「被団協」新聞−1998.10月号



藤平事務局長に聞く − 署名運動など 

 問い 「被団協」新聞に、「国会請願署名」「現行制度の緊急改善を求める署名」の2枚が折り込んでありました。これはどんな署名ですか。

 藤平 日本被団協はいま、核兵器のない21世紀をめざし、原爆被害への国家補償の実現を求める国民運動にとりくんでいます。この運動の柱にしているのが@国会請願署名、A自治体の首長・議長の賛同署名、B現行制度の緊急改善署名の3つの署名運動です。

 国会請願署名と首長・議長の賛同署名は、これまでもとりくんできたので説明をはぶきますが、2000年6月までに1,000万署名をめざしています。今年11月の中央行動には100万人分を出したいと考えています。

 緊急改善署名は今回初めて取り組むものです。今年8月から実施されている「健康管理手当の簡素化」手続きは、簡素化とは名ばかりで、かえって複雑になり全国で混乱を生じています。

 簡素化したのは、被爆者の高齢化病弱化で、自分の力で更新手続きをすることができなくなり、このため手当が打ち切られてしまったという例が増えてきたからです。

 それがかえって面倒になるのでは、被爆者は困ります。簡素化では限界があるのです。

 このため65歳以上の被爆者と、固定疾患をもっている被爆者には更新手続を廃止してくれという署名なのです。

 この署名は、被爆者とその家族を対象にして、全国で10万人の署名を集め、11月に政党・厚生省に提出する予定です。

 原爆松谷裁判の署名は

 問い 松谷裁判でも署名と上申書が呼びかけられていますが。

 藤平 原爆松谷裁判はいま最高裁判所で審理がおこなわれていますが、最高裁は、裁判所にたいする国民の請願はきちんと聞くといっています。だから「松谷英子さんをこれ以上苦しめないでください」という請願署名を出して、裁判官に国民の多くの願いを聞いてもらおうというのです。

 署名には、個人署名と団体署名があります。

 上申書にも、個人と団体署名があります。被爆の実相を裁判官に知ってもらうために、みんなの思いを上申書に書いて出しましょう。個人署名は当面百万人が目標です。

 国民運動募金は

 問い 国民運動募金の要請も新聞に折り込んでありましたが、これは何に使うのですか。

 藤平 日本被団協の財政は、会費と「被団協」新聞の収入と寄付によって支えられています。被爆の実相普及などの国民運動を広げるには、募金に頼るしかないのです。

 それにこの募