1997.06.22

1997年 都市対抗野球神奈川予選

第一代表決定戦

 

 

日産自動車 ― 三菱川崎(三菱自動車川崎→三菱ふそう川崎)

 

 

 

近鉄-ロッテの10.19決戦を筆頭に数々のドラマが起き“劇場”とも呼ばれた川崎球場。社会人でも強豪揃いの神奈川予選はこの球場で行われ毎年数々のドラマがありました。その中でも「ここまでの試合は二度と無いだろう」と言われた1997年の試合をご紹介します。

時は金属バットの時代。「この球場ではセーフティーリードというものはない」と言われた川崎球場での都市対抗野球神奈川予選をそのまま具体化にしたような試合。両チーム合わせて40得点。本塁打も18本。打って打って打ち合った。

もしこうした記録を狙って大量得点試合を行おうとすると、いくら狭い川崎球場で、また、たとえ金属バットといえども、コールド制のある社会時野球では一方のチームがコールドになる前に大量に得点を取るか、両チーム双方が点差をコールドにならない範囲に保ち合って9回まで点数を重ね合うしかない。この試合は後者でした。

ちなみに都市対抗本戦での一試合得点記録(両チーム合計)は30点です。

 

 

いずれにしても、この日、「野球王国:神奈川の雄」の座をかけて相対したのは日産自動車(先攻)と三菱川崎(後攻、後の三菱ふそう)です。

 

 

(以下、選手敬称略/記録は日産のスコアブックによります)

 

 

 

 

1997622日(日) 川崎球場

試合時間 1455 〜 1910 4時間15

 

 

 

 

 

1回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

1番 大平(二) 投手:徳丸

四球 ノーアウト1

2番 青柳(左) 投手:徳丸

二ゴ 1アウト2

3番 渡辺(右)  投手:徳丸

四安 1アウト1・3

4番 上島(D) 投手:門西

 盗塁成功 1アウト23

四球 1アウト満塁

5番 小山(一)

右安 2 

日産2-0三菱

1アウト1・2塁

6番 黒須(捕)

三振 2アウト1・2

7番 伊藤

四球 2アウト満塁

8番 鷹野

三振 3アウトチェンジ

試合開始。三菱川崎の先発は徳丸。

 

日産は先頭の大平が四球で出塁、続く青柳の二ゴロの間に二塁に進む。

3 渡辺が内野安打で一死一・三塁。

4番 上島が四球で1死満塁となり、5番 小山の右前安打で日産は幸先良く二点を先制。

 

日産2-0三菱川崎

 

 

1回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

1番 柿田(右)

右本 +1

日産21三菱川崎 

0アウト走者無し

2番 斎藤(遊)

右飛 1アウト走者無し 

3番 西郷(一)

遊ゴ 2アウト走者無し

4番 山田(D

四球 2アウト1 

5番 東元(二)

右本 +2

日産23三菱川崎 

2アウト走者なし

6番 梶山(右)

二ゴ 3アウトチェンジ

日産の先発は川越。

 

三菱川崎がすかさず反撃。

柿田が先頭打者HR

2死から走者を一人おいて5番 東元の2ランHRで逆転。

 

日産2-3三菱川崎

 

 

2回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

9番 桝本(三)

三ゴ 1アウト走者無し 

1番 大平(二)

右安 1アウト1 

2番 青柳(左)

遊ゴ ダブルプレー 3アウトチェンジ

二回の日産の攻撃は1死から大平が安打で出塁するもダブルプレーにより三人で終了。

 

日産2-3三菱川崎

 

 

2回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

 7番 高根沢(三)

右本 +1

  日産2-4三菱川崎 

0アウト走者無し

8番 伊藤(捕)

右飛 1アウト走者無し 

9番 鈴木(中)

投ゴ 2アウト走者無し 

1番 柿田(左)

左安 2アウト走者1 

2番 斉藤(遊)

中安 2アウト13 

3番 西郷(一)

 一塁走者盗塁成功 2アウト23

 四球 2アウト満塁 

4番 山田(D

左本(満塁) +4

日産2-8三菱川崎 

2アウト走者無し

【日産投手交代】川越→井上 

5番 東元(二)

 三安 2アウト走者1

6番 梶山(右)

 三ゴ 3アウトチェンジ

三菱川崎が打者一巡の猛攻。

 

先頭の7番 高根沢がソロHR

2死の後、連続安打と四球で満塁とし、4番 山田がグランドスラム!

