づきました。
新自由主義を批判する本が欧米で何冊か出版されています。
日本の指導層だけが気が付いていないのです。日本のマスコミと学者も
全くダメです。本当に日本は危機だと思います。
マスコミはそういうことも伝えてほしいですね。
結局、国民が目を覚ますしか危機を打開する方法はないのです。
私自身、新聞とテレビとラジオなどで発言してきました。雑誌や単行本で
も発言し、アメリカと新自由主義の危険性を全国民に知らせる努力をして
きました。
ところがマスコミがアメリカ化しているものですから、アメリカ批判者は
排除されてしまいました。
私もマスコミで発言できなくなりましたからインターネットを使って主張
を発信してきました。日本語の評論は毎日書き、英文でも週に一度出し
ています。
その結果、アメリカの出版社が『日本のアメリカ中毒を治療する』という
タイトルの本を7月に出版してくれました。こういう形で、私はアメリカ
批判を続けています。あたかも手工業で超近代工業に立ち向かっている
ようなものですが・・・
ある時、テレビから森田さんの姿が消えて、一体どうしたんだろうと
思っていましたが。
小泉構造改革が出てきたとき、あぁこれは日本を破壊するなと思いまし
た。日本は和と助け合いの国です。そこに完全な自由競争を持ち込みま
した。
これはみんなが敵になるシステムです。その上、最後は自己責任という
論理です。『和と助け合い』の破壊です。つまりアメリカの論理です。
これをやったら日本は崩壊すると思いました。
小泉のやり方で、先ず地域から崩壊していきました。弱者切り捨て、地域
切り捨て、福祉切り捨てです。
これでは日本はどうしようもなくなると考えて、小泉が登場する瞬間から
私は小泉批判を続けてきました。
2005年8月8日に小泉が郵政民営化のために衆議院を解散した翌日
(9月9日)の朝、私はフジテレビの『めざましテレビ』という番組で、
私が、担当してきたコーナーに生出演して発言する機会がありました。
この時、これは天の助けかと思いました。
そこで私が発言したのは、小泉は憲法違反をしたということでした。
日本は議会制民主主義の国であり、議会が法律の決定権を持っている。
憲法第41条は、国会は国権の最高機関であって、唯一の立法機関で
あると決めています。
その国会が郵政民営化法を否決したのに、内閣総理大臣が納得できな
いといって、国民投票に代わる衆議院選挙で決着を付けようとしたのは、
内閣総理大臣が従わなければならない国会の決定を踏みにじって、首
相を国会の上に置いたことであって、これは明らかな憲法違反であると
私は言ったのです。
小泉首相は重大な憲法違反をしたので直ちに責任を取るべきだという発
言をしました。
これが私のフジテレビ生番組最後の出演になったのです。その後出演の
依頼はなくなりました。
内部から非公式の情報が入ってきましたが、政治の方から相当なプレッ
シャーがあったそうです。
それから8月16日だったと記憶しているのですが、TBSのお昼の芸能
番組から出演依頼がありました。
私は芸能番組には出ないことにしていたのですが、少しでも発言の機会
があれば出演しようと考えました。テーマは静岡7区の選挙に関わること
なので割合おとなしい解説をして帰ってきたのです。
そうしましたらその夕方でした。私を呼んだアシスタントディレクターが
電話をくれました。『実は森田さんが出演された直後に、TBSの官邸記
者クラブの政治部記者二人が飛んできました。
それで急きょ会議が開かれて、今後は森田には依頼するなと言われまし
た』と。
TBSの政治記者が官邸から飛んできたというのは、その記者が官邸から
何かを言われたのだと思います。
これが本当の東京のテレビ出演の最後になりました。
私に限らず、小泉を批判し郵政民営化を批判した人は、ほとんどテレビ
から一掃されました。ある意味、政界に起こった小泉パージがマスコミに
おいても起こったのです。
1950年のレッドパージのようなことが起こったのだと思います。
その後は東京のテレビ局、東京の大新聞は私との連絡を絶ちました。
ちょっと怖い話ですね。
戦前の軍国主義の時代と同じですね。マスコミの危機です。
