innocent lies
乙姫 静香
わがままな男、大澤は困っていた。
新宿某所のラブホ。間が持たなくてとりあえず浴槽に湯を入れる。スーツのまま浴室に来てしまったのは、防犯上のこともあって・・・だった。
いや、ジョーのことを疑っているわけではない。誰がどう・・・ということではなく、その、出会ってすぐにゴニョゴニョすることになったときは、少なくとも金品は離さないようにする。なにかあった時に相手を疑わずに済む状況を作っておく方が、親切だと思うし、まぁなんというか、転ばぬ先の杖のようなものだった。
で、ラブホである。主に、することはひとつ・・・と一般的には思われている場所である。
「ふぅん。大澤さんとキスすると・・・・・こういう味、するんだ」
と言われて、ついつい来てしまったラブホテル。困惑のまま、先にシャワーを浴びるぞなどと言い、こうして浴室に来たはいいけれど、本当に・・・本当にするのか俺?と未だに自問を繰り返していた。
据え膳食わぬはなんとやら・・・とは言うものの、据え膳っぽいから食っちまえ・・・という雰囲気が、ジョーからはしてこない。一夜の火遊びと言うよりは、確実に「本命コース」っぽい相手だなと思っていた。
それだけに、ただいま試乗キャンペーン中の大澤としては、「手を付けてはいけないのではなかろうか・・・」などというオジサンゴコロが働く。
「美味しそうなモノを目の前にして、食べずにいられるようになったら年よねぇ・・・」
いつかしみじみと、カナメが言っていた言葉を思い出す。ええい!うるさいわい!と思うものの、そうだよなぁと納得するのも事実。大澤はとりあえずジャケットを脱ぐと、壁の小さな窓を開けて、煙草に火をつけた。
「なーんで俺、こんなトコで煙草吸ってんだか・・・」
ため息混じりに煙を吐く。とりあえず、風呂くらいには入るかーと、くわえ煙草で靴下を脱ぎ始めた。
==innocent lies==
バクバクバクバクバクバクバクバク
心臓の音が、自分の耳の中で16ビートを刻んでいるような気がする。ジョーはベッドの上に座ったまま、ピクリと動くことも出来ずに床の一点を見つめていた。
ぎゅっと膝の上で握り締めた手は、小刻みに震えている。寒いのか暑いのかも分からない部屋の中で、ジョーはどうしてだか、自らの父親・ウィルのことを思い出していた。
「ええい、クソ親父め。なんだか知らないけどムカツクぞ!」
大澤と離れたくないと思っただけ。あともうちょっと、あともう少しだけ・・・と思い続けてつなげた会話の行き着く先がこんな場所になるなんて。いやしかし、帰らなくって、夜を越して二人っきりで一緒にいて、しかも自分は大澤が好きとなると・・・そうだよな、行き着く先は一つだよな・・・とも思う。
今になって冷静に考えると・・・自分から誘ったような感じでもあり・・・。
ぎゃああ!そうだよな!俺が誘ったんだよな、これって!
ジョーは拳を頭に当てて、髪をかきむしる。こんなんじゃあ、俺ってばすごく遊んでるヤツっぽいじゃんよ!ビギナーの俺が、偉そうに誘ってどうするんだよ!
