SWEET SPIRITS
乙姫静香


 真岡子規17歳。初の「記憶ぶっ飛び酔っ払い」記念。


  「あーはっはっはっはっはっは!!!」
 俺は大爆笑でドアを叩くと、尚也が開けるのも待たずにドアノブをガチャガチャと回した。
「あれぇ?開かないよぉ?」
「だって、鍵開けさせてくれないからでしょ。はい、ちょっと待って子規くん」
 尚也が言って、フロントでもらった鍵を入れる。あれ?こいつ誰だっけ?あ、そうそう今日会ったばかりの人。んでもって、俺にプロポーズとかしちゃった人。ぷぷぷー!!タレ目野郎!!
「はい、どうぞ」
 尚也の言葉に軽いステップで部屋に入る。わー、これがラブホってやつですか。思ったより普通だぞ。何が普通って、ベッド丸くないし、鏡もないぞ。なーんちゃって、それっていつのラブホ?しゃーっしゃっしゃっしゃ。笑いが止まんない。
 そうです。ご察しの通り、俺、酔っぱらってまーす!!
「ここでこれから、あーんなことや、こーんなことをしてしまおうっていうのね、タレ目兄さん!!」
「タレ目兄さん・・・ねぇ」
 尚也が苦笑している。なんだよこいつ。俺と同じくらい飲んでて、全然酔っぱらってない。なんだよー!
「兄さん飲みが足りないんじゃないのぉ?」
「いや、はっきりいうけど、子規くんより飲んでると思うよ。回るか回らないかの違いだけで」
「えええ!?俺、回ってるのぉ?くるくるくるくるぅ〜!!」
 俺はそのまま自分がくるくると回ってベッドに倒れ込む。シーツの感触が気持ちいい。うわ〜、こんなに頭ん中がぐるぐるしてるの初めてだ。変な感じだけど、気持ちいい〜。
「はい。飲む?」
 ベッドに腰を下ろし、尚也が目の前に水の入ったコップを差し出す。俺はむっくりと起き上がり、そのコップの水を一気に飲み干した。
「おいしー」
 ぷはぁっと、息をつく。でもさぁ、そんなに強そうなもん飲んだ記憶ないんだよね。最初にビール飲んでぇ、なんかジュースみたいなカクテルが美味しくて、そればっか何杯も飲んじゃった。何つったっけあれ・・・えーと。セックスなんちゃら・・・。
「セックス・オン・・・・なんだっけ?」
 意味を考えたら「痛そー」だったんだよな。ほら、えーと。
「セックス・オン・ザ・ビーチのこと?」
 半開きの目で首を傾げる俺に、尚也の一言。そうそう!それ!「砂浜でえっち」!!
「いや〜ん。兄さん、えっちぃ」
 むふふと笑いながら人差し指で尚也の胸をつつく。尚也はそんな俺を見ながら、声を殺して爆笑していた。なんだよう。何がおかしいんだよう。
「気持ち悪くない?大丈夫?」
「気持ちいい!!全然問題無し!!あははははは!!!」
「ならいいけど」
 ぜっこーちょーーー!!あー本当に気持ちが良い。ふわふわ浮いてるみたいだよ。こんなに気持ち良くなるから老いも若きも酒を飲むのだな。うんうん。
「で、本当にするの?」
「ほえ?」
 するって・・・?