翌年の橋戸賞投手 川越を2回の途中で引きづり下ろし、2回終了時点で6点をリード。

 

日産2-8三菱川崎

 

 

3回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

3番 渡辺(右)

 四球 0アウト一塁 

4番 上島(D

右本 +2

日産4-8三菱川崎

0アウト走者無し

 5番 小山(三)

中本 +1

日産5-8三菱川崎

0アウト走者無し

 6番 黒須(捕)

投ゴ 1アウト走者無し

 

【三菱投手交代】徳丸 → 竹下

7番 伊藤(遊)

四球 1アウト1 

8番 鷹野(中)

三安 1アウト12 

9番 桝本(三)

三振 2アウト12 

1番 大平(二)

右中本 +3

日産8-8三菱川崎

2アウト走者無し

 

2番 青柳(左)

 遊飛 3アウトチェンジ

日産も、3番 渡辺の四球を足がかりとして、猛反撃。

4番上島(2点)と5番 小山(ソロ)のアベック弾で3点を返す。

 

更に1死後、四球と安打で走者を貯めて1番大平が3点弾 。この回、3本塁打で6得点。

前の回の三菱川崎と同様に打者一巡。

スコアをタイに戻す。

 

日産8-8三菱川崎

 

 

3回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

【日産守備交代】桝本 → 雲宝

【日産守備交代】小山 → 石田

7番 高根沢(三)

左本 二打席連続HR +1

 日産8-9三菱川崎 

0アウト走者無し

8番 伊藤(捕)

中安 0アウト1 

9番 鈴木(中)

一ゴ(二併殺) 1アウト1 

1番 柿田(左)

投手WP 1アウト2

左本 +2

日産8-11三菱川崎 

1アウト走者無し

2番 斎藤(遊)

 二安 1アウト1 

3番 西郷(三)

 一塁走者盗塁失敗 2アウト走者無し

 死球 2アウト1

 【日産投手交代】井上 → 小倉

4番 山田(D)

 左本 +2

日産8-13三菱川崎

2アウト走者無し

5番 東元(二)

 三振 3アウトチェンジ

三菱川崎が日産の猛攻に呼応するように再び猛攻。この回も打線爆発の流れが止まらない。

 

先頭の高根沢が2打席連続HR(ソロ)で1点をリード。

その後、1死をはさんで、1番柿田が2ランHRでリードを3点に拡げる。

 

その後2アウト走者無しとなるが、3番 西郷が死球で出塁の後、4番山田が2ランHR2点。

三菱川崎、3本のHRで再び5点をリード。

 

日産8-13三菱川崎

 

 

4回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

3番 渡辺(右)

 死球 0アウト1 

4番 上島(D)

 走者盗塁、守備失策 

0アウト3

 三振 1アウト2 

【三菱川崎投手交代】竹下 → 佐々木

5番 石田(三)

 四球 1アウト13 

6番 黒須(捕)

 四球 1アウト満塁 

【三菱川崎投手交代】佐々木 → 中野

7番 伊藤(遊)

右安 +1

  日産9-13三菱川崎

1アウト満塁

8番 鷹野(中)

左安 +1

  日産10-13三菱川崎 

1アウト満塁

9番 雲宝(三)

遊失 +2

日産12-13三菱川崎

1アウト13

【日産代走】雲宝 → 塩田(三)

 1番 大平(二)

右本 二打席連続 +3

日産15-13三菱川崎

1アウト走者無し 

2番 青柳(左)

四球 1アウト1 

【三菱川崎投手交代】中野 → 桜井

3番 渡辺(右)

一ゴ ダブルプレー 3アウトチェンジ 

日産打線も止まらない。

一死をはさんでの3四死球により満塁とし、伊藤と鷹野が連続タイムリー。

遊撃エラーの間に2点を追加して、続く1番大平が3ランHR2打席連続)。

この回、打者10人で一挙7点をあげて逆転に成功する。

 

