民主党代表、衆議院議員・鳩山由紀夫
2007.10.24  於国会議事堂正面前
鳩山由紀夫 民主党代表、衆議院議員
≪インタビュー≫  聞き手・蛭田有一
民主党を誇りに思う点は。
まだ党自体完璧になっていませんので、完全には誇れないと思います。
私が民主党を作りたかった最大の理由は、今の政治家が国民の皆さんの信
頼を失っているということで、なんとしても信頼をもう一回取り返さなけれ
ばならないと思ったからです。
政治家がいいことを言っても、最終的には自分のために政治をやっているん
じゃないかと見透かされて信頼を失っていると思っているんです。
私が西郷隆盛さんの遺言の一節を常に、民主党を作るときに主張し続けた
のも、自分のために政治はあるんじゃないよと、身を捨てて初めて政治家と
して国民の皆さんのために政治ができるんだよということでした。
私心を捨てる政治を行いたい、それが結党の理由でした。とにかく私心を捨
てた政治を徹底させたいんであって、それを誇りに思えるような民主党にし
たいということです。
それが自民党との一番の違いになるんじゃないかと思います。
やはり権力の座に長く居座ってしまうと、そこに澱がたまってまさに政官業
の癒着体質そのものになってしまう。もっと言えば官僚に任せた政治になっ
てしまう。
無私になることによってはじめて、自分たちが国民のために政治を起こすん
だという気概を作り出すことが出来ると思ってます。
自民党の長期政権のもたらした全く評価できない部分に対して、我々は新鮮
な光を与えることができるし、そのことをもっと誇りに思えるような民主党
にしたいということです。
そのためには選挙の公認の際、私心を捨てた人かどうか厳しく見極める必要がありますね。
理想としては全くおっしゃる通りだと思います。
ただしそういう方が必ずしも選挙に強いかどうかという、違う尺度なるもん
ですから、有名人の方がいいみたいな話になりがちなところがあります。
民主党自体が、まだ本当にシビアに誇りに思えるような資質を持った人たち
ばかりを集めた党にはなり切っていないので、自民党との違いが見えにくく
なっていることはあると思いますね。
今の話ですと、この先も誇りある民主党にはなりそうもないということですか
いや、一人ひとりの政治家の資質は、訓練によって鍛え上げることが出来る
と思っていますから、私は事あるごとにそういう話を申しているつもりです
し、若い人材を育て上げることによって自民党の政治家には無い特筆を民主
党に持たせることは出来ると思っているんです。
新人議員に対する教育、啓蒙にかかってるということですね。
それ以上にリーダーや、執行部など、外に向けてメッセージ性を持っている
人たちが、今私が申し上げた誇りを持てる人材であることが望まれるわけで
すね。
その人の影響力は大きいわけですから。またその人たちの発する言葉によ
って政治家を変えていくことが出来るわけですから、全員が最初からという
こと以上に中心的な役割を持っている人たちがそのような思いを強く外に向
けて打ち出すことで、民主党自体をもっと輝く存在に仕立てあげることはで
きると思いますね。
道途上ですけれども、私は不可能では無いと思っているんです。
ただ政権を取ったときにそのような考え方を持続できるかどうかというのが
もっと大事なんですよ。
政権を取るとですね、権力というものは大変協力ですから、欲望があります
とそこに心を奪われてしまうということは十分ありうる話です。
ここはシビアに見ておかないといけない話だと思っているんです。
政権を取った後のほうが大変だと。
そうです。小泉さんが一時、表面的ですけど評価されたのは自民党をぶっ壊
すと、要するに自民党のために、俺はやってんじゃねえよということを非常
に分かりやすく表現した。
この人には欲が無いと、国民のために奉仕してくれる人ではないかという期
待感を与えたことは事実ですよね。
それを本気でやれるような政治家でなければならないと思うんですけどね。
小沢一郎民主党代表を政治家として、また人間としてどう評価していますか
政治家としてはめったに現れない人物だと思いますね。
私と小沢代表の決定的な違いは、政治的な経歴の違いがもたらしたものだ
と思っているんですが、若い頃から政治の道のど真ん中を歩いてこられた方
だけに、政治的なセンスとか駆け引きとかに関してはとても太刀打ちできな
いものを持っておりますね。
いかにして選挙に勝つかという戦略の立て方などは、我々から見てはとても
真似が出来ない。
例えば代表だったら一番人の多いところに行って演説したがるもんですが、
敢えて人の一番いないところに行って演説を始めると、それを貫いたんです
よね。
結果として参議院に勝ったわけです。そこまで信念を曲げないで自分が正し
いと思ったことを貫き通すというのは大したもんだなと思うんですよね。
ただ一方で、普通の人間からすると政治家の鋭すぎる感性みたいなものが
逆に一般の常識人からすると、とても理解しがたいところも出てくるのでは
と思っていて、今回の大連立劇を見ておりますと、我々のようなある意味で
経験のない人間の方が一般の国民の常識に近いもんですから、それが上
手くいったとしても国民の皆様には理解されない。
理解されなければ結果として選挙に勝てるわけがないじゃないかという部分
で、今回大きな違いが出てきたわけですね。
一般的な常識人のサイズの発想と政治のまさにど真ん中で経験を積み重ね
てきた人の戦術の違いが今回表面化したんじゃないかと思ってまして、どっ
ちが正しいということではないと思うんです。
ひょっとしたら小沢代表の主張のほうが正しくて、民主党を政権に近づけた
のかもしれない。
だから逆に、両者を上手く融合させながら回答を見出していくということ
で、民主党がこれからも国民の皆さんに期待されながら大胆な行動も打っ