10人の記者がいて、そのグループの中に一人だけ間違ったことは絶対
したくないという記者がいればブレーキになります。
私は先ほど、信念は反戦、平和と言いましたが、もうひとつあります。
それはストイシズムです。禁欲主義です。徹底的に禁欲主義で生きて
きました。
禁欲主義者が一人いれば、周りの人々のブレーキになります。
新聞記者の世界でも、多くの記者の中に悪いことは絶対しないという人
が一人いれば、他の9人を抑制する効果があります。
批判者がいなくなることは社会のブレーキがなくなるようなものです。
悪いことは絶対しないという人間がいなくなった社会になることは恐ろし
いです。
いったん、規律とかモラルとか、悪いことはしないという論理が消える
と、歯止めがなくなるのです。ですから今のジャーナリズムはもの
すごい危機です。批判者を排除したら社会は暗くなります。
日本のマスコミが本当に心配ですね。
ワシントンタイムスが1ページに亘り、私がどうしてテレビから姿を消し
たかについて私のインタビューを載せたことがあります。
その記事を書いた記者はテレビ局に連絡を取り質問書を送ったそうで
す。ところがどこもちゃんとした回答をしなかったそうです。
私を出演させなかったのは、テレビ局のトップの意思だったと思います。
その裏側にあったのは政治権力の圧力だったと思いッます。
こういうこともありました。小渕内閣の頃だったと記憶していますが、
新井将敬という大変良い政治家が自殺した事件がありました。
新井将敬さんは一度離党して、その後自民党に戻りましたが、気の毒な
ほど自民党内でいじめられていました。これはよく知られていました。
こういうことも彼が追い詰められた原因の一つではないかと思っていま
した。
私がテレビに出演しているときに、新井将敬さんの自殺についてのキャ
スターの質問に、今の政界が冷たすぎる、自民党が冷たすぎる、そこに
も一つの原因がある、新井さんのような真面目な人間を助ける必要があ
った、と答えました。
その直後、自民党本部に抗議の電話が殺到したそうです。
その時の幹事長か幹事長代理の野中広務さんが、テレビ局に抗議の電
話をしたそうです。野中さんはすごい人です。プロ中のプロの政治家で
です。
私が発言した『ザ・ウィーク』という番組のプロデューサーが私のところ
へ電話をかけてきました。
『野中さんからきついお叱りを受けて困っています』と言うので、君は野
中さんに『野中は切る』と提案しなさいと、僕を『ザ・ウィーク』から切
れば、『ザ・ウィーク』は守られるし、君の立場も守られるからそう
しなさいと言ったのですが、結局『ザ・ウィーク』という番組そのものが
すぐになくなりました。
野中さんが猛烈に抗議した結果だったと聞きました。
野中さんにやられたという人は非常に多いです。野中さんは闘う人でし
た。ただオープンでした。小泉パージのときは裏でやりました。
実は2005年5月頃のことでした。
アメリカのウォール街から帰ってきた人から聞いたのですが、アメリカの
保険業界が多額の政治献金を集めて、共和党系の大広告会社に日本で
の広告プロジェクトを依頼したと。
その巨大広告メディアが日本の独占的巨大広告会社の電通に対して
5000億円で日本国民の頭を『民営化が善で、官営は悪だ』というよう
に切り替える広告プロジェクトを出したというのです。
2005年初め頃から各テレビ局から一斉に、いろんな番組の中で
『民営化が善で、郵政は民営化しなければ日本が潰れる』という考えを、
あらゆるニュースやもろもろの番組で流したのです。
そこで私は各方面を打診して、500億ではない、兆の額だという証言を
得たものですから、ホームページにそれを書いたのです。これは大反響
がありました。
そうしたらテレビ局の知り合いから電話が来ました、『森田さん、申し訳
けないが森田さんには仕事は頼めません。マスコミで仕事をしていて電通
を批判するというのは、マスコミ人としての自殺です。
電通を批判した人間はマスコミには登場できないのです。申し訳ないが
森田さん、さようなら』という電話がかかりました。
私も覚悟の上でやっています。仕事がなくなることは覚悟していました。
