ウパニシャッドは、サンスクリットで書かれた哲学書の一群です。リグ・ヴェーダをはじめとするヴェーダ文献の一部をなし、「ヴェーダーンタ(ヴェーダの最後、ヴェーダの極致)」とも呼ばれます。ウパニシャッドは、語義から、「近坐の書」と訳されます。弟子が師の傍らに坐り、師から「奥義」を伝授される、そこから、宇宙の真理を語った聖典の総称にもなったといわれています。
 リグ・ヴェーダ等の祭祀を扱う部分を「カルマ・カーンダ(祭事部)」と呼ぶのに比して、ブラフマンやアートマンの知識を重視したウパニシャッドは、「ジュニャーナ(ギャーナ)・カーンダ(知識部)」と呼ばれます。

主要なウパニシャッド14種の成立年代を、中村元博士は以下のように分類されています。

初期(ゴータマ・ブッダ以前) 第一期 第二期 第三期
・ブリハッドアーラニヤカ
・チャンドーギヤ
・アイタレーヤ
・カウシータキ
・タイッティリーヤ
・ケーナ
イーシャー
中期(ゴータマ・ブッダ以後) ・カタ(カータカ) ・ムンダカ ・プラシナ
・シヴェーターシヴァタラ
後期 ・マイトリ(マイトラーヤナ) ・マーンドゥーキヤ
・マハーナーラーヤナ

中村元選集第9巻「ウパニシャッドの思想」 春秋社、1990年 

 ここでは、「イーシャー・ウパニシャッド」を、シャンカラの註釈とともにサンスクリット原典から訳出してみたいと思います。(未熟者ゆえ、多くの誤訳があるかもしれません。メール等で、御指摘や御教示を頂ければ幸甚であります。)

 「イーシャー・ウパニシャッド」の名称は、本文冒頭の語句からとられたものであり、「イーシャーヴァースヤ・ウパニシャッド」とも呼ばれ、18偈からなる短編です。インドにおいて「ウパニシャッド全集」が出版される場合、この「イーシャー・ウパニシャッド」が冒頭を飾ります。

 シャンカラは、「ブリハッドアーラニヤカ・ウパニシャッド」(5.1.1)の「平和(平安)の歌」を開巻劈頭に掲げ、「イーシャー・ウパニシャッド註解」の序章を開始します。

 

*当ホームページでは、フレーム上段に「イーシャー・ウパニシャッド」本文を、下段に「シャンカラ註」を配しております。