デュッセルドルフ  〜 Düsseldorf 〜


 

 さて、デュッセルドルフに着いたら既に夕方。お腹がすいてきたので、せっかく日本人街のある都市なんだから日本食レストランを! ということで我々はホテルにチェックインした後、市電に乗って日本人街エリアへと繰り出したのであった。そうするといきなり目に飛び込んできたのが・・・ でたーーーっ! パチンコ(左の写真)。しかもカタカナでデカデカと。なんだかとても気恥ずかしい気分にみまわれた。まあわかるけどね。やっぱりニーズがあってのことだろうしね。でも、やっぱりなんか、あまりにもストレートってカンジじゃない? ちなみにこのパチンコ屋、地元の人の噂では、マル暴関係の人達が経営してる一般じゃない人達向けのお店らしい。あくまでこれは噂です。でも一般市民のみなさん、ここに入るときはある程度の覚悟を持って入った方がよろしいかと。
 で、さらに奥地へ進むと、またもや日本語の看板発見! 突撃ぃ〜!とばかりに意気込んで入ってみたのが右のラーメン屋「難波(なにわ)」。まあ、とんこつラーメンの本場・福岡からやってきた僕にとっては、ここは日本ではなくドイツなんだということを再認識させられた味であったが、異国の地で良く頑張っていると言えよう。ただ、強烈に日本を感じたことが1つ。それは、右の写真のちょっと奥にも写ってるけど、

みんな雑誌や漫画を読みながらご飯を食べていること。

 いや〜、まさに日本。これが日本の文化ですな〜。いや、正確に言えば、これぞヤパーニッシュ大衆食堂。1年間ドイツに住んでいて、すっかり忘れてましたわい、こういう日本の一面を。隣の隣にいた家族なんか、お父さんもお母さんも子供達も全員が漫画読んでたもんね、会話もなく黙々と。こりゃ日本人以外の人達がこの光景を見たら驚くだろうな〜。大体、レストランの中に雑誌が置いてあるのなんて、こっちに来てから見たことなかったもんね。ここではホントに日本のスタイルがそのまま息づいてるんですなぁ・・・ ふむう、デュッセルドルフ日本人街、恐るべし。

  

 さて、デュッセルドルフに行くのに何が楽しみだったかって、このカラオケですがな、カ・ラ・オ・ケ! 他の大都市にはチラホラあるらしいが、ハノーファーではまだ一軒も見たことないもんな〜。歌いたくて歌いたくてウズウズしとりましたばい。特に左の写真に写ってる二人。

♪ああ〜、だから今夜だっけっはぁ〜〜、君を抱いてい〜たい〜〜♪

 二人で熱唱でございます。ドイツ人のお客さんも手拍子してくれたでございます。歌に国境はないでございます。感激だったでございます。

 ちなみにここ、最初は僕たちしか客がいなくて、途中からやくざみたいなおっちゃんが出入りしてきたので、男性3人はひそかに、

「ヤバイ。これはキャッチバーかも。」

と感じていた。店の中を見渡すと、なんだかカウンターの奥で、ママとおっちゃんがヒソヒソとこちらを見ながら話している。不穏なムードだ。

「相手が4人くらいだったら、僕と宗倉さんでなんとかくい止めます。その間に加藤さんは、よしこを連れて外に出て下さい。そしてあとは然るべきところへ連絡して下さい。」

男性軍の間では、既にこのような作戦が話し合われていた。そんなとき、オネエチャンが一皿のフルーツ盛り合わせを持ってきた。

宗倉助教授「これ、注文してない。注文してないよ?」
オネエチャン「コレ〜、サービスデス〜。(たどたどしい日本語)」

ギクリ。来たぞ、来た来た。これ食べたらいよいよ蟻地獄へ引きずり込まれるぞぉ・・・

3人がやや青ざめた顔をして、フルーツ盛り合わせを眺めながらどうしようか悩んでいると、トイレから帰ってきたよしこが、いつもの調子でぶちかましてくれた。

よしこ「あ、美味しそう。いっただっきまぁ〜〜すっ! パクッ。
男3人「(あああああああああ!! 何て事を!!)」

我々は、嬉しそうにさくらんぼをパクつくよしこを目ん玉ひんむいて睨みつつも、そこはひとまず平静を装う。そして、これから起こるであろう事態に備えて呪文を唱える。

「落ち着け、落ち着け、落ち着け・・・・」

そうこうしていると、バタンと入口のドアが開いて数人の男達が。来たかっ!?

