100moments
乙姫静香
主要な人々(というかこの人たちの話)
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| 小野寺くん クールビューティ、企みの笑顔。 |
一平くん 情緒欠陥(?)のカワイコちゃん。 |
おまけの佐藤くん 明るく楽しく悩み無く、物事深く考えず。 |
◇第六話◇
「小野寺くんと一平くん」
ここは横浜某所にある『愛の夫婦出版(アイノメオトシュッパン)』。
アヤシイ名前とお思いだろうが、別にそんなアヤシイ出版社ではなく、結構業界では名の知れた、ちゃんとした会社である。
ちゃんとした自社ビルを持ち、メインの発行物は『すてきな夫婦(めおと・略してステメオ)』。最近ではターゲットを若くした同棲・同居マガジン『一緒に暮らそう』も人気を博している。
そしてその『一緒に暮らそう』編集部には、がけっプチトリオと呼ばれる大学4年生のバイト三人組がいた。
締切り直前・・・というか、もう毎日が締切りの『締切りラッシュ時』。今日も愛の夫婦出版のがけっプチトリオは赤ペン片手に校正マシーンと化していた。真っ白い原稿を前に頭をかきむしる者。広告主が捕まらずに校正紙を握り締める者。皆が目を血走らせながらデスクに向かう。阿鼻叫喚とはまさにこの事。・・・と、思いきや、一人足りない。
「あれ?今日は佐藤くんは?」
通信販売部の美人さん(でも男。でもなんか良い匂いがする)こと「大石さん」が編集部を除いて一言。29歳で配送主任。こと仕事のこととなるとビシッとしている大石も、プライベートになると実はとても天然さん。そんなところも大石の魅力であるのだが・・・。
「佐藤くんは〜、サークルの合宿で伊豆に行ってるんですぅ」
一平は今日も、もへ〜っとした雰囲気で大石に答えた。これでも締切りラッシュモードなのでしゃべる速度も少しは早くなってる・・・と本人は言うのだが・・・。
「でも、間に合わないんでしょ?大丈夫なの?」
大石は編集部のテンパった雰囲気に早くも逃げ腰になっている。すると、それまで無言でペンを走らせていた小野寺が、ぼそっと言った。
「大丈夫じゃない時は・・・・・」
「ない時は?」
大石は、どんな秘策があるのかという表情で小野寺を見つめる。・・・と、小野寺はあきらかに「にやり」という雰囲気を漂わせた「にこっ」という笑顔で席をたった。
そのまま、つかつかとオフィスの広い屋上に消えていく。大石はそれを見送ると、赤ペン片手にぼーっと突っ立っている一平に向かって言った。
「・・・・どうしたの?」
「あ〜・・・・呪文を唱えに」
「呪文?」
大石の疑問に、一平はただこくこくと肯く。大石は良く理解できずに首を傾げた。
それから5時間後。大石は帰り際にもう一度編集部を覗いた。買い出しくらいは行ってあげてもいいな・・・という気持ちだったのだが、編集部のドアを開けた瞬間、目の前をよぎった人物に、ただただ目を丸くした。
「はいこっち。ノンブルデータオッケーです!」
「あ・・・あれ?・・・・佐藤くん?」
「あ、大石さん。どうしたんですか?」
目の前で意気揚々と仕事をしている佐藤の姿。
「だって・・・伊豆にいるんじゃあ・・・・?」
すると、佐藤が実にあっさりと言ってのけた。
「いましたよ。でも俺、小野寺の召喚獣なんで、呼ばれたら来ないと・・・・」
「召喚獣・・・・」
佐藤の言葉をただ繰り返す大石。
「佐藤くんは、小野寺くんのために死ななくちゃいけないんだよね〜」
通りすがりの一平の声。佐藤は力強く肯く。
「おうっ!俺は小野寺との熱い友情のためなら、命を投げ出してもいいぞ!!」
大石はもはや、なんと答えていいのか分からずに、曖昧な笑みを浮かべている。すると、小野寺が校正作業を続けながら、ぼそっと呟いた。
「佐藤くんにはそうしてもらうけど、でも、僕は誰のためにも死にたくないな・・・。そんなの、気が知れないよ・・・・」
ひゅるひゅるひゅるひゅる〜〜
瞬時にして気温が下がったような錯覚。大石は曖昧な笑みのまま編集長の方に挨拶がてらに歩み寄る。一平も、終わった原稿を持って袋を取りに去る。
一人残された佐藤は、今更な扱いにめげることもなく、気を取り直して言った。
「ちなみにさぁ、一平に何かあったらお前どうするの?」
ペンの動きをはたと止めて振り返る小野寺。佐藤が返事を待ってどきどきしていると、少しだけ考えて小野寺が言った。
「何かある前に止める」
果たして、友情って一体!?
−終−
全然色っぽくない話になってしまった(^^;)
まぁ、こんなような日常というわけで。
でもなんつーか、こういう友情関係もあるかなー・・と(^^;)