ていける政党であればと思うんですけどね。
一人の人間としてはどうですか。
一人の人間としては、あの人も非常にシャイなところがあって、それが時と
して誤解を招いているわけですが、ただ二人だけで酒を飲んでいる時などは
実に気持ちがいい。
あの表情とは裏腹に、飲んでいて非常に楽しい存在であることは間違いない
んです。酒好きのおっちゃんという感じですね。
酒飲んで小沢代表の生の姿を見た人はファンになる人多いんじゃないでしょ
うか。私はそう思いますよ。
改憲派として自主憲法制定にかける思いとは。
アメリカに押し付けられたからなんとしても変えなければならないという発
想ではなくて、憲法は時代とともに変わって当然なんです。
この国が機能不全に陥っているような時に、その機能を回復させるために必
要な、憲法の改正議論を堂々と行うべきです。
アメリカに作られた憲法だから反対だという力みから申し上げているわけで
はないんです。
ただ、いまの憲法はアメリカのお膳立てによるものに違いないですね。
それはアメリカが押し付けてきたことは間違いないです。ただそうであっても
も、例えば民主主義というものを日本に定着させる、或いは二度と戦争を起
こしちゃいけないという戒めを含めて謳う。
そういった部分を現憲法の評価すべきところとして持つことは正しい話であ
って、アメリカから押し付けられたから変えなきゃいけないという話になる
べきじゃないんじゃないか。
中身がよければそれはそれで評価されていいのではないかと思うんです。
その評価すべき中身を自らの手で活字化するというプロセスが日本人の意識改革に是非とも必要と思うが。
ただ、今私が申し上げた憲法のいい部分の他に、どうもアメリカから押し付
けられて出来たんじゃないかなという部分があって、名誉ある地位を占めた
いと思う、という憲法の前文の言葉ですが。
私は国が他の国々にいい子ちゃんになって、世界の国々から喜ばれて名誉
ある地位を占めたいなんてなんていう発想ではなくて、それこそ自分の手で
この国を作り上げて、国の尊厳を日本人みんなが自覚するような、そういう
国にしていきたいと思っているんですが、そこにはまだ憲法で言い足りない
部分があると思っているものですから、憲法の前文などは大きく変えたいと
思っているんです。
鳩山さんの政治家としての究極の目標は。
尊厳ある国家を作るということですね。
今は日本自身が尊厳を失ってしまっている。そこで様々なトラブルや事件が
頻発していると思ってます。
外交においてはアメリカに寄りかかっていればいいと、内政に関しては官僚
に寄りかかっていればいいというように自分自身の自立心を失って依存心ば
かりが強くなってしまっている。
自分が何をやりたいかという発想を一人ひとりがもっと強く尊厳を持って自
覚できるような国に変えていかなきゃならない。
私がまさに一番政治家としてやりたいのは尊厳のある国家と国民を作り上げ
ていくということなんです。
それには一人ひとりの力を引き出すために地域主権、地域が中心となる日
本にしたいと、官僚が国のど真ん中に座って、それに政治家がおんぶに抱っ
こみたいな形でもたれあっているという中央集権国家ではなくて、地域の一
人ひとりが尊厳を持って生きることができる、自分たちで自分の故郷を作る
んだという気概をを持つことができるような制度に変えていくことが一番大
事で、先ず、最初にやらなきゃならない仕事はそこではないかと思っている
んです。
制度を変えることで国民の自立心が芽生えると。
そういうことです。要するに地域に権限を与える、戻すと言うべきかもしれ
ませんが、戻せばその与えられた権限を行使するために一人ひとりが今ま
でのように寄りかかっていてはいけなくなるわけです。
市町村や都道府県が国の政府に陳情合戦を毎年繰り広げるのは本当にさ
びしい姿でありましてそうではなくて市町村に人たちが自らの思いで町の将
来を描いて、それが実現できるように、国はそれとなくサポートするような
国と地方の関係を逆転させることが大事で、そのように制度を変えることで
尊厳を持った国民を作り上げていくことができると思っています。
権限を与えられればその責任を果たそうと最大限の創意工夫を試みるはずですね。
私はそう思います。国の外に関してもそうだと思いますね。
アメリカの方向ばっかり向いていれば責任がなくて済んでしまいますけど、
今日本は国としてほとんど尊敬されていないという現実をもっと我々は直視
すべきですよね。
国の外にも、国の中に関しても、もっと責任を持った国の制度に変えること
が私は大事だと思いますね。
その思いを達するためにも次の選挙は勝たなければなりませんね。
思いを達するには政権を取ってからが勝負だと思ってましてね、政権取るの
が目的になったらあべこべなんで、取ってから何をするのかの方がはるかに
重要なんですけどね。
とってダメだったら国民にすぐ見放されるわけですからね。
そうです。それでいいんです。そういうギッタンバッコみたいなシーソーゲ
ームみたいなことが日本ではあまりにもなさ過ぎていることがこの国の最も
不幸な政治の側面じゃないでしょうか。
とはいえ選挙には勝たなければなりませんね。
そうなんです。やっぱりそこにたどり着いちゃうんですよね。
勝ちながら誇りを持てるような政党にしていくことが大事だということですね。
民主党の中に自民党的な人がいますね。どうしてかなと思うときがありますが。
あるんですよね。でもそういう人を追い出すわけ行かないでしょう。難しい
ですよね。
追い出したら民主党株がドーンと上がるかもしれませんよ、自民党との違いが分かったって(笑)。
ハハハハハ、そうかもしれない(笑)。
ありがとうございました。
いいえ、とんでもございません。
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