それ以上に、自分が電通批判をやることで、電通という会社がどんなに
すごい独占体かを知ることが出来たのです。
実は小泉首相が衆議院を解散した一週間後に、米国の巨大な広告会社
のボスが首相官邸で総理大臣の小泉と会っています、官邸の中で。
こういう大掛かりなことが行われて、郵政民営化法が成立したのです。
それを私が暴いたのです。私には悔いはないです。
現代社会における広告の巨大な力を知ることが出来たのです。
アメリカの巨大広告会社の後ろにはブッシュがいるわけですね。
そうだと思います。根本はブッシュから出ているのです。
アメリカの保険業界はたちが悪いのです。日本の政治はアメリカにシッポ
を振っていると、アメリカ政府が言えば日本政府はなんでも従うことをよ
く知っています。
そこでアメリカ政府に献金してアメリカ政府を動かし、アメリカ政府を通
じて日本政府を動かして、日本政府から保険はアメリカを優遇せよとい
うことをやらせてきたのです。
今は、がん保険などの中間分野の諸々の保険は、アメリカが取ってしま
ったのです。
そして最後に残っている簡易保険と医療保険に狙いを付けて、郵政改革
と医療改革を要求してきて、日本をメチャメチャにしてしまったのです。
これが郵政と医療をメチャメチャにするきっかけになったのです。
一体、政治家はどこ向いて政治をやっているんでしょうか。
今の政治家はアメリカの属国の政治家なのです。
イギリス全盛期のイギリス植民地の国々の政実家と同じです。
フランスの植民地のときのベトナムの政治家と同じです。
日本民族の歴史の中で、今日ほど日本人の心が荒廃した時代は
なかったのでは。
私は、日本社会のバランスが崩れた結果だと思います。
第二次世界大戦後の高度経済成長で産業に人が足りなくなり、そこか
ら農業社会が崩れました。
それと共に大家族制度が崩壊したのです。モラルは大家族制度によっ
て保たれていたのです。大家族制度は主婦の大変な忍耐で保たれて
きました。
その忍耐がモラルの基本だったのです。兄弟の多い大家族の中で
みんなで教育し、助け合いながら福祉、教育まで全部大家族内でやっ
ていたのですずっと長い間そうでした。。
それが産業中心主義の高度成長でいっきに崩れました。
地域と大都会、工業と農業、企業と家庭、そういうバランスが崩れて企
業に偏重していく。そうすると企業の論理が幅を利かす。
企業の論理とは儲けの論理です。企業内では理性と合理主義だけが
尊ばれます。
しかし人間というのは感情とか情念が基盤にあって理性があるのです。
そして非合理についての対応能力があって、合理主義があるのです。
非合理を否定し、情念を否定した社会では宛然な人間の情念は育たな
い。産業経済中心の行き方は、非合理を否定して本当のモラルとか
知恵が育たない社会を作ったまま、反省することなく走ってきたのです。
今の社会は全て合理主義です。全て理性です。
情念の価値は認めないし、非合理の価値も認めないのです。
ただし人間の社会は非合理な社会なのです。
非合理の社会であるから人間の知恵や力を超えたもの、個人がそれぞ
れの神を信じながら、自己を規制して生きたいるのです。
伝統的な社会のバランスを崩して、産業資本主義が社会全体をを支配
するようになったことがモラル崩壊のもとになっているのです。
更に悪いことに、アメリカを中心に極端な自由競争主義がこの30年間
世界を支配してしまいました。
ただ勝ちさえすればいい、金さえあればいい、という論理がまかり通る
ようになりました。
自分さえ良ければ主義、これはジョージ・ソロスの言葉なのですが、
一昨年彼が出した本で、アメリカは自分さえ良ければ社会になって、
指導層もみんな自分さえ良ければになってしまった。
こんな社会が長持ちするはずがない、必ず崩壊すると警告した本です。
みんな自分さえよければ主義になってモラルは崩壊しました。
政治家もモラルなき行動を非難されても責任を取らず、けじめがつかな
くなりました。
この傾向がどんどん蔓延して、今日の惨憺たる姿の原因になったと思
います。ただしこれはみんなが気が付けば治るのです。すぐ治ります。
どうしたら気が付くでしょうか。
