こころの傷 あの日、火をかいくぐって 家に帰った。 家は焼け、四人の子どもは いなかった。 骨がさらっとくだけた。 妻は放心状態になってしまった。 三ヶ月後、姪が 娘からもらっていた市松人形を 娘のかわりにと、返してくれた。妻はそれを抱いて喜んだ。 それから毎年、一体ずつ 市松人形を集めてきた。 こどもたちへの供養だった。