民主党、衆議院議員 ・ 枝野幸男 <ポートレートとインタビュー>
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民主党衆議院議員・枝野幸男
2008.12   於港区東新橋1丁目 イタリア公園  
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
尊敬に値する人間とは。
媚びない人ですね。権力とか権威とかに媚びない人。
例えば第二次世界大戦中の非推薦で選挙をやったような人たち。
斎藤隆夫とか尾崎顎堂とかですね。
どんな政治家でありたいと思っていますか。
政治家以前に媚びない人間でありたいと思っているわけですが、これって
政治家にとってひとつの軸ではないでしょうか。
もうひとつは、僕は合理的な人間でありたいと、つまり時流や感情に振り回
されないでいたいと思っています。
情と理でいうと理の方を取ると。
私は国民大衆の感情まで含めて、合理的に考えるのが本当の合理的で
あって、感情や情の世界を考慮に入れられないのは合理的ではないと思
っているんですけどね。
理と情は対立概念ではないと思うんですけど。
今まで接した中で、特に評価する政治家はいますか。
やっぱり菅さんでしょうね。
直接会ったことのある政治家なら菅さんですね。哲学より、政治家として
の技量かな、評価するのは。
私の見る限りでは官僚に言うことを聞かせる唯一の政治家ですよ。
官僚が嫌がることを政治の力で無理やりやらせた唯一の政治家ですね。
具体的に菅さんの何が優れていたんですか。
官僚と同じ知的水準にあるということですね。
同じ知的水準になければ戦えっこないですよ。だからこそ菅さんは、薬害
エイズで戦えたと思うんです。そこが決定的だと思いますよ。
知的水準が対等であれば政治家の絶対勝ちですから。負けてる政治家は
いかに知的に劣っているかということだと思います。
知的レベルが同じなら権力を持っている政治家の方が強いと。
官僚は政治家が決めたことに従うのが仕事なんですが、今、実態がこん
な風になっているのは、政治家が官僚を使えるだけの知識だとか政策だと
か、判断能力を持っていないからなんです。
官僚と同じ水準になれば、分かりました、意見が違うけどそれはそれでひ
とつの考え方ですからそれに従いますと、必ずそう言います。
知的レベルの他に、菅さんの持つ人間的強さ、喧嘩強さもあったのでは。
いや、知的な喧嘩をするんですから、大きな声を上げて机を叩くだけでは
いうことを聞かないし、その喧嘩は勝てない。
例えば菅さんは、薬害エイズのときに誰がどこを調べるかについて固有
名詞で割り振るぞとやったんですよ。
そうすると後で見つかった時に誰の責任かハッキリするから、言うことを聞
かざるをえない。
こういう喧嘩の仕方をするわけです。だって大きな声上げて机を叩くんだっ
たら、自民党にもっと強い人が沢山いますけど、この人たちは全部手玉に
取られているわけですから。
政官業に留まらず日本人全体のモラルの低下の根源的な原因は。
ふたつあります。
ひとつは社会における当事者意識が希薄化した。これはある意味必然で、
情報、通信、交通が発達して、日々接している世間はテレビを通じての世間
であって、自分が当事者ではない。
ゴミの不法投棄だって、その投棄された後をどうするかについての当事者
じゃない。最近のモンスターペアレンツとかクレーマーの話もそうで、社会
を自分とは別世界のクレームをつける対象と考えている。
自分も社会の中では、クレームを受ける立場にもなるはずなのに、あまりに
もその距離が遠いために、当事者意識がなくなっている。
これはひとつの社会の必然として生じている現象だと思います。
情報のマス化は今更止められないわけで、それに代替するような小さなコ
ミュニティーを再構築するしかないです。
小さなコミュニテーで当事者意識を持たざるを得ないようにしていくしかな
いですね。
もうひとつは太平洋戦争の総括をちゃんとしていないこと。そこで誰も責任
を取っていないということだと思います。
日本は世界でどんな国家と見られていると思いますか。
非常に分かりやすい。お金持ち、それ以上でもそれ以下でもないと思いま
す。逆を見たらいいわけで、例えば我々はアラブの産油国の文化について
ほとんど関心がないし知らないように、世界の国々から見れば日本も一緒
です。
中東は油を持っているからお金持ちであって、日本は一生懸命働いて技術
力あるからお金を持っているだけで、それ以上でもそれ以下でもない。
世界の誰もそんなに日本のことなんか注目してないです。
お金の面以外では。
日本人が自立心にかけるのは、自国の安全を他国に丸投げしていることに
もかんけいあるのでは。
全く関係ないと思います。だって自国の安全を自国だけで守られている国
は多分世界中でアメリカしかないでしょう。
ヨーロッパの国々だってNATOを通じてアメリカの恩恵を受けているし、
世界には全く自衛の軍的組織を持たずに安全保障を他国に依存している国
も沢山あるわけです。
日本みたいに、こんな小さな弱い国が自国を自分だけで守れるはずがない
と思いますが。
アメリカに守ってもらっているとしても余りに基地が多すぎたり、米兵に