私は週の6、7割は地方に講演に行っています。
公演をした後、懇談会に出ます。みなさんと名刺交換しますと『何々塾』
という名刺の人が増えています。
それは経営者など企業人に多い。『塾』は企業人の助け合いの関係を
守るための会です。
自由競争と自己責任の論理で競争社会を導入したために人間関係が
壊れた。自由競争主義は友情も破壊しました。
競争原理では人間の絆が崩れていくのです。そこで、生きる上では
人間の絆の方がはるかに大事だということに気が付くのです。
それで多くの方々が地域的に塾を作り始めたのです。
地域に影響力のある人が塾をつくる、宗教指導者が塾を作る、教育者
が塾を作るというように各種の塾が生まれ、『塾運動』ともいうべき運動
が始まりました。
モラルの崩壊、人間関係の崩壊、助け合い思いやりの崩壊、これを直
そうと自由な人の繋がりを作って、日本を道徳的に再建していこうという
動きが全国で始まっているのです。
たとえて言えば、人間の身体が衰退したときに体の各部分で細胞が動
きだして人間の身体を蘇らせるのと似たような動きが始まっているので
す。
私も友人から勧められてこの4月から森田塾をやりますとホームペー
ジに書いたところ反響がありました。
私は生きているうちに全国各地に一万の塾を作り、その塾をインター
ネットで結んで草の根から新たな道徳復興運動を起こすことにしました。
堕落したマスメディアに潰されないようなネットワークを作っていこうと
考えています。
共通しているのはもう少しまともな日本をつくろうと、また考えることに
しようと、もう少し真っすぐに生きようということです。
テレビの時代は考えない時代です。これが人間を堕落させているの
です。こういう場としての『塾』を無数に作っていこうと。
目の黒いうちに堕落した東京のマスメディアに対して一矢報いなければ
ならんと思ってやっています。
小泉純一郎と小沢一郎という政治家をどう捉えていますか。
共通しているのは二人とも人間の悲しみをあまり知らないということです。
自分自身に大きな失敗がほとんどありません。挫折がないです。
人間というのは失敗や挫折によってどん底を経験し、そのどん底から
社会を眺めて人間を知るのです。社会を知るのです。
政実家は、そういう経験を積んだ人でないとまともな政治家になれない
と私は思っているのです。
二人は本当の人間の悲しみを知らないと思います。だから二人とも非常
に傲慢です。
それと二人に共通しているのはアメリカ信仰です。小泉はブッシュと組
んでこの数年間を切り回しました。小沢もアメリカに弱い。
小沢さんもアメリカ信仰ですか。
小沢一郎の本を見れば分かるように、小沢一郎もアメリカ信仰です。
ただ小沢は1993年以来、野に下って与党に戻ろうとしてきたのですが
成功していない。
今度は民主党を率いて政権を取ろうとしています。
過去において、小沢さんは努力していいところまでいくのですが、ここが
勝負だという、いわゆる勝負時に失敗している政治家です。
例えばどういう場面ですか。
1993年に細川政権を作った、これは天才的でした。見事でした。
ですが小沢一郎が細川政権を潰してしまうのです。ほんの9ケ月でした。
2007年7月に参議院選挙で勝った。大勝利でした。
その直後に大連立工作をやったのですが、そこでつまずきました。
普通の政治家ならこれで終わりになるのですが、彼は蘇って今度の衆議
員選挙の指揮を執ります。
今度は勝つ可能性があります。これが彼の最後の勝負になると思います。
今まで彼は、ここぞというときに失敗しているのです。
それは何故か。それはチームを作ることが出来ないのです。人間、一人
の力は弱いものです。チーム力でないとダメなのです。
小泉もチームもチームは作れなかったのですが、竹中などのチームを
作りました。アメリカが作ってくれたのです。
一時期は小泉の勢いは良かったで。ただし今や、彼のやったことの結果
惨憺たるものです。だからこれから小泉純一郎は地獄を見ていくと思うの
です。
小沢一郎はまだ可能性が残っています。ここで勝つかどうか。
私は小沢政権ができる可能性の方が高いと思うのですが、しかし彼が