「なにを?」
「あーんなことや、こーんなこと」
 含み笑いで尚也が言う。あ、そうだ、そうだよ。するんだった。そうそう。するなら脱がなくちゃ。うんうん。
 俺は尚也に借りてた制服隠しのジャケットを脱ぐと、そのままシャツのボタンを外す。妙に機敏な俺の動き。呆気に取られた尚也が、瞬間、弾けたように笑い出した。
「あははははっは!!」
 ベッドをバンバンを叩いて尚也が大爆笑。なに笑ってんのさ、笑ってる場合じゃないっしょ。あれ?なんか上手くボタンが外れないんですけど・・・。
「いいよ・・・あとはやってあげる」
 ボタンにかかる俺の手にそえられる尚也の手。顔を上げると、目の前に尚也がいた。
「え・・・・」
 前触れもなく触れる口唇。軽く、触れて離れる。ボタンにかけられた俺の手がそっとどかされ、尚也の指がかわりにそれをはずしていく。
 目の前にはシャツの襟から見える尚也の鎖骨。けっこう細そうだよな、こいつ。
 前がはだけられ、肩からシャツが落とされる。そのままベッドに横たえられ、視界にあるのは天井のライトを背にした尚也の顔。
「ねぇ、電気・・・消さない?」
 眩しいな。飲み屋が暗かったせいか、目に痛いや。チカチカチカチカ。
「この位ならいい?」
 尚也が手を伸ばし、ベッドのライトを少しばかりトーンダウン。薄暗い程度の明るさに、俺は肯いた。
 尚也がベッドに片膝をついて、自分のシャツのボタンを片手で外す。なんかそういう仕種が妙に決まるなぁ、この兄さん。なんでだろう。
 と。
「え!?」
「何?」
 思わず声を上げて抗議してしまった。それは反則でしょ。何って、シャツを脱いだその身体。
「何?どうしたの?」
 ベッドに寝転がったまま、俺は目を丸くして尚也の上半身を見つめる。だってこいつ、着やせするタイプじゃん。無駄の無い身体。適度な肉と適度な筋肉。お腹なんてきゅっとしまっちゃってさ。いや、別に俺の腹がたるんでるって訳じゃないけど。それにしても、いい身体ぁ〜。ほれぼれ。二の腕だって、綺麗に筋肉に覆われてるよ。
「お兄さん。ジムとか通っちゃってるの?」
「ジム?プールに泳ぎには行くけど、どうして?」
「なんかさぁ、えっちな身体じゃないの?お兄さんってば」
「えっちな身体?」
 俺の放った単語に尚也が首を傾げる。尚也は上半身裸になると、俺の膝を割って俺に近づいた。
「俺の目には、子規くんの方がよっぽどえっちな身体に見えるけど・・・?」
 俺の身体の脇に両手をついて、尚也が俺を見下ろす。まだまだ成長しきってない薄い身体。外されたベルトの下の腹筋も、尚也に比べると未熟そのもの。
「俺のどこがえっちなんだよう!?」
「そうだなぁ・・・たとえば・・・」
 尚也は微笑み、それから俺の身体を上から下まで眺める。視線が一巡して帰ってくると、俺の首筋に顔をうずめて呟いた。
「この、綺麗な影をつくる鎖骨とか・・・」
 そのまま尚也は舌で鎖骨のカタチをなぞるように、俺の首から肩をなぶる。生まれて初めてされる愛撫に、驚きにも似た衝撃が走った。
 ズキリと、腰に響く感覚。
「熟しきってない実のようなこことか・・・」
 胸の上を吸われて起こる、鈍い痛みを伴った甘い疼き。なんだろう・・・・痛いっていうよりも、痒いにも似てる。痒いから、やめないで欲しい。やめないで欲しいけど、舌は更に降下する。
「しなやかな腰のラインとか・・・・」
  脇腹を甘噛み。ちょっとくすぐったいよ。でも、俺が身体をよじると、尚也がまた俺の顔の前に自分の顔を持ってきて、俺の目をまっすぐ正面から見た。
「でも一番惹かれたのは、歪みのないこの瞳と、ピジョンブラッドみたいに赤く艶やかな・・・この口唇かな・・・・」
  瞼にキス。それから、半開きの俺の口唇に尚也の口唇が重ねられる。二度三度、角度を変えてついばむように口唇が触れると、尚也の生温かい舌が俺の歯を割って中に入ってきた。
「ん・・・・っ・・・」
 強引な感じはない。むしろ、美味しい刺激をくれながらも決して満足しきらない量の愛撫。だから、もっと欲しくなる。こんなキス、生まれて初めて。もっと触って欲しいと思うなんて、俺ってもしかしてやばいのかなぁ?