よる問題が多すぎますね。
アメリカに守ってもらっていることが問題ではなくて、一方的に守ってもら
っていると勘違いするのが問題なんです。
アメリカはボランテアで守ってくれているわけじゃなくて、アメリカの都合
でアメリカの利害、国益に叶うから守ってくれているに過ぎないということ
をちゃんと受け止めなければ。
それを前提にすれば日本はアメリカにもっとハッキリものが言えるのでは。
もっと言えますよ。それがいやならアメリカに帰れと言ったって困るのは
アメリカですから。
それが分かっていて何故アメリカに言えないのでしょうか。
そこが問題なんですよ。守ってもらっていることが問題なんじゃなくて、守
ってもらっていることに卑屈になっていることが問題なんです。
そういう日本人の受け止め方を変えることはできますか。
変わらざるを得ないと思いますね。というのはアメリカの国益にとって日本
を守る必要性が小さくなっている上に、守るだけの力がなくなってきている
からです。
アメリカが頼るに値しない存在になってくるので、日本は否応なく自立せざ
るを得ないと思っています。
そうすると基地の縮小は好機ですね。
そうです。
沖縄の人達にとって米軍基地はメチャクチャ多すぎますから。
だけど下手すると5年後くらいにはアメリカの基地を沖縄の市町村が誘致
するっていう話になるかもしれません。
出て行けって言っても出ていかないと思っているだけで、本当に出ていった
ときに、じゃあ経済はどうやって成り立たせるのか。
アメリカは出ていくと思いますので、むしろ出て行った後どうするかの方が
これから重要課題なんです。
出て行ったら暮らしが成り立たないということになりますからね。このまま
行けば。
そういう時期なんですか、今は。
だと思います。これからの5年10年というはそういう変化の気がする。
枝野さんは「日本台湾友好議員懇談会」の事務総長を務めたり、「チベット
問題を考える会」の会長としてダライ・ラマ氏と会談するなど、中国にとっ
ては厳しい態度を取るのは。
結果的に相手が中国だったということです。
人権や民主主義が世界中で迫害されているけれども、近隣でいうとチベッ
ト、次に台湾。ただチベットや台湾とミャンマーや北朝鮮と違うのは国際問
題と内政問題の違いです。
チベットと台湾は国際問題です。ミャンマーと北朝鮮は内政問題なんです。
内政問題は、基本は国内自らで決めるべきと思う。
重要なのは、国際的に人権が侵害されているということ。それに対しては
国際社会でサポートする必要があると僕は思っています。
そうするとミャンマーよりも北朝鮮よりも実はチベットなんです。
結果的に抑圧する側が中国ということであって、別に中国が嫌いなわけで
もないし、むしろアジアの中では相対的に中国は頑張っているなと、ミャン
マーとか北朝鮮とかに比べれば。
だけどおかしいところはおかしいと言おうねと、それだけの話です。非常に
シンプルです。
今後、中国を中心とした北東アジアの推移をどう見ますか。
最大のリスクは中国の崩壊です。
順調に大きくなって脅威になるというリスクより、内部矛盾が拡大して中国
が内部崩壊、体制崩壊するときの周囲に与えるマイナスの影響の方が大
きいだろうと思いますけど。
それはいつごろだと予想しますか。
早ければ2、3年、長ければ20、30年だと思います。
やっぱり経済の混乱から生じると思いますが、どういうシナリオを取るかは
読み切れないところがあるんですよね。
オバマさんの勝利宣言には感動しましたが、彼のような政治家が日本に
生まれないのは日本の政治風土に関係ありますか。
風土じゃなくて政治システムそのものが生みにくくなっているんです。
というのはオバマの勝利宣言演説のような場面って日本にはあんまりない
んです。
それは議会システムもそうだし、メディアシステムもそうだし、政党システ
ムもそうなんです。
例えば選挙の結果、政権を担うことになった首相が国民に向かって演説
するとか。
戦前の議会は本会議中心主義で、有名な斉藤隆夫の演説なんて2時間
とか2時間半やっているんです。
この間私1時間45分本会議で演説したら大ひんしゅくをかいました。
長い演説自体が、そもそも普段やっていないですよね。例えば総選挙終わ
った晩にやるのは記者会見なんですけど、記者会見の前に演説をするべ
きですよね。
カストロさんは相当長い演説ですね。
今はそういう場もないし、場がないからトレーニングされてないし、そうい
う悪循環だと思いますね。
ただ少し変わりつつあるのは僕らの世代位から下の、2世3世出ない都市
部の議員は演説を一生懸命やっているんですよ。僕はちょっと期待してい
るんです。
もし私が党首だったら、総選挙の夜は記者会見の前にテレビ演説します。
求められるのはその人の生き方とか人間性がにじみ出た演説ですよね。
そう、俗に哲学といわれている部分のところをちゃんと話さないとダメです
ね。野田佳彦さんなんか上手いですよ。
現在、首相に最も相応しいと思う人はいますか。
いません。それを自分だと思えない人は政治家をやるべきじゃないという
ことです。(笑)
そうすると小沢代表は首相として相応しくないと。
理想的な人がいないときは相対的に誰がよりましかという選択をするのが
政治ですから。