ちゃんとやるかどうか、危うさがあります。
小沢に独自の経済理論がない。あるのはアメリカの経済理論です。
これでは人類は不幸になるばかりです。
安全保障理論もむしろアメリカ依存の安全保障理論です。小沢は従米
的政実家です。
これからの社会は文明の衝突の時代です。文明の衝突を作り出したアメ
リカが中心であり続ける時代はもう終わります。これから世界は大混乱
期に入ります。心配です。
本当の悲しみを知り、地獄を経験し、地獄の底から社会を見て初めて社
会を理解する。それがトップリーダーの条件です。
これがないと謙虚さを欠き傲慢になる。権力を握った人間に謙虚さがなく
傲慢になるのは非常に危険です。
それと特に問題なのは、小沢がアメリカを崇拝していることです。
この点で小沢と小泉の二人は共通していると思います。ただ二人は仲が
悪い、敵対者だと言えると思います。
若い政治家の中で森田さんが期待する政治家はいますか。
私は若い政治家で批判精神と反抗精神のない政治家はダメだと思うの
です。
もちろん我慢することは大事です。忍耐力は大事ですが、忍耐力の限界
のときに戦わない政治家はダメだと思うのです。
今、若い政治家で戦い続けているのは浜松の城内実さんです。無所属
で頑張っていますから。
それから沖縄の下地幹郎さんです。彼ら二人は別々の道を進んでいま
すが、共通するのは小泉に嫌われて無所属で戦ったことです。
城内は僅差で敗れたが、下地は自公協力の公明党候補に小選挙区で
勝った。城内と下地には期待しています。
それから糸川正晃、国民新党の国対委員長をやっていますが、少数派
の道を進みながら、頑張っています。
民主党内にも少数ですが根性のある人間が出てきています。
惜しかったのが民主党の野田佳彦です。最後は代表選の立候補を断念
しましたが、例え小沢さんに勝てなくても民主党代表選に立つべきでした。
民主党にとって残念なのは、小沢代表派が小沢氏に批判的な次のリー
ダ~を潰しにかかっていることです。
自民党では後藤田正純さんが出てくる可能性があると思います。自分の
意見を持っていると思います。
正純氏が最初の立候補のときに選挙ポスター用の撮影をしたことが
あるんですが、短期間に政治家としての評価を得たというのは驚きですね。
今の自民党は損を覚悟で自分の意地を貫くという人はほとんどいなくな
りました。自民党の政治家はいったん得たポストは手放さなくなりました。
そんな中で後藤田だけがそれをやりました。辞職できないほど自民党の
政治家が衰えたということです。
アリストテレスが人間の職業は三つに大別できるよ言っています。
ひとつは政治家的職業、二つは実業家的職業、三つは学者的職業。
そしてこの職業を成り立たせているもの、失ったら成り立たないものとし
て、政治家においてはプライド、実業家においては利益、学者的職業に
おいては理想を挙げています。
2500年前の言葉ですが、今でも真理です。だからプライドのない政治
家は政治家といえないと思います。
次の選挙後、政界再編があるとしたらどんな形になりそうですか。
先ずどうあるべきかとということから話しますと、資本主義の政党と社会
民主主義の政党による二大政党がよいと思います。ただ実現は困難です。
日本が今の社会制度を取っている限りは、社会は二つの基準でなり立っ
ています。
政治的民主主義と経済的な資本主義の二つで成り立っています。
この二つがバランスしている社会は安定しています。
しかし崩すと大変です。自由競争だけ徹底して行って、民主主義を潰した
のはブッシュ政権や小泉の原理でした。この結果、社会は崩れた。
民主主義に重点を置くのが社会民主主義です。資本主義、自由競争に
重点を置くのが資本主義、自由主義です。
この二つの政党が競合するというやり方がよいと思います。
だが今、自由主義により重点を置く人が自民党にも民主党にもいる。
社会民主主義者は少なくなったが民主党にいる。自民党にもいる。
二つの路線が一つの党に渾然となっているから、二大政党制がうまく機
能しないのです。
ただ政治は理念だけで動いているのではありません。
しかし、『自由』に重点を置くなら『自由重視』の党へ、『民主』に重点