ベッドに突っ伏し、バンバンとベッドを叩く。ついでにゴロゴロ転がって身体を動かすと、少しだけ頭の方もすっきりしてくるような気がした。
「ぶわーかぶわーか!チェリーがいきがってんじゃねぇよ!」
と、ウィルが舌を出し中指を立てている姿が、ホンモノのように浮かぶ。それがさらにムカツキに火をつけ、ジョーは暗い部屋の中で、ひとり中指を立て返した。
「っざけんじゃねぇよ!だれかれ構わずやりまくりのそっちと違って、こっちは厳選吟味のロイヤルコースなんだよ!スタミナ充分、ドンと来いってんだ!」
と、ジョーがベッドの上に立ち上がって言っていたその瞬間、浴室のドアが開いて、腰にタオルを巻いた大澤が出てくる。服をソファの上に投げ出すと、大澤の目がベッドの上のジョーに向けられた。
「あ・・・あの・・・これは・・・」
中指の行き場に困って、背中に慌てて回す。大澤は表情を変えぬままにジョーに視線を投げると、浴室のドアを指して言った。
「シャワー入るだろ?」
「あ・・・う、うん」
聞こえなかったのかーと、安心してジョーがベッドを下りる。そのままそそくさと浴室に消えると、パタンとドアが閉められた。
大澤は濡れた髪を拭きながら、ポテポテと歩いてシーツのよじれたベッドに腰掛ける。
しばらくそのまま動かなくなると、一度立ち上がって煙草を手にする。ベッドに腰掛けなおして火を点けると、小さく呟いた。
「スタミナ充分って・・・・」
こりゃ困ったなぁーと、眉間に思わず寄ってしまう皺。
「やる気まんまんじゃねぇかよ・・・」
大澤は、天井に目を向けたまま、自分の目の前に白い煙を吐いた。
==innocent lies==
排水溝に吸い込まれていく湯の流れを見ながら、ジョーはシャワーの中に佇んでいた。
熱めのお湯が心地よい。しかし、心臓が高鳴るのは熱さの所為ではない。身体を流しながら、なんともいえない複雑な気分に陥っていた。
この身体、初めて触られるんだよな・・・。
別にもったいぶったわけでもなんでもないけど、この歳までキヨラカさん。しかし、そのことは隠し通さなければと思っていた。そんなこと分かったら、きっと引かれてしまう・・・ような気がする。自分がもしも経験者だったら、きっと躊躇する。相手のことを良く知らなければ尚更、「本当に好きな人とした方がいい」と、ウィルが大爆笑するようなことを言ってしまうかもしれない。しかし、大澤にその台詞を言わせるわけにはいかないのだ。
だって「それがアナタなんです」なんて台詞、自分には絶対に言えない。そっちは確実に引かれるだろうし、細かく聞かれれば、自分が大澤を付け回していたことを白状しなくちゃいけなくなる。そんなこと、できるわけが無い。
一生に一度「初めて」というものが存在するなら、大澤がいいと、ジョーは思っていた。誰にしても同じなんだったら、益々大澤がいいと思う。
それがどうしてだかは、よく、分からなかったけれど。
==innocent lies==
カチャ
浴室のドアが開いて、ジョーが腰にタオル一枚という格好で現れる。大澤はそれに、チラリと一度だけ視線を投げると、すぐに目の前で開いている雑誌に目を戻した。ベッドの上でくわえ煙草。オマケに脚を組んで雑誌を読んでいる大澤を見て、 ジョーはとりあえず、脱いだ服を傍らの椅子の上に置いた。
「おまたせ・・・しました」
大澤に背を向けるように、ベッドに腰掛ける。自分から近づくには、まだ勇気が足りなかった。
さっきは別のことに気を取られていた所為か、大澤の裸を直視しなかったものの、いま自分の視界に入ったものをあらためて検証するに、大澤は着膨れするタイプなのかもしれない。思ったよりも全体的に細めだし、特に腰周りのすっきりした感じは東洋人ならではという感じがする。
「で、どうする?」
背後から届く声に振り返ると、大澤は煙草の灰を灰皿に落としている。吐き出した息が、白く長くジョーの目の前を横切った。
「・・・え?」
「ジョーくん、普段どういうプレイしてるの?タチ?ネコ?それともリバ?」
ベッドの上に脚を伸ばし、至極冷静に聞いてくる大澤。ジョーは一瞬会話の内容についていけず、薄茶の目をまんまるく開いた。
「いえ・・・あの、ごくごく普通・・・・の・・・で」
どう答えれば大澤の中の正解に当たるのか、ジョーには分からない。なんとも曖昧に呟くと、ベッドの上に正座をした。
「あのさ、こういうこと聞いちゃ失礼かとも思うんだけど・・・」
大澤は、いきなり正座で律儀に向かい合おうとするジョーに、少なからず驚かされる。
「はい、なんでしょう?」
しかも、これまた律儀に返事をされ、益々言いにくそうに煙草を吸った。
「もしかしてさ、ジョーくん・・・初めてなん・・」
「そんなことないです!違います!」
大澤が言い終わるよりも早く、ジョーが首を振りながら思いっきり否定する。その様があまりにも必死に見えたもんだから、大澤は口を開けたまま、力なく二回ほど肯くしかなかった。
「あ・・・うん、ごめん。変なこと聞いて・・・」
「ちゃんと、したことありますから!」
ジョーの膝の上で握り締められた拳。大澤はそれを見ながら、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「じゃ・・・さ、俺の好きにしてもいい?」
ベッドの上からどかされる雑誌。それが傍に来いというサインなのか、大澤の傍にできたスペースに、ジョーが少しだけにじり寄った。
そして、コクリ・・・と、一度ジョーが肯く。大澤はライトをジョーの顔が見えるギリギリの暗さにすると、一度大きく息をついた。
本っ当〜にいいのかなぁ?と、大澤は内心で思っている。敬語に戻ってるところをみると、緊張しまくってるようだし、それってきっと初めての証拠。しかもそれを隠すところをみると、それに対してコンプレックスがあるようだ。こんなにやりたがってるっていうのも不思議だし、あの誘い方はどう考えてもすることを前提としていたようだし・・・。好きな男とやる前に、俺と予行練習のつもりなのかな?