両チームの得点合計はすでに28点。。。

 

日産15-13三菱川崎

 

 

4回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

【日産投手交代】小倉 → 宮田

6番 梶山(右)

中飛 1アウト走者無し

 

7番 高根沢(三)

左中本 

3打席連続 +1

日産15-14三菱川崎

1アウト走者無し 

8番 伊藤(捕手)

右飛 2アウト走者無し 

9番 鈴木(中)

死球 2アウト1 

1番 柿田(左)

中飛 3アウトチェンジ

三菱川崎、7番 高根沢が3打席連続HRとなるソロアーチで1点を返す。1点差に。

 

日産15-14三菱川崎

 

 

5回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

4番 上島(D

左中本 +1

日産16-14三菱川崎

0アウト走者無し

5番 石田(三)

三振(空振り) 1アウト走者無し

6番 黒須(捕)

遊ゴ 2アウト走者無し

7番 伊藤(遊)

左中二 2アウト2 

8番 鷹野(中)

三振 3アウトチェンジ

先頭の4番 上島が今日2本目となるソロHR

日産は再びリードを2点とする。

9回制試合のまだ半分が終了したところだが、両チーム得点合計はいよいよ30点に到達。

 

日産16-14三菱川崎

 

 

5回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

2番 斉藤(遊)

二飛 1アウト走者無し 

3番 西郷(三)

左安 1アウト1 

4番 山田(D

三振 2アウト1

5番 東元(二)

四球 2アウト12

6番 梶山(右)

四球 2アウト満塁

7番 鈴木(左)

二飛 3アウトチェンジ

三菱川崎は安打と2四球で満塁の得点機をつくるが、無得点。

 

日産16-14三菱川崎

 

 

6回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

9番 塩田(三)

二ゴ 1アウト走者無し 

1番 大平(二)

遊ゴ 2アウト走者無し 

2番 青柳(左)

左飛 3アウトチェンジ

三者凡退で日産も無得点。

 

日産16-14三菱川崎

 

 

6回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

8番 伊藤(捕)

一ゴ 1アウト走者無し

9番 鈴木(中)

左安 1アウト1

1番 柿田(左)

遊安 1アウト12

2番 斉藤(遊)

二ゴ 1塁走者封殺 2アウト13

3番 西郷(三)

死球 2アウト満塁

4番 山田(D

左本(満塁) +4

日産16-18三菱川崎

2アウト走者無し

5番 東元(二)

左飛 3アウトチェンジ

三菱川崎の反撃が始まる。

2安打と四球で2死満塁となったところで、4番 山田がこの日3本目のアーチ、彼一人で2本目のグランドスラム。

これは三菱川崎にとって今日10本目のHRで、山田はこれで10打点目。

三菱川崎が2点のリードを奪って試合は終盤へ。

 

日産16-18三菱川崎

 

 

 

7回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

3番 渡辺(右)

 中安 0アウト1

【三菱川崎投手交代】桜井 → 安田

4番 上島(D

 遊ゴ 2塁封殺 1アウト1塁 

5番 石田(一)

 三振(空振り) 2アウト1

6番 黒須(捕)

 三振(空振り) 3アウトチェンジ

日産は先頭の3番 渡辺が安打で出塁するも後続が倒れて無得点。

 

日産16-18三菱川崎

 

 

 

 

7回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

6番 梶山(右)

 右飛 1アウト走者なし

7番 高根沢(三)

 左本 +1

日産16-19三菱川崎

1アウト走者無し

【日産投手交代】 宮田 → 久保

8番 伊藤(捕)

右安 1アウト1

9番 鈴木(左)

三振(空振り) 2アウト1

1番 柿田(左)

右飛 3アウトチェンジ

三菱川崎、7番 高根沢がこの日4本目となるアーチで1点追加、リードを3点に拡げる。

両チーム得点合計は35点に。

 

日産は終盤の逆転を期して投手交代。

かつてのエースだが、この頃には現役を退きつつあるコーチ兼任のベテラン久保(後、監督)をいよいよ投入、逆転勝利に向けて大詰めのカードを切る。

久保はその期待値に応えて後続を抑える。

 

日産16-19三菱川崎

 

 

 