を置くなら『民主重視』の党に二分されるべきです。
ところが現実は、大連立というもたれ合い体制に向かう恐れが強いと思い
ます。
総選挙後の政界再編成の可能性は高いと思います。再編でも正義のた
めに戦う政治家の再編なら意味がある。例えば党の指導部が裏切ったら
断固離党して戦う、つまり少数党になっても戦うという再編ならば意味が
ある。
政権を維持したり、有利にするための政界再編には私は賛成できません
が、指導者が裏切ったときに戦う再編ならば大いにやってもらいたいとい
うのが私の意見です。
基本的には今の大新聞主導で行われている政界再編というのは、権力
を維持するための政界再編論ですから、これは間違っていると思います。
政界再編を念頭にいろんなグループができつつありますね。
しかし総選挙目前の動きにはパワーがない。
例えば運動を起こすには、資金を作る力がないとダメですが、資金がな
い。それ以上い同志的な団結を作る強烈な中心メンバーが必要なので
すが、これがない。
チームを作る力というのは同時に資金を作る能力でもあるのです。
そういう力を持った政治家がいなくなった。
総選挙前の政界再編成は大したものではないと思います。本格的な再
編成は、総選挙後になります。警戒すべきは大連立です。
今後、政治評論家として特に力を入れていきたいことは。
冒頭で平和のことを話しましたが、もうひとつは日本が失った独立。
つまり我々の100年後、300年後の日本人に対して今我々が遺してい
くものは従属国日本です。それは政治的、経済的、社会的にアメリカに
従属しているだけではない。精神的にも従属しているのです。
精神が腐っているのです。これがモラルの崩壊のもとでもあります。
私が一番重視しているのは平和と独立です。
日本はアメリカの従属国であってはいけないのです。
世界に200か国ありますが、他国に頼って生きていこうとしているよう
な国はほとんどないのです。日本だけです。
1億2700万人もいる大きな国なのに、自ら国を守ろうと考えずにアメ
リカに守ってもらおう、守ってもらうにはアメリカに、国の主権も富も
精神もアメリカに差し上げましょういうような、だらしない国はほとんど
ないです。
私はせめて後世の人に独立国日本を遺したいと思っています
憲法を守る立場として強く主張したいことは。
アメリカに従属している間は、日本人が戦争に巻き込まれないために、
憲法9条は絶対に必要です。
憲法9条があったから、アメリカが日本を戦争に巻き込むことが成功しな
かったのです。だからアメリカに従属している限り、憲法9条は守り続け
なければいけないのです。
私は今の憲法はよいものだと思いますが、憲法改正を行うとしたら日本
がアメリカから完全に独立した後で行えばよいと思う。
独立してアメリカに影響されない状況の中で、投票したらいいと思うので
すが、ただ従属している間は、アメリカが日本に戦争を肩代わりさせよう
としていますから、その唯一の防波堤の憲法9条は維持し続けないと、
アメリカの戦争に巻き込まれてしまいます。
今、日本は人心が荒廃し、国も衰退しています。この先希望が持てる
でしょうか。
私は、日本は再生に向かって、そして脱アメリカに向けて動き出したと思
うのです。
無数の塾が生まれつつある。あとは勇気あるリーダーが出てくることです。
時代を変えるためには吉田松陰とか坂本竜馬とか西郷隆盛のような自己
犠牲をいとわない指導者、勇気を持った指導者が必要です。
優秀な指導者の命を懸けた、命を犠牲にした行動が一般大衆の目を覚
ますのです。
一般大衆の教育のためには指導者が命を懸けなければダメだ思います。
そういう勇気ある指導者を出したいですね。そういうリーダーが出てくれ
ば日本の独立と再生への動きはどんどん広がっていくと思うのです。
そういう日本を作るためにも、もうひと踏ん張り頑張って頂きたいです。
私も老骨に鞭打って努力します。
これから10年は健康維持して頑張らないといけないと決意しています。
ありがとうございました。
本当にありがとうございました。
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