小沢さんを政治家としてどう評価しますか。
僕は時代の狭間にいるが故に気の毒だなと思いますけどね。
小沢さんが育ってきた土壌は55年体制ですよ。
彼がリーダーとして今、プレイしているのはポスト55年体制です。
そのヤップはものすごく大きいですが、そういう端境期のリーダーはその
ギャップを越えないと上手くいかないわけです。そういう意味では苦労され
てるなと思いますけどね。
自民党の60代くらいの政治家は、金をたくさん集めて派閥の子分を増やし
て総理大臣を目指すという55年体制の中で育ってきた。
ところがこの15年くらい、そういうことをやっちゃだダメだということに
なり、逆に子分よりも国民大衆の人気どう得るかの方がずっと大事になっ
て、そういうことを全然やらなかった小泉さんが総理になったわけです。
加藤紘一さんとか山崎拓さんは気の毒だなと思いますよ。
総理になるにはそういうことをしなきゃいけなかったからそうしてきたの
に、やってきたら梯子を外されちゃったみたいな感じでしょう。
それは小沢さんも同じですが、それでも基礎体力があって頑張れるっから
余計そのずれを抱えていますよね。
本人はあまり表に出ずに裏で権力をコントロールする、これが権力の本当
の姿だとずっと思って育ってきたんじゃないですか。
ところがそんなに権力を握りたいなら党首をやって自分で総理になれと迫
られて党首をやらされているわけですよ。気の毒だなと思います。
気の毒だけどしょうがない。時代の変化ですから。
とはいえ、そういう小沢さんを担ぐのは小沢さんの力に頼りたい人も多いと。
なんでしょうね。推している方はね。(笑)
小沢さんは時代が変化したのに生き残っているということは、基礎体力が
強いんですね。それはやっぱり評価すべきだし、そこを頼りにする議員が
いることは理解します。同意はしませんけど。
菅さんは小沢さんとは本質的に合わない印象がありますが、今小沢さんを
ずいぶんサポートしていますね。
やっぱり敵の敵は味方ですよ。私もそういう意味では小沢さん許容ですか
ら。この間一度も小沢降ろしをやっていないし、ダイレクトで小沢批判はし
ていないです。
小沢氏と距離があるという先入観から小沢批判を繰り返しているように誤解
されますけど、全部エクスキューズして、小沢批判はしていないです。
それは敵の敵は味方ということで、みんなが小沢代表でやりたかったら、
しょうがないと思っているんです。
今の情勢ですと小沢さんが勝利して首相になる可能性がありますが、
本心はイヤですか。
いや、首相にんってもらわないと困るんで、自分が首相になりたくないか
ラ、そこで変なことをやられたら困るんです。
次の衆議院選挙の後に、どんな政界再編を希望しますか。
私自身は政界再編は怒らない方がいいと思っているし、起こらないだろう
と思っています。
起こらないほどに民主党は圧勝するという意味ですか。
というよりも、きれいに二大政党にで政策でわかれるなんてあり得ないん
です。小選挙区制度を前提にすれば、選挙区の事情でなかなか行ったり
来たりしにくいんですよ。
それから勝っている側は絶対割れませんから。割れるのは負けた側なん
ですね。
だから隅っこの方で何人か行ったり来たりがあっても、自民党が真っ二つ
に分かれるというのは、僕は一貫して幻想だと思っているんです。
民主党が政権を取ったらまず最初に実行する政策とは。
一番最初にやるのは、役所のみなさん、今までやってきたことはゼロベー
スですよ、いやなら辞めてねということ。
予算にしろ、去年までの予算付いてますから、今年もやりますというのは
ありませんよと。今までここまで進んできたからやって下さいはありませ
んよと、全部ゼロベースですよということを役所に迫って、言うことを聞か
せるのが一番大事だし、それをやらなければ意味はないと思いますけど。 
外交はあまり変わらないですか。
外交は日本の都合だけでは変わらないですね。
変わるとしたらどういう点ですか。
イラクから自衛隊が帰ってくるというのはテクニカルな小さな話で、大きな
話で言えば、アメリカにものをもっと言えるようになるのかな。
ものを言えるようになるのは、実は日本の事情だけではなくて、オバマ政
権になれば向こうも、オイ、もうちょっと日本はものを言っていいから、そ
の代わり自前でやれよみたいな姿勢になってくると思いますけどね。
その分、大変にもなりますね。
僕はあんまり大変だとは思わないですけど。
大変だとすれば東アジアですよ。拉致とか北朝鮮は大変です。
これからアメリカは、東アジアとはもうあまり関わらんという感じだと思い
ますよ。
政治家としてどんな理念、哲学を大切に国づくりを目指しますか。
多様性です。多様性が許容される、多様性が評価される、そういう社会が
僕は望ましい社会だと思っているし、日本の置かれている状況からすれ
場、そういう社会になった方がいろんな問題を解決しやすいと思う。
僕の希望でもあるし、なおかつこの国の条件にも合っているので、僕の
発想は大きな方向性として常にこの多様性にたどり着きます。
ありがとうございました。
すいません、ありがとうございました。
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