「被団協」新聞−1998.8月号
1面 「つたえよう ヒロシマ ナガサキ」
2面  厚生省の「平成7年度原爆被爆者実態調査」結果について
3面  原爆松谷裁判ネットワーク行動 最高裁でのたたかいについて
4、5面 被団協・中央相談所総会での発言から
7面  「原爆と人間展」パネル500セット普及へ 訪米遊説団が出発
  

「つたえよう ヒロシマ ナガサキ」1周年のつどい−21世紀へ非核の虹を

 「核兵器のない21世紀を」の思いを込めて、7月18日、「21世紀にかける虹のつどい」が東京・神宮外苑の日本青年館で開かれ、100人が参加しました。

 このつどいは昨年7月16日、著名71氏が連名で呼びかけた「つたえよう ヒロシマ ナガサキ」アピールの事務局団体が主催したもの。

 主催者あいさつで松下直子全国地婦連事務局長は、「原爆と人間展」などで被爆の実相普及が広がっているとを報告し、核兵器の新たな危機が広がっているいまこそ「つたえよう」の運動を広げようとよびかけました。

 神奈川・原爆被災者の会による朗読劇、長崎の原爆裁判の松谷英子さんの訴え、慶野未来さんのホルン演奏、笹井はるみさんと山本さとしさんの反核の歌などで、「核兵器なくせ」の思いを新たにしました。

 大田区の小学生3人は「原爆が落ちると 昼が夜になって 人はお化けになる」と毛筆で書いた半紙をかかげ、高校生平和ゼミナールの5人は、和光大学アロエ会の4人と「ヒロシマの有る国で」を合唱して拍手をうけました。さいたまコープ労組は、聞き書き運動の経験を報告しました。

 「日本を非核の国にすることは、被爆国民の責務」という近江日華宗教NGO事務局長の力強いことばで閉会しました。


最高裁へ署名46,000−原爆松谷裁判ネットワークが初行動

 「松谷英子さんをこれ以上苦しめないでください」「厚生省の上告を一日も早く棄却してください」と、原爆松谷裁判ネットワークは7月23日、初めての最高裁要請行動を行ないました。

 まず午前8時半から最高裁西門前で職員へのビラ配り。「最高裁での松谷さんの勝利を」と訴えるビラ600枚が1時間足らずで配りきれました。

 10時からは要請署名提出と書記官要請。ネットワーク参加団体の代表ら12人の手で、46,330人分の個人署名と165の団体署名が提出されました。

 要請には谷野修二上席書記官が対応しました。日本被団協の上申書などと全国116人からの上申書を手渡し、参加代表がそれぞれ「一日も早い上告棄却を」と要請しました。谷野書記官は「請願法にそってご意見をまじめに聞き裁判官に報告する」とのべました。

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原爆松谷裁判の最高裁でのたたかいについて              弁護士 安原幸彦

 原爆松谷裁判は昨年11月7日に、福岡高裁で全面勝利をしました。

  私なりに福岡高裁の判決を評価しますと、三つの意義があったと思います。一つは被爆の実態についてです。甚大かつ未解明な被害という表現になっていますが、被爆者対策の根幹になっている国家補償的性格をふまえて判断しています。

 二つめは立証責任の問題です。これまでの被爆者行政は被爆者に無理な立証責任をおわせ、被爆者を切り捨てる施策をとっていました。このことが断罪されたのです。

 三つめはDS86にたいする評価です。核兵器擁護の論理は、核兵器は非人道的な兵器ではない、使える兵器だといい、そのためにDS86が利用されてきました。判決はこのDS86を排斥し、核兵器は、使ってはいけない兵器だということを明かにしたのです。

 最高裁とは

 こうした貴重な福岡高裁の判断の当否が、こんどは最高裁で問われることになりました。 最高裁は、立法・行政・司法という日本の国家権力を三つに分けた一角を担うところです。最高裁の長は三権の長の一つです。衆参両院議長、内閣総理大臣と同格です。各省庁の大臣と最高裁判事は同格です。

 最高裁の判断にさからうことは、内閣も国会もできません。

 最高裁判所は15人の裁判官で構成されています。裁判官は5人ずつ三つの小法廷に分かれています。松谷裁判を担当するのは第三小法廷です。最高裁では事実については判断しません。法律判断、憲法判断をします。  最高裁には調査官がいます。現役の裁判官です。調査官が事件の争点や証拠を整理して裁判官に出します。裁判官はそれを見て判断するのです。

 最高裁が孫振斗裁判の判決で、被爆二法の解釈として「国家補償的配慮が根底にあることは否定できない」とのべたことが、私たちのたたかいの大きな力になったことはみなさんがご経験になっているところです。

 「国寄り」体質 ゆだんは禁物

 最高裁の体質は、はっきりいって国寄りです。国を相手にやって勝ったのに、最高裁に持ち込まれてひっくり返された例は少なからずあります。  松谷裁判が長崎地裁でも福岡高裁でも勝っているのは有利な条件ですけれども、だから最高裁も勝てるということにはなかなかいきません。

 とりわけ最高裁は、戦後補償の問題では一貫した立場をとっています。一般戦災の問題、在外資産を失った人たちの裁判の中で、最高裁は繰り返し「受忍」論を展開してきました。基本懇が述べた「受忍」論の源は、実は最高裁の判断にあったのです。この「受忍」論を被爆者にもいってくるかどうかが、松谷裁判で問われているところです。

 世論に敏感な最高裁の一面

 最高裁には面白い面もあります。一つは、バランスをとるころです。あんまり国を勝たせ過ぎて国が図に乗ると、住民側の立場をとることもあります。  もう一つは、世論に敏感なところです。最高裁前でビラをまきますと、裁判官に情報が伝えられるということです。

 署名が提出されると、書記官から裁判官に、支援者や、署名数が報告されるということです。

 最高裁は原則として法廷を開きません。だから最高裁では、運動の節目がつくりにくい。工夫して節目をつくって最高裁の裁判官に私たちの声をつたえていくことが重要です。法律家は書面のおみやげを持って調査官に面会を求めます。みなさんが集めた署名のおみやげも持っていきます。

 最高裁で勝って、被爆者運動の新しい地平を築こうではありませんか。松谷裁判

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