だったら、キスはしない方がいいんだろうな・・・。
というわけで、大澤はジョーをベッドの上に引っ張ると、頬に軽くくちづけて、その口唇を首筋に下ろしていく。ジョーは、口唇にキスされないことを不思議に思いながらも、初めての感覚に身を縮めそうになるのをグっとこらえた。
「して欲しいこととか・・・ある?」
予想通り身を固くするジョーに、大澤はなんとなく納得する。指先で胸をいじると、ジョーが一瞬、息を止めた。
「大澤さんの・・・好きにしてください。それで・・・いいですから・・・っ」
「ふぅん・・・、そか。じゃあ・・・話しながらにしない?敬語抜きでね」
タオルの上から、やんわりとジョーの尻を掴む。張りのある感触が、手の平に心地よかった。
「話しながら・・・?」
触られるたびに身体が引けそうになる。ついでに、自分が敬語に戻っていたことも、その時に初めて気がついた。
自分の身体にまたがる大澤が、膝立ちになってティッシュケースを手繰り寄せる。
「うん、俺、無言でするの、あんまり好きじゃないんだよね」
ってことは、声出した方がいいってことなのかな?それとも、本当に会話をしながらってこと?・・・そんな余裕、自分にあるのだろうかと、ジョーは緊張で高まる鼓動の中で思った。
「じゃ・・・なんの話を・・・?」
大澤の口唇が肩に触れ、軽く吸われる。ジョーは、おずおずと腕を大澤の背中に回した。
手の平に感じる、大澤の背中の感触。思ったよりも熱い大澤の身体。あまりよく見えないことが、さらにすべての触覚を鋭敏にさせるような気がする。
「そうだな・・・じゃあ」
ジョーの身体の表面を撫でていた大澤の手が、すっと下半身に伸びる。そのままタオルに隠されたジョーの股間にタオルの上から触れると、まだ変化のないそこをゆっくりと撫でさすった。
「遅い方?それとも・・・早い方かな?」
話ってそういう話かい!とジョーは胸の中で突っ込む。しかし、初めて触れてくる他人の手は、ジョーが予想していたよりも、はるかに甘い刺激をくれた。
「そっ・・・れは・・・、普通・・・だと・・・」
かろうじてそれだけ答える。すると薄闇の中で、大澤がふっと笑った声がした。
「ジョーくんは、随分と普通が好きだな」
カッと恥ずかしさに身体が熱くなる。だって、そんなこと言われても、比較するものが無いし・・・。
「だ・・・って、やり方が違えば、早さなんか簡単に変わるし・・・」
そう話している間にも、大澤の手によって、ジョーのそれはどんどん形状を変える。とりあえずは普通に反応したそれに、大澤がなるほどと肯いた。
「じゃあ、どうすればイイ?」
にやっと笑った大澤が、ジョーの手を取って、自分の下半身へと導く。ジョーは、いきなりの出来事に驚きながらも、ぎこちなく大澤のそれを握ると、その手にキュっと力を入れた。
「やってみて、俺に」
声のトーンで、大澤がかなり楽しんでいることが分かる。ジョーは自分の顔が熱くなりすぎて、火が出るんじゃないかと思った。
「初めてする相手だと、こうするのが一番わかりやすいんだよね。加減っていうか・・・」
こういう状況でありながら、それにはちょっとジョーも納得する。自分のモノはもうすっかり天を仰ぎ、巻いたままのタオルを押し上げている。ジョーは覚悟を決めると、既に素のままの大澤のそれを、普段自分がしているようにしてみた。
その間にも、大澤はジョーの腰に巻かれたタオルを剥いで、直接ジョーのものに触れてくる。その一瞬の気恥ずかしさが、ジョーのそこを益々元気にした。
「っ・・・俺・・・っ・・・下手・・かな・・・?・・・っ」
荒れる息の合間に、ジョーが呟く。それでも徐々に形を変える手の中のモノが、とりあえず及第点であることを伝えていた。
「そんなことないよ・・・気持ちいいし・・・」
うわっ!なんか知らないけど、そんな大澤のセリフが腰にズキリと響く。気持ちいいって・・・声に出されると、なんか恥ずかしい。
それが引き金になったのか、ジョーのそれはちょっとヤバい状態になってくる。大澤のそれには変わらぬ刺激を与えながら、ジョーが困ったように言った。
「あ・・の、大澤さんっ・・・俺、ちょっと・・・そのままされると・・っ・・・」
「いいじゃん・・・出せば?」
大澤はなんでもないことのように言って、一向に手の動きを止めようとしない。
「いや・・・でも・・・っ」
このまま手の中に出すのは少し抵抗がある。しかも、それは大澤の手。が、一度イキそうになると歯止めが利かないのか、ジョーは手の中の大澤のモノをぎゅっと握って、目を閉じた。
「はっ・・・・・・・っ・・・」
手の中で震える感じで大澤はタイミングを計り、いともあっさりと手の平でジョーの放ったものを受け取る。それを傍らのタオルで軽く拭くと、細かに上下しているジョーの白い胸を、軽く吸った。
ピクリと揺れる、ジョーの身体。ジョーはうつろな目で視線を彷徨わせると、闇の中に大澤を見つけて言った。
「すみません・・・・っ・・・」
「謝ることは無いだろ、そのためにやってるんだから。イかない方が、俺としては困るし」
くすっと笑って、なおも大澤はジョーの身体に舌を這わせる。熱くなった肌に、それよりも熱い舌が絡み、時折ジョーの身体が震える。大澤は自分を握らせていたジョーの手を解くと、身体をずらして、ジョーの膝を割った。
「じゃあ、さっきのがあの早さなら、今度はどうかな・・・?」
「え?」
自分の腰の辺りから聞こえてくる声。ジョーが疑問を投げかける間もなく、今度は大澤がジョーのそれを口に含んだ。
「わっ!・・・・・な・・・」
これこそ未知の感覚。手なんかとは比べ物にならない。熱くて、弾力のある舌と口中の刺激。柔らかいかと思えば、固く尖らせた舌先で、くすぐるようにいじられる。ジョーは知らないうちに両膝を立てると、大澤の身体を挟み込むように内股に力を入れていた。
「・・・う・・・わっ・・・・あっ・・・」
一度出したばかりだというのに、あっという間に元気を取り戻す。反応の良過ぎる自分が恥ずかしくもあるが、そんなことを考えている余裕が無いほどに、下半身から駆け上ってくる感覚はいやらしくも甘すぎた。
「はっ・・・・っん・・・・大澤さ・・・っん・・・」
行き場のない手で、枕の端をぎゅっと掴んでみる。大澤の名を呼ぶと、大澤がジョーのものを口に含んだままに、短く返事をした。
「ん・・・、なに?」
その震動さえも、ジョーの身体を熱く震わせる。
「ちょ・・っと・・・・んっ・・・」
「ジョー・・・いい?」
「いい・・っ・・・って?」
くちゅくちゅと音をさせながら自分のものを舐めあげる大澤の顔を、見下ろしてみる。手と口を総動員しているその姿は、いま自分が味わっている感覚とはまた別の意味で扇情的だった。
「気持ち・・・いい?」
腰にズキズキと響き続ける、毒のような快感。正気だったらとても答えられないような大澤の質問にも、その毒の所為か、ジョーはけだるく首を横に振りながら呟いた。
「ん・・・気持ち・・・いい・・・・」
そういえば早々に筆おろしをした友達で、やたらとセックスにハマッてるヤツがいたっけ。今なら、その気持ちがちょっと分かる。心のどこかにある背徳感と、それを隠し味にしてさらに甘さを増すこの快感。こんなに気持ちいいものなんだったら、毎日でもしたくなる・・・。
「大・・・澤さん・・・は・・・っ?」
荒い呼吸の合間に、ジョーが呟く。大澤は上目遣いでジョーの顔を見ると、それでも舌の動きは止めないままに返した。
「ん?」
「大澤さんは・・・どっちが好き?・・・手と・・・その・・・」
手の甲を額に当て、ジョーが軽くかぶりをふる。乾いた口唇の間から、赤い舌がチラリと覗いた。
大澤は、張りのあるジョーの尻を握りながら、甘い感覚に身をゆだねているジョーを嬉しそうに見下ろす。大袈裟によがるでもなく、かといってクールというわけでもないジョーの反応は、かなり大澤の好みだった。
口の中のジョーは、素直に「されただけ」の結果を反映している。大澤はジョーの股間から顔を上げると、唾液に濡れたそれを手で握って言った。
「口でしてもらうのは、男のロマンだとも言うらしいぞ」
瞬間、ジョーが目を開いて膝立ちの大澤を見上げる。大澤はジョーの視線に微笑と肯きで答えた。
「男の・・・ロマン?」
なんじゃそりゃ?と、ジョーは思う。が、今自分が感じた甘美な愛撫に、納得しながら笑顔で肯いた。
「はっ・・・ふふっ・・・・・っ」
「ってなわけで、結構いい反応してるけど・・・ジョーくんのも」
生かさず殺さずな刺激で、やんわりとジョーのモノを握る大澤。ジョーは自分の肌が汗ばむのを感じながら、薄い笑みを絶やさない大澤を見上げた。
「そういえば・・・大澤さんは、どっちなの?上とか・・・下とか・・・?」
「俺?・・・俺は、どっちもイケるくち。ちなみに初めてん時は入れられた方だったけどな〜」
「気持ち・・・よかった?」
本当は「痛くなかった?」と聞きたいところをグっとこらえる。そんな聞き方したら、益々初めてだってことがばれてしまう。すると、大澤は少し意地悪く笑って返した。
「試してみる?」
うわっ!なんてこと言うんだこの男・・・とジョーは思う。「イエス」と言ったら、童貞なのがばれる上に完全に後戻りは出来ないし、「ノー」と言ったらここまでになってしまう。なんだようなんだよう!好きにしていいって言ったんだから、勝手に好きにしてくれればいいのに、そんな風に聞かれたら、なにか言わなくちゃいけなくなるじゃないか・・・。どう答えれば一番クールに受け取ってもらえるんだ?
一方大澤は、あからさまにとまどいの色を濃くするジョーを前に、別の意味でとまどっていた。予行練習で自分と寝ようとしてるのなら、慣らす程度でやめておいた方がいいのかな・・・?それとも、現実をはっきりと教えておいた方がいいのかな・・・?それにしても。
好きなヤローのために、そこまでしようだなんて、本当にそいつのこと好きなんだな・・・。
大澤は、目の前で俯いたまま二の句を告げずにいるジョーをじっと見つめて、自分は見ることもないであろうジョーの想い人に少しだけ嫉妬した。でも、ジョーがそいつとの最初を最高のものにしたくてここまでしてるんだとしたら、手伝ってやろうかな・・・とも。
「そういや、好きにしていいんだったよな・・・」
大澤はジョーに聞こえるように呟くと、ホテルに置かれているアメニティケースの中から使いきりサイズのジェルを取り出し、無言でそのフタを開けた。
「え・・・あ・・・、・・・う・・・うん」
ジョーは「どこまで好きにされるんだ?」と、不安六割、期待四割で肯く。大澤はそんなジョーを見ないまま、手の平に冷たいジェルを伸ばし、クチュクチュと揉むように温め始めた。
==innocent lies==
「っ・・・・な・・・・に・・・?」
ベッドに四つん這いになったまま、ジョーは震える腰を支えようと、必死に膝に力を入れた。
大澤の片手はジョーの後ろをいじり、もう片方は前で勃ち上がりきっているそれをいじっている。二本目の指が入れられると、ジョーの背中がかすかに引きつった。
「初めてかと思ったけど、結構いけるんだな・・・」
それなりの覚悟があったせいか、意外と受け入れているジョーの身体に、大澤が素直な感想を漏らす。ジョーは、やっぱり大澤に初めてだとばれていたことに少なからずショックを受けながら、それでも思ったよりも不快でない感覚に、途切れ途切れの声を漏らしていた。
「んっ・・・・あ・・・」
内側でうごめく指が、寒気にも似た感覚を呼び起こさせる。最初は少し奇妙で、でも慣れてくると徐々に説明できない熱を帯びさせる。すべりの良い指が、柔らかく収縮する秘肉を内側から掻いた。
「ちょ・・っ・・・これって・・・指・・・だよな?」
奥まで入ってくる感触に、ジョーが細かく首を振る。前ではイキそうになったジョーの根元を、大澤の指がぎゅっと握り締めた。
「ん・・・いま二本だけど・・・。どう・・・?」
だから「どう?」とかって聞くなよ〜!とジョーは心の中で叫ぶ。どうもなにも、痛いドコロでなく、結構しっかり気持ちがいいんだけど、とてもそんなことは言えそうにない。
「大澤さん・・・上手いン・・・じゃない・・・?」
きっとそうに違いない。だって、こんなにただ気持ちいいだけのものなわけないし。いや、もしかしたら、ホンモノ入れられたらとんでもなく痛いのかもしれないけど・・・。
「へぇ〜、余裕じゃん」
喉の奥でくくっと笑って、大澤が三本目の指を、ゆっくりとジョーの中に押し込んでいく。そのままゆっくりと出し入れを始めると、ジョーが両手でシーツを握り締めた。
「っ・・・わ・・・・。なっ・・・・」
「なにこれ」と言いそうになるところを堪えて、目をつぶる。前をいじられてるときとは違う快感の波が、ゆっくりとジョーを襲い始めていた。
背中には、大澤の胸の温度。覆いかぶさるように重なった大澤の肌の感触が、心地よかった。
「ジョー・・・イキそう・・・?」
耳元で囁かれ、その声でイキそうになる。大澤はそのままジョーの耳たぶを噛むと、首筋から背骨を辿るように、ジョーの背中に舌を這わせた。当然、休むことなく動き続ける大澤の両手が、一番の刺激をジョーにくれてはいたが・・・。
「やば・・っ・・・・も・・・」
さっきイったのとは、格が違う快感。湿った音をたてて出し入れされる指を、自分が締め付けていることも、自分でよく分かった。
「出る?」
大澤の言葉に大きく首を縦に振って、目をギュっと閉じる。
それが、ジョーがはっきりと覚えている最後の瞬間だった。
==innocent lies==
朝。大澤は目覚めると、身支度をしながらベッドで眠るジョーを見下ろした。健やかな寝息に、思わずネクタイを結ぶ手が止まる。
ジョーはあの後、緊張が解けたのか、息が整うとほぼ同時に規則正しい寝息を立て始めた。そしてその後、大澤がジョーの身体を濡らしたタオルで拭いても全く起きない程、深く眠り続けた。
身支度を終えたあと、大澤は自分の名刺を一枚取り出し、傍らにあったボールペンを手に取った。ベッドに腰掛けても、ジョーが起きる気配はない。ジョーをしばらく見続けたが、やはり起きる様子はなかった。
大澤はボールペンを弄ぶように指先で回したものの、結局なにも書かないままに、名刺を胸のポケットに戻した。そして、もう一度見下ろすジョーの寝顔。大澤は煙草を一本取り出すと、それを指先に挟んだまま、ジョーの額に軽く口付けて部屋を出た。
しばらくして、ジョーは朝の空気にその目を開けた。薄く目を開けて、いつもと違う雰囲気に一瞬とまどう。が、ゆっくりと戻ってくる昨夜の記憶に、目を見開きながら周囲を確認する。
・・・誰も、いない。
部屋にはジョー一人だった。大澤の姿はもちろん、メモ書き一枚残っていない。ただ、目をやると着替えの上に、部屋の自販機で買ったと思われる缶コーヒーが置いてあった。
ベッドの上で起き上がり、裸の胸をまさぐる。あんなに汗をかいたはずなのに、結構さっぱりとした感覚だった。おまけに、あんなことをしたにもかかわらず、身体全体がなんというか・・・こざっぱりしている気がする。
・・・夢?
でも、ベッドを降りようとした時に感じるだるさが、昨夜の記憶が夢ではないことを教えてくれる。じゃあ、このなんとも言えない中途半端な気持ちはなんなんだろう?ふられたわけでもなく、かといって受け入れられたのかも分からない。そういえば、最後までちゃんとしたキスもしてくれなかった。
「なんだよ・・・携帯の番号ひとつ、教えてくれないのかよ・・・」
缶コーヒーを手に取ると、まだ少し温かい。
そのぬるさは、まさにジョーの中途半端な気分のようだった。
-End-
どもども、大変お待たせをいたしました(^^;)
深咲さまリクの「大澤裏番外編」でございます。
深咲さまのお気に召していただけたら、幸いです。
挿入ナシで腐女子の方々の納得が得られないのではと
微妙に不安でもありますが、当初の予定通りなもんですみません(^^;)
この話の決着・・・というか続きは「大人のジジョウ、子供のジジョウ」の
方に書いて行きたいと思います♪どうぞそちらもヨロシクです〜♪
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