「・・・っ・・・はぁ・・っ・・・」
 口唇を離す時には、離れていく尚也を追うように俺は自分でベッドに肘をついていた。半ば放心状態で尚也を見つめる俺を、尚也は優しく見返す。
「ほらね。そんな顔も可愛い」
 尚也の言葉は、キャラメルみたいに甘くまったりと心に染みてくる。なんだろう。ほんわかあったか〜い気持ちになって、ほどけていくような感覚。ほどけて、また一緒に絡み合いたいような誘惑。
「可愛い・・・かなぁ?俺・・・」
「うん・・・・・なんか・・・こう、愛しげ・・・だよね」
 俺の頭を尚也が撫でて、もう一度重ねられる口唇。尚也の片手が、そっと俺のジッパーを下げた。
「愛しげ・・・?」
「うん。ちゃんとした御両親に、愛されて育ったんだなぁって感じがするよ」
 尚也の手がそれに触れて、ピクリと身体が震える。その一方で、尚也が言った御両親という言葉が胸を突いた。
 父さんの馬鹿。なんで『好きにしろ』なんて言うんだよ。母さんだって、なんで死んじゃったんだよ。もう自分のことは自分でできる年だけど、そういう事とは関係なくって、すっげー淋しい時だってあるし、母さんにだってたくさん話したいこと・・・いまでもあるんだからなっ。
「っ・・・・・んく・・・っ・・・」
 なんかもう、頭の中がぐるぐるしてる。よく分かんなくって、なんか胸だけ痛くって、俺は気付いたらポロポロと泣き出していた。
「ど・・・どうしたの?」
「っ・・・だ・・・だって・・・・父さんが・・・っえ・・・母さんも・・・」
 尚也は突然泣き出した俺を、目を丸くして見下ろしている。だけど涙は止まらずに、後から後から湧いてきた。
「親御さんとケンカでもしたの?」
「ケンカ・・・っていうか・・・・っ・・・俺・・・分かんなくなっちゃって・・・っく・・」
 しゃくりを上げながら説明しようとする俺を、尚也がそっと抱きしめる。
「いいから、ゆっくり話してごらん。ちゃんと聞くから・・・」
 大きな手が頭をゆっくり撫でる。それはとてもあったかくって、ちょっと父さんの手とは違うけど、なぜか安心できた。
「お・・・俺っ・・・父さんのこと・・・すっげー尊敬・・してるし・・・っ・・。大好き・・・だし・・っ」
「うん。そうなんだ」
「うん・・っ。そう・・・なの・・っ・・・」
 なのに、父さんは俺のこと、どうでもいいと思ってるのかな?俺のことなんて・・・どうでも・・・いいって・・・・。
 すっごく悲しくって、俺はしがみつくように尚也の首に手を回す。ぎゅっと抱きしめると、返ってくる温もり。尚也も俺の背に手を回して、抱き返してくれた。
「でも俺・・・一人に・・・なっちゃうのかな・・・?もう、父さんと・・・一緒に・・・いられないのかな・・・っ・・・」
 尚也は俺の額に頬を寄せて、あやすように俺を抱きしめる。
「それって・・・なんかすっごく・・・淋しいよね。一人ぼっちって・・・・やっぱりやだよね?」
 一体何がいいたいのか分からないまま、俺はうわごとのように言い続ける。すると、俺の背を撫でていた尚也が、困ったような笑みを浮かべて一人呟いた。
「まずいな・・・・・・・・・かなり、本気になりそうだ・・・・・」
「なに・・・?」
「いや、こっちの話。・・・いいよ、子規くんが一人になりそうだったら、俺が一緒にいてあげるよ」
 甘い囁きに、優しいキス。俺は涙に濡れた顔を上げて尚也を見た。
「本当に?」
「うん。子規くんさえよければね」
 一緒にいてくれるのかぁ。それってすごいなぁ。うん、すごいよ。実は誰かと一緒にいるってすごくパワーのいることなんだよね。俺、一人っ子だから余計にそのことが分かる。でも、一緒にいてくれるって尚也は言うんだぁ。
「じゃあ、約束」
「はい」
 尚也は俺の目の前に小指を差し出してくる。俺はその指に自分の指を絡めながら、笑顔の絶えない尚也の顔をじーっと見た。
「どうしたの?」
「・・・・キス・・・・して」
 なんだろう。すごくキスしたい。こんなにキスしたかったことなんて、今まで無い。
「え?」
「キス・・・してよ。なんか・・・こう・・・きゅーんってするの。お兄さんとなら・・・できるかなぁって、今・・・思った・・・」
 ふっと、緩んだように尚也は笑って、もう何度目か分からないキスをしてきた。
 いくつもの甘い痺れを伴った囁きのように、口唇から伝わってくる優しい感触。吐息も、のしかかってくる尚也の体重も、全てが心地よくて、なにもかもが優しくて。だから俺は、尚也の頭が視界の端で下へ降りていくのも、ぼんやりと眺めていた。
「あ・・・・っ・・・・」
 下半身に感じる開放感、それから生温かい刺激。脱がされた服を足首に引っかけたまま、尚也が俺の膝の下へ身体を挟み込んだ。口唇が、俺のそれを包み込む。
「・・・・っ・・・」
 頭の芯がジンジンして、少し重たく感じる。それでも下半身から駆け上ってくる快感に、俺はその重たい頭をゆるく振った。
「っ・・・なに・・っ・・・これ・・・?」
 甘い疼き。舌先でいじられて、口唇でこすられる。熱い感覚が来るたびに内腿がピクピクッっとひきつる。こんなこと、されたこと無いってば。すっごく気持ちが良い。このまんま俺、どうなっちゃうんだろう。
「んっ・・・・あ・・・ふっ・・・」
 荒い呼吸に混じる切れ切れの声。なんだこれ、俺、女みてぇ。自分の声だなんて信じられない。
 ぬるぬるした舌の感触に、ひきつる背筋。開きっぱなしの口からは熱い息しか漏れない。あ、やばい・・・もう・・・駄目かも・・・。
「だ・・・。お兄さ・・・っ・・・・。も・・やめ・・・」
  そり返る背中。腰に集中する神経。本当に駄目だって、あ・・それ以上・・・しない・・・で・・・っ。
「んっっ!・・・・あ・・・っ・・・」
 制止も間に合わず、俺はあっさりと果ててしまう。肩で息をしながら、俺はぐったりとベッドに身体を投げ出していた。
「はぁっ・・・・はっ・・・・」
 せわしなく上下する胸。あいつはそんな俺を見下ろしながら、濡れた手で何かを取り出した。
「な・・・に・・・・・・それ?」
「ん?痛いの嫌でしょ?だから・・・・」
 指先でなにかをすくい、俺の足の間に手を入れてくる。俺はそれでも何をされるのか分からずに、ぼんやりと、うっすら汗ばんだ尚也の姿を見上げていた。
 にゅるっ
「え!?・・なにっ・・・?」
 不慣れな感触に、瞬間身体が逃げる。尚也はそんな俺の肩を押さえると、そこの入り口で指を動かしながら俺に囁いた。
「大丈夫。力抜いて、すぐにはしないから・・・」
「で・・・でもっ・・・・あ・・・」
 舌に耳が入ってきて、肩をすくめる。くすぐったいってば・・・。指は入り口をなぞるように何かを塗り付けている。冷たいぬるぬるした感触が次第に生温かいものに変わっていった。
「そうそう・・・力抜いて・・。力、入れないでね・・・・」
「っ・・・・はっ・・・・」
 俺はもう話す事もままならなくて、荒い呼吸を繰り返す。立てた膝の裏から汗が伝い落ちた。
「指・・・入れるよ」
 指入れるって・・・どうなっちゃうわけ?もう、何も考えられないし・・・。
 尚也の指先に力が入る。ほぐされた入り口から分け入るように、俺の下半身に襲う異物感。な・・なにこれ・・?
「あ・・・子規くん・・・・口唇噛まないで・・・・口・・・開けて・・」
 尚也の左手の指が俺の口唇を割る。口の中に尚也の指の味。閉じられなくなった口からは、逃げ場を求める声が漏れていく。
「んあっ・・・・あ・・・っ・・・」
 反射的に尚也の指に舌を絡め、侵入してくる指の圧迫感から気を逸らす。
「痛くない?・・・平気?」
 痛くないけど、なんか変。なんて表現していいのか分からないけど・・とにかく、変なんだってば。
「ヘー・・キ・・・だけど・・・・なんか・・・変・・っ・・」
「変って何が?」
 尚也がゆっくりと指を動かし出す。塗り込んだものと一緒になって、クチュクチュ音がしてる。
「へんなトコが・・・熱くって・・・でも・・・気持ち・・いい・・っ・・・」
 触られてるのは後ろなのに、そうじゃないところがまた元気になってきてるし。指一本でこんなんじゃ・・・。
「そう、良かった」
 安心したように微笑んで、尚也が指を増やしてくる。あ・・・中で・・・動いてる・・っ・・・。
「痛かったら言ってね・・・」
 そう言い残して、尚也の姿がまた下の方に消える。熱い口唇の感触。一度イカされてるせいか、それは更に敏感になってる。
「あ・・んっ・・・・んんっ・・・は・・・」
 前を口でされて、後ろでは指が動いている。痛くないけど、でもなんか変。自分でもそこがひくついてるのが分かる。すっげー恥ずかしいんだけど、でもそんなこと考えてる余裕ない。
 マジで、俺どうなっちゃうんだろう・・・?
「そろそろ、大丈夫かな?・・・・子規くん、辛くない?」
 尚也の声に、力なく首を振る。薄く開いた目には、尚也が自分のベルトを外している姿が映った。
「子規くん・・・口は閉じないでね・・・」
 抜かれる指。撫でられる髪。重ねられる胸。
 軽くくちづけられ、後ろに指とはタイプの違う圧迫感。さっきのを塗り足したのか、またひやりとする。でも、その分すんなりと先端が入り込んできた。・・・・・・けどっ!
「えっ!?・・・な・・・なっ!?・・・」
 指なんかとは比べ物にならないモノが、身体を押し広げる。ちょ・・ちょっとっ!
「い・・痛・・っ・・・・ま・・待って・・・・っ・・・」
 お兄さんそれは反則でしょ!そんな・・・・入るんですか!?
「んああっ・・・!」
 尚也の動きが止まり、尚也のモノを受け入れてる部分を尚也が指でなぞる。俺の身体がピクリと跳ね、なおもゆっくりとそれは入ってきた。
「力抜いて・・・子規くん・・・」
「んんんんっ・・・!・・・っは・・・あ・・・っく・・・」
 奥まで突かれたような感じ。尚也の手は俺の前で震えるそれにかけられ、塗ったものとか唾液とか、なんかよく分からないけど、妙に滑り良く動き出した。
「あ・・・や・・・っ!・・・やだ・・・っ・・・動かない・・で・・・っ・・」
 そこがすっごく熱くなってて、尚也が少しでも動くたびにぞくっとする。自分でも知らないうちに流れ出した涙が、目尻から零れ落ちていく。
「ん・・・。子規くん・・・気持ちいい・・・っ?」
 尚也はそう言いながら、手を休めることなく俺のモノをいじってる。そっちが気持ちよくなる度に、無意識に後ろを締め付けてしまい、それがまた余計に恥ずかしかった。
「じゃあ・・・動くよ・・・」
 だめーーーーっ!!と心で思いながらも、それを言う前に尚也の手が俺の腰を捕まえる。
 尚也は一度低く息を吐くと、俺が痛くないようにか、ゆっくりと動きはじめた。
「ああっ・・・っ・・・ん・・・っ・・・」
 ベッドの軋みが、まるで自分の身体の音のような気さえする。動いた拍子に尚也の汗が俺の胸に落ちた。
「っ・・・ん・・・・・・っ・・」
 リズミカルにぶれる視界には、淡いライトを背に動く尚也。やばいくらいに気持ちよくって、病気かってくらいに身体が熱い。
「っあ・・・・も・・・」
 でもって、一緒にいてくれると言った「ハジメテノオトコ」は、やばいくらいにカッコよかった。





 朝、尚也は目覚めると自分の腕の中で寝息をたてている子規をじっと見下ろした。
 頬には微かに涙の跡。時計を見ると、既に8時半だった。
 今日も学校あるんだろうな・・・と思う。起こしたらきっとすぐに学校に走っていくタイプだな、真面目そうだから。
−−プロポーズ、冗談だと思われてるんだろうな。これを最後にしないためには、どうしたもんだろう。本当に本気だってことは、とりあえずしばらく黙っておくとして・・・。
 まだあどけない寝顔を眺める。起こすのがもったいないなと、息をついた。
−−完全に遅刻の方があきらめもつくと思うから、とりあえずもうしばらくは起こさないでおこう。酔ってる間のこと、覚えてるのかな?覚えてても忘れてても、うろたえるんだろうな。うーん、かなり楽しそう。
 尚也は子規の髪に手をかけると、それを優しく撫でながら一人ほくそ笑む。
 声をかけるまでは、まさか自分がここまではまるとは思ってなかった。くるくると変わる表情も、人の話をいちいち信じる素直さも可愛くて仕方がない。
『一人ぼっちって・・・・やっぱりやだよね?』
 子規の台詞が胸をよぎる。自分にその台詞を吐いたのはこれで二人目。偶然だとは思うけど、偶然だからこそ嬉しかった。
 もっと触れたい、もっと一緒にいたい。そう思う分だけ早く時間は過ぎていく。
  その時間の先を繋ぎ止める方法を考えながら、尚也は静かに子規の寝顔を見つめた。


 そして30分後。子規は目覚める。



<戻る>

子規と尚也の幻のお初・・・ということですが、これで幻ではなくなりましたな(^^;)ははは。
表の「多分、それは、嘘。」と合わせてご覧頂けますと、話が繋がるかと思われます。
叶さん・・・こんなもんでどうでしょ?楽しんでいただけたでしょうか?どきどき。