8回表 日産自動車の攻撃

 

 

 

7番 伊藤(遊)

三振(空振り) 1アウト走者無し

8番 鷹野(中)

左本 +1

日産17-19三菱川崎

1アウト走者無し

9番 塩田 → 岡本(代)

一飛 2アウト走者無し

1番 大平(二)

三振(空振り) 3アウトチェンジ

追いつきたい日産は8番 鷹野のソロHR1点を返す。

 

日産17-19三菱川崎

 

 

 

8回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

2番 斉藤(遊)

四球 0アウト1

3番 西郷(一)

捕ギ 1アウト2

4番 山田(D

三振(空振り) 2アウト2

5番 東元(二)

右飛 3アウトチェンジ

三菱川崎は、先頭の斉藤が四球で出塁。

少しでも点差を拡げておくべく3番 西郷にバントで送らせて、今日3ホーマーの4番 山田につなぐが三振。

5番 東元も倒れて無得点。

三菱川崎、2点のリードで9回に。

 

日産17-19三菱川崎

 

 

 

9回表 日産の攻撃

 

 

 

2番 青柳(左)

左本 +1

日産18-19三菱川崎

0アウト走者無し

3番 渡辺(右)

 四球 0アウト1

4番 上島(D

 三振(空振り) 1アウト1

5番 石田(一) → 菊池(代)

 左中二 1アウト23

【日産選手交代】 菊池 → 村上(代走)

6番 黒須(捕)

 左中本 +3

日産21-19三菱川崎

1アウト走者無し

7番 伊藤(遊)

 遊ゴ 2アウト走者無し

8番 鷹野(中)

 中飛 3アウトチェンジ

いよいよ最終回。

“しぶとさ”が売りの日産は先頭の2番 青柳がソロHR1点を返して1点差に詰め寄る。

続く3番 渡辺は四球を選ぶ。同点ランナーが1塁で、今日、HR2本の4番 上島。。。三振。

石田に代わった代打 菊池が左中間に二塁打を放って1アウト23塁。一打逆転のチャンスを作る。

 

ここで6番 黒須が左中間に3ランHR。日産逆転。

今度は日産が2点リードして9回裏へ。

 

両チーム得点合計はこれで40点。

 

日産21-19三菱川崎

 

 

9回裏 三菱川崎の攻撃

 

 

 

7番 高根沢(三)

 三振 1アウト走者無し

8番 伊藤(捕)

 二ゴ 2アウト走者無し

9番 鈴木(中) → 佐藤(代)

 一ゴ 3アウトチェンジ

 

追う立場になった三菱川崎。

 

先頭打者は今日4HRの高根沢。

日産の久保が三振で抑える。

 

久保は残る二人も内野ゴロに打ち取って三菱川崎の再逆転ならず。試合終了。

 

 

日産21-19三菱川崎

 

 

 

結果、日産が神奈川第一代表となり、本戦も勢いそのままに準決勝まで勝ち上がっていく。

三菱川崎は翌日の敗者復活戦でも18得点と東芝を圧倒し、第二代表として本戦出場する。

 

その後、日産は“しぶとい野球”で翌1998年の都市対抗で2度目の優勝。三菱川崎(→三菱ふそう)もこの試合で活躍した高根沢・西郷を軸とした破壊力ある打線を軸に2000年と2003年に都市対抗で優勝する。

 

そして、この日から8年後の2005年に“神奈川大決戦”と呼ばれた都市対抗決勝:日産―三菱ふそうの日本一をかけた闘いが繰り広げられることになる。

 

<試合データ>

日産 206 | 710 | 014 =21

三菱 355 | 104 | 100 =19

バッテリー

 日産:川越、井上、小倉、宮田、久保 – 黒須

 三菱:徳丸、竹下、佐々木、中野、桜井、安田

- 伊藤

勝利投手

 日産:久保

本塁打*両チーム計18

 日産:大平2、上島2、青柳、小山、鷹野、黒須

 三菱:高根沢4、山田3、柿田2、東元

安打数

 日産:17 三菱:19

与四死球

 日産:9 三菱:10

盗塁

 日産:2 三菱:1

失策

 日産:0 三菱:2

残塁

 日産:5 三菱:8