エリア88(OVA)
『エリア88』のDVD、劇場版(OVA act.1&2の再編集版)とOVA act.3を観ました。
正直びっくりです。
劇場版が1985年、act.3が1986年の作品というコトで、期待して無かったんですよ。いろんな意味で。
いや、期待してないどころか「クソ」だろうとハナからあきらめてました。
昔のマンガ原作のOVAモノってほんっっとクソみたいなのが多いんですよ。
『魔獣戦線』とか『手天童子』とか(笑)。
そしたらなんと! 意外にもちゃんと作られていてビックリ。
当然今から20年近く前の作品なんでそれなりの「あたたかい目フィルター」のかかった評価ではありますが。
特にact.3は秀逸で、これだけ観ても問題が無い出来になっているんで、全部観るのがめんどくさい人はact.3だけ観てもいいです。
原作に対してオリジナルのストーリー構成(エピソードは全て原作ネタなんだけどそのピックアップの仕方と順番の組替え方のコトね)が結構バランス良く配置されているので原作を知らない人でも多分違和感無く観れるんじゃないかな?
(基本設定の部分でちょっと説明不足を感じるかも知れませんが。act.1&2があるんで。)
何でこんなにしっかり作られているんだろう? と簡単に調べてみたところ、何となく理由がわかりました。

アニメ業界で初の「テレビでは放映せずに売って利益を出すアニメ」いわゆるOVA(オリジナルビデオアニメーション)が登場したのが1983年の『ダロス』<製作:スタジオぴえろ>。
次の1984年には13(シリーズ)タイトルしか発売されてないので、1985年の発売である『エリア88』はそりゃもうOVA史における超初期の作品というコトになるのだ。
マーケット自体が確立してない当時であるから尚更手が抜けなかったんだろうなー、と思われる。
そして『エリア88』の製作も「スタジオぴえろ」。
『ダロス』でマーケットを開拓した先駆者として尚のこと、いいかげんなモノが作れなかったんだろうと思われる。いや、良いコトです。

気合の入り方の一例として声優陣なんかをピックアップしてみると、
風間真/塩沢兼人 神埼悟/安原義人 津雲涼子/玉川砂記子(紗己子) サキ・ヴァシュタール/志垣太郎 ミッキー・サイモン/富山敬 チャーリー/井上真樹夫 バクシー/古川登志夫 安田妙子/榊原良子 グエン・ヴァン・チョム/大塚周夫 イトー・シュウイチロー/千葉繁など。
役名無しだけど田中亮一なんかもいた。
スゴイです。大御所ばっか。
個人的にはミッキーの富山敬とバクシーの古川登志夫がイメージにピッタリ!
塩沢兼人の風間真はちょっと声がクール過ぎて違うような気が。
じゃあ誰がいいんだよ、と言われればやっぱ神谷明かな〜(笑)。
塩沢兼人はむしろサキのような気がする。

さて、今まで手放しでほめて来たので不満点でも。
てか、まるで正反対のコト言い出しますが、メチャクチャあります。不満点。
戦闘機に乗っている時のヘルメット被っている絵はカッコいいんだけど、新谷かおる独特のひょうたん型の顔を360度回すのは当時の技量では結構辛かったらしく、素顔でうろつかれるとかなりデッサン崩れてました。特に回想の真と涼子のデートシーンなんかボロボロ。劇場版は全編通して涼子がかわいくないです。
act.3では慣れたのか少しは良くなってますが。
てのはまあご愛嬌。
『エリア88』って序盤は松本零士の『戦場ロマンシリーズ』みたいに短編連作的エピソードで展開していくため、特に劇場版として再編集されたact.1&2に関しては原作に則して展開が追い掛けて行く分エピソードのブツ切りを見せられ、一本の映画として観るにはかなり辛い出来になってます。
ここら辺は割り切っている分act.3の方がイイです。
で、両編通しての不満はシナリオが、というよりはセリフ回しが!

新谷かおるマンガの魅力のかなりのウエイトを占める部分にイキなセリフ回しというのがある。
そう、読んでて思わずニヤっとする部分。
それは
「ほう、信用されてるとは意外だな。」
「別に信用しているわけじゃない。生き残っているから信用が付いて回るだけだ。
死ぬなよ。予定が狂う。」
とか
「その日悪魔は生きろと言った」(←コレはナレーションだけど。あ、手元に原作本が無いので細部の違いはご容赦を。)とか。
原作のセリフをまんま使っているトコはいいんだケド、オリジナルで入れたセリフに関してどーも魂を感じられない。
凄い不満。
ここさえちゃんとしていてくれれば、あれだけ出来ているんだから細かいコトなんかどうでも良かったと言えるのに。

あとはまぁ、原作ファンとして「プロジェクト4」どころか「砂漠空母」のエピソードがごっそり無いトコ。
これでは風間対神崎の構図がイマイチフ抜けたモノになってしまう〜。
ただまあ、ここら辺は言ってもしょうが無いんだよなー。
act.3までの全編194分で描き切れるとは思え無いし。
始めから194分使ってってコトならまだ違うかも知れないケド、多分良くてact.1が売れたらact.2も出せるかも的な予定だったように思えるし。(知らんケド)

まあ、とにかく「買って損はしない!」とは言わないが、オレは「買っても損した気にはなりませんでした」というトコロでしょうか。

蛇足として、
どっちかと言うと新田一郎が音楽やっているからというコトで買ったようなモンだった割りには、新田節の印象が残っているのは主題歌と挿入歌だけだったような気が。
まあ、作中で自然に聞けてたというコトでしょうか?
そういう意味では職人仕事ってヤツ?
ただちょっとだけ音楽がマンガっぽいような気がしました。
コレもまあ時代とか色々あるので一概には。
音響監督による使われ方のセンスとかもあるし。

2003年2月23日