− 1998年11月の旅 −

ATPツアー観戦 by ひろゆき


 さあ、今月は旅は旅でも"ATPツアー"。去る11月24〜29日、なんと我がハノーファーにATPツアーがやってきたのです。これは見に行かずにおられようかっ! ひろちゃん&よしこは、なんとかチケットを2人分ゲットして、喜び勇んで観戦に出かけたのでした。

 ところで、みなさん、ATPツアーって、ごぞんじですか? 自動車レースのF1世界グランプリは有名ですが、これはそのテニス版みたいなもんです。プロのテニスプレーヤーは、一人一人にきっちり順位がついています。例えば今年の男子では、世界1位のピート・サンプラスから、世界ン百位(ン千位かも?)の無名選手まで。で、どうやってその順位を決めているかというと、ATPという世界的プロテニス組織が主催する大会に出場して、勝ったり負けたりしながら少しずつポイントを獲得していき、その時点から過去1年間をさかのぼって、どれくらいのポイントを貯めたかで優劣をつけるのです。だから毎週ランキングは変動します。そして、それらの大会は世界各国で開かれるので、出来るだけ多くのポイントを稼ぐために、プロのテニス選手は世界中をグルグル旅することになるわけです。そんな事情から、これらの大会全体はATPツアーと呼ばれています。

 ATPツアーに含まれる各大会は、これまた厳しく格付けがなされていて、その格によって、賞金総額も獲得ポイントも全然違ってきます。上からまずグランドスラム。開催順に、全豪、全仏、全英、全米の4大大会です。その次がメルセデススーパー9と呼ばれる、世界中の9都市で行われる大会。ドイツではハンブルクとシュトゥットガルトが含まれています。その下に、チャンピオンシップシリーズ。東京で行われるジャパン・オープンは、「グランドスラム大会のすぐ下の位置づけであ〜る」とマスコミに報道されますが、獲得できるポイントはというと、本当は、8段階もあるチャンピオンシップシリーズの中の7番目の格付けなんですね。その下にワールドシリーズ。で、一番下がチャレンジャー。このように、完全にピラミッド構造をなしていて、誰もがより上の大会で試合をし、勝利することを目指しているのです。格上の大会に出場するためには一定以上のポイントを持っていなければならず、持っていない人は、チャレンジャーやワールドシリーズなどの格下の大会でたくさんポイントを稼いでからじゃないと参加できません。現在の日本の男子のトッププロ達が、だいたい世界ランキング200〜300位くらい。グランドスラムの中でも最も格が上と見られている(つまりは世界一の大会である)全英オープンでベスト8に進出するという快挙を成し遂げた松岡修三(くどいけどまた出します。宝物なので。)が、いかに偉大な選手であったか、想像に難くないでしょう。

 で、1998年のツアー最終戦として今回ハノーファーで行われるのが、ワールドチャンピオンシップ。この大会は、その年の最後の1大会を残した時点での世界ランク8位までの選手だけが出場することができ、その年の最終的な世界1位を決めようという大会なのです。賞金総額も獲得ポイントもグランドスラム並。よって、この試合に出ると出ないとでは、その年のランキングに大きく影響するので、このワールドチャンピオンシップに出ようと、各トップ選手は前週までになんとかランキング8位以内に入っておこうとしのぎを削ります。そしてこの大会に出られる選手は、それだけですごく光栄なことなのです。もちろん見る側としても、世界でも本当にトップクラスの選手だけが集まるので、どの試合も見応え十分! このハノーファーでそれが行われたことは、テニスフリークのひろちゃん&よしこにとっては超ラッキーな出来事でありました。

 我々は"ベスト4あたりが一番面白くなるはず!"とよんで、土曜日にある準決勝のチケットを買いました。一番安い席で一人DM70,-(約5600円)。でも世界のトップ4選手の試合が2つも見られるんだから、まずは納得。今大会はトップ8中の、世界3位パトリック・ラフター、8位リヒャルド・クライチェクが怪我で不出場、世界2位マルセオ・リオス、4位アンドレ・アガシが怪我で途中棄権したので、繰り上がりで9位ティム・ヘンマンが準決勝に進出してきました。第1試合は、カルロス・モヤ(スペイン/世界5位)対ティム・ヘンマン(イギリス/世界9位)。第2試合は、ピート・サンプラス(アメリカ/世界1位)対アレックス・コレチャ(スペイン/世界6位)。お目当ては当然、世界一の男、ピート・サンプラス。

 今回のワールドチャンピオンシップは、2000年に開かれる万国博覧会(EXPO 2000 HANNOVER)の会場でもあるEXPO 2000 Halle。自宅からは市内電車で25分といったところ。ここでは、有名なメッセ(国際見本市)も開催される。中には13000人収容の特設スタジアムが。
 実はこの日、市内を武装した警察官が大勢巡回しており、朝から騒々しかった。特に我が家の周りは厳戒態勢。で、その原因だったのが、赤いマルで囲まれた人。この人が現れると、テレビカメラが一斉に集まってきて、試合が一時中断するトラブルも。第1試合を戦っていたモヤ(右)とヘンマン(左)も迷惑そうな表情を見せた。試合はモヤの勝ち。
 いよいよ第2試合、選手入場。大きなドイツ人観衆達の間をかいくぐり、なんとか世界一の男の後ろ姿をとらえることに成功したよしこのカメラマン魂がにじみ出る一枚。
 試合前、対戦相手のコレチャ(手前)と共にウォームアップを行う世界一の男。休憩時間中なので空席が目立つが、会場全体の雰囲気がわかるだろうか?
 初めて目の当たりにする世界一の男の今日のデキを鋭い眼光で見定めるひろQ28歳。違いのわかる男(ふ、ふるい・・・・)。
 いよいよゲーム開始。サンプラス(左)のサーブ。この日の最高速度は214km/hだった。もちろん我々の席からでは球筋が見えるわけもなく・・・ とにかくサンプラスの強さは、「世界最強のセカンドサーブを持っていること(by修三)」。他の選手のセカンドは安全重視なのに、サンプラスだけはエースを狙いにくる。セカンドの球速も飛び抜けて速く、170km/h台。他の選手は150km/h台。
 素晴らしいスーパーショットの応酬! 何度もサンプラスがマッチポイントを奪いながら、ついにコレチャがフルセットの末、世界一の男を撃破する! 会場は感動的な幕切れに大興奮!! 歓喜のポーズを見せるコレチャ(右)。サンプラスを応援していた僕も、最後はコレチャファンに。
 熱戦が終わり、余韻に浸りながら会場を後にする。午後6時半。あたりはもう真っ暗だ。ものすごく長い"動く歩道"がついたスカイウォーカーで電車通りへ。

 というわけで、生まれて初めてプロテニスの試合を見てしまった僕たちは大感動。特に第2試合は、テレビでも見たことがないような、ものすごい試合だった。翌日の決勝は、モヤとコレチャのスペイン対決。我々はテレビ観戦したが、モヤがいきなり2セットをリード。「ふむう、コレチャは昨日で力を使い果たしたか・・・」と思っていたが、そこから準決勝で見せたような驚異の粘りで3セットを奪い返し、大逆転優勝。この結果、1998年の最終的な世界ランキングは、2位のリオスが棄権したので、1位はそのままサンプラス。そして3位に堂々とコレチャがランクアップした。モヤが5位、ヘンマンが7位まで上昇。ピート・サンプラスは、6年連続最終世界ランク1位という前人未踏の大記録をうち立てたのでありました。

 これで、ひろちゃん&よしこのテニス熱もいっそうヒートアップするというもの。いや〜、良かもんば見してもらいましたばい。

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