ママ「あら〜、いらっしゃあ〜〜い。」
客達「いや〜、今日も来ちゃいました〜。」

日本の普通のお客さん! 普通の店じゃねえか!!

あとで地元の人に聞いた話では、韓国人経営のこの店は、「歌は古いが値段は安い」ことで有名だそうな。

安心した我々男性3人は、それまでの緊張感から解き放たれ、自分たちの杞憂を笑い飛ばすかの如く、狂おしいほどに熱唱するのであった。よしこは十八番の松田聖子オンパレード。そして加藤博士は男の哀愁を匂わせるサザンオールスターズ。

こうやって、デュッセルドルフでの最初の夜は更けていった・・・・ ホテルに帰り着いたのは午前2時。




 デュッセルドルフ2日目は、土曜日。買い物デー! 前日は金曜日だったが、キリスト復活の祝日で商店街はお休み。次の日は日曜日なので、当然お休み。というわけで、今回の旅での買い物はこの土曜日に限定されるのであった。さっそく"デュッセルドルフ三越"に行ってみた。そこでまず我々が目にしたものは・・・・

「いらっしゃいませぇ〜〜〜〜。(微笑)」

 従業員のおねえちゃん達が、みな起立して、入口に立つ我々に向かって深々とお辞儀。すれ違う度に軽い会釈と「いらっしゃいませ」。常に笑顔! 僕と宗倉助教授は顔を見あせて何度もつぶやく。「これやっ!! これや、俺たちが忘れていたものは〜〜〜!!」
 思えばこの1年近くというもの、我々はドイツのデパートで、「おらおら、こっちはお前達に物を売ってやってんだぞ〜!(ちとデフォルメ気味)」なんていう対応をされてきた哀れな消費者だった。苦い思いを何度もしてきた。ところがだ。このドイツにあって完全に日本ワールドを形成しているこのデュッセルドルフ三越の店内は、まさに客にとってはユートピアであった。 「いらっしゃいませ。ニコッ。」 ああ、なんと心地よい! 買う買う。買います。買いますとも。あなたたちのところでは何でも買っちゃいます。そんな消費衝動を喚起させる麻薬のような"おもてなし"。やっぱ客商売ってのはこうじゃなきゃいかんだろう。


 三越を出て大通り沿いに歩くと、今度は日本人御用達の巨大な本屋が。とにかく品揃えがすごかった。文庫本や新書、雑誌はもちろん、ジャンプやサンデーやマガジン、スピリッツ、少女漫画、習字道具、受験生用はちまき、等々・・・・ 参りました。ホントに日本と変わりないわ、こりゃ。ただ、値段がどれも大体日本価格の3倍くらい。だからジャンプも600円くらい。リアルタイムで飛行機で運ばれてくるから、どうしてもこういう値段になっちゃうわけですな。それでも積まれた雑誌の山は、どんどん売れてきちんとなくなってしまうとか。背に腹は代えられん、ついつい買わずにはおれんっちゅうことですな。う〜ん、わかります、その気持ち。


  

 ハノーファーでは手に入りにくい日本の製品が豊富に揃っている日本食料品店などで大買物ツアー(お目当てはズバリ、ジャワカレー中辛!)を繰り広げた後、いつの間にか日が落ちて、辺りは夜の闇に包まれた。そして、今晩のメインイベント、加藤博士にセッティングしていただいた「ナイト・サーカス」の時間とあいなったのであ〜る。
 左の写真中、左に写っているのがライン川河畔にこうこうと輝くタワー。そしてその近くにきらびやかに存在感を示している建物が「Apollo(アポロ)」。ここで、ヨーロッパ各地から集まった大道芸のスター達が、笑いと感動のショーを見せてくれる。
 アポロの中にはいると、我々4人はテーブルに案内され、まず最初にワインサービスを受けた。ショーが始まったら撮影は控えないといけないので、始まる前の雰囲気を撮りまくり。天井のミラーボールがなんだか期待感をかきたてる。
 で、実際にショーが始まってみると、面白い、面白い。これはもう1回見たい!って程の面白さだった。ギャグを織り交ぜながらの神業の数々。夜の11時すぎまで、ドップリ堪能させていただきました。これまでのひろちゃん&よしこの旅というと、「明るいうちに倒れそうになるほど遊びまわって、夕食をとったらホテルに直行、バタンキューで体力回復に専念」というパターンが多かったが、今回のように、夜になってもこんな大人のエンターテイメントを楽しむってのも、悪くないもんですな〜。



