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乙姫静香

◇第二十四話◇



「迷え!性少年・そのいち」





 自分が意識するよりも先に、子供の作り方を知っていた。
 なんてことはない、自宅で父親が連れ込んでナニしているのを見たことがあるからだ。が、ひとつ間違っているのは、男同士でも子供はできるのだと思い込んでいたこと。それもそのはず、親が連れ込んでいた中には男もいたからだった。



 ジョーは自宅で一人、DVDを見ていた。ウィルもシンも今日はいない。珍しく、たった一人の夜だった。
 大澤の元に来ていたあの男は、無事に家に帰ったのだろうか。ジョーは今日見た光景を思い出しながら、リモコンを片手にため息をついた。
 あの男が元の恋人なら、大澤もウィルと同じ人種の男ってことになる。自然と、幼い頃に偶然みかけてしまった父親の濡れ場が頭をよぎった。
 そっかぁ・・・ゲイなのか・・・。
 あいつも、親父みたいに男とああいうことするのかな・・・。
 テレビの中では映画のストーリーが展開している。ジョーは目だけで画面を追いながら、頭の中では違うことを考えていた。
 キスしたり、抱きしめたり、甘く囁いたり。たまたま見ていた映画の中でも、そんなシーンが繰り広げられていたせいか、ジョーはついつい大澤のそんな光景に想いをはせた。
「・・・ジョー」
 その瞬間。ジョーの耳に聞こえたような気がした。大澤の声で、ジョーの名が。
「・・・・・・What?(えっ?)」
 思わず一人で眉を寄せる。
 なんだ?俺は一体、いま何を想像したんだ?どうして、あいつがここで俺の名前を呼ぶんだ?俺は別にあいつと何をしたいって訳でもないし。大体、あいつは俺の事を知らないし。
 テレビの中では続けられるラブシーン。絡み合う舌までもが見えるキスシーンに、ジョーは目をパチクリと瞬かせた。
 こんなキスシーンなんて見慣れたもんだ。学校の中でもあっちゃこっちゃでみんながやってたし、珍しいもんでもない。それがなんで今になって、こんなにも気になる?
 小学校でコンドームが配られた時に、ウィルから持たされたブツを見せながら、教師に「I've already have one.(もうあるからいいです)」と言ってドギモを抜かれたことのある俺が、なんで今更?
「Do you wanna kiss me again ?(もう一回キスしたい?)」
 ズキン。ほらまた、声が大澤の声に聞こえた。明らかに英語なのに、どうしてだか大澤が自分に言ってるかのように聞こえる。まるで、吐息が触れる距離で、肩なんか抱かれながら言ってるような気さえする。
 なんでなんで?大澤はここにいないんだってば。聞こえるわけ無いし、大体こんなセリフ・・・。どうしちまったんだ俺?目を開けたまま眠るクセでもついたか?
 誰が見ているわけでもないのに、ついキョロキョロと周囲を見回してしまう。勝手に体温は上昇中。一人で顔を赤くしながら、ジョーは動物園の熊のように、居間をウロウロを歩き回った。
 止めた、今日はさっさと寝よう!
 ジョーの手がリモコンにのびる。動揺のあまり一度取り落としながらも、掴んだリモコンを凝視して、ジョーは再生停止ボタンを押そうとした。その瞬間。
「You're a nice kisser.(お前、キス上手いな・・・)」
 画面の中から見つめて来るのは・・・。
「No〜〜〜〜〜〜〜!!」
 反射的に叫んで、停止ボタンを押す。画面が暗くなると、ジョーはリモコンをボトリと床に落として自分の部屋へと駆け込んだ。敷いておいた布団に飛び込み、ただひたすらに眠ろうと目をつぶる。
 駄目だ俺。やめろ俺。なにも考えるなよ俺。考えたら負けだぞ俺〜〜〜!
 逃げ込む先は夢の中にしかない。そう信じて、羊の数を数え続けるジョー。そのせいあってか、ややもすると適度な睡魔に襲われて、意識が朦朧としてきた。でも、油断してはいけないと、その後も必死に羊を数え続ける。その数、ニュージーランドの牧場並み。



 数十分後、ジョーの布団からは心地よい寝息が聞こえ出した。
 しかし、眠りについたばかりの彼はまだ知らない。
 夢の中でも、誰かさんが待っていることを。



 それは果たして、悪夢か否か?



−終−



若い頃って、些細なことでも過剰反応するほどに
いろんな意味で敏感でしたよね〜(遠い目)

「大人のジジョウ・子供のジジョウ」の第三話直後の話
と考えると丁度いいですかね。
そして、話は四話に続くって感じで。

にしてもヨッさん、こんな風に思われてるだなんて
これっぽっちも知らないに違いない。
罪な男だよ、全く・・・。






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