  

 デュッセルドルフ3日目。この日はやや天気がすぐれなかったが、前夜に楽しんだライン川のほとりを朝から散歩。そこには、夜に見たのとは全然違う風景がひろがっていた。ライン川にかかる大きな吊り橋(右の写真)。「あれをわたると高級住宅街が広がってる。あそこには本物の金持ちが住んでんだよ。」と加藤博士が教えてくれた。「待ってろよ、お前ら。いつかは俺もそこに・・・・」という野望を胸に抱き、鋭い眼光で対岸を見つめる男性軍。(この物語はフィクションです。でも、対岸が高級住宅地なのはホントです。)
 ドイツ、いやヨーロッパ屈指の商業都市として発展したデュッセルドルフ。そこかしこに余裕のある雰囲気を醸し出している街である。


 ケーニヒス・アレー(Königsallee)。直訳すると「王様の並木道」。デュッセルドルフの中心部である。この写真は、通りの中央分離帯のように存在する池にかかる橋の真ん中に立って、南に伸びるケーニヒス・アレーを撮ったもの。写真左側が高級専門店街。右側がビジネスオフィス街。かのナポレオンは、この街を「小パリ」と呼んだとか。現在はファッションの情報発信地ともなっているこのデュッセルドルフ、確かにそんなお洒落なムードを持っている。
 ちなみに土曜日の昼食は、この通りからちょっと東側へ入ったところにあるレストラン「Victrian」でランチメニューを食べた。加藤博士に連れられるままに入口から入ると、なんだか店の雰囲気が違う。土曜日の昼間なのに、客はみなネクタイ着用。あれ? 僕は・・・・ めちゃラフなんですけど。しかも両手には日本食料品がいっぱいに詰め込まれたビニール袋2つ。うぐっ。ホントに店に入っていいのか? しかし、そこはさすがに一流店。フロアマネージャーらしき女性が急ぎ足で向かってきたときには「やはりダメか」と思ったが、「さあこちらへどうぞ」と優しくエスコートしてくれた時には感激してしまった。ただ、さすがに「両手のビニール袋はこちらにお願いします」と、フロア持ち込みは出来なかったが。このVictrian、MICHELIN(ミシュラン)という世界的に有名なホテル&レストランの格付け本で1つ星の評価を受けている。最高ランクは3つ星なんだが、1つ星の評価を受けるだけでも大変なことらしい。ちなみにハノーファーに1つ星以上のレストランはない。加藤博士曰く、もしここがフランスなら、こういう高級レストランにノーネクタイで入ることは不可能なのだが、ドイツでは襟付きシャツを着ていれば大体受け入れて貰えるとのこと。よかった、この日はTシャツじゃなくて。
 で、席に着くとメニューが配られた。まず、よしこへ。それから男性軍には年齢順に。おお、レディーファーストが徹底されている。ここまではまだ僕の想像可能領域だ。しかし! よしこのメニューには、値段が書いてない!! つまりは、ヨーロッパの上流社会では、ご婦人は値段を気にせず注文出来るってか?!
 今日のメインディッシュは「ラム(子羊)のステーキ」。これがまた、ホントにこれがラム肉か?!と疑ってしまう程の香りと味。焼き加減も最高。認めます。美味しかったです。あの量と質で約DM60(4000円)。お勧めの高級ランチでした。

  

 帰る間際の我々4人は、街の中心からSバーン(市電)に乗って30分ほど離れているベンラート城(Schloss Benrath)を訪れた。天気が良くないのでわかりにくいが、この城は近くで見ると鮮やかなピンク色をした建物で見応えがある(中央の写真)。その庭園がまた見事で、西洋の優雅な文化に心を引かれる我々。そして、しかしながら「どのような時にも日本の武士の魂を忘れてはならぬ」と、気合いを入れ直し、姿勢を正して写真に収まる私ことひろQと宗倉助教授。気分はまるで岩倉具視である(日本史の教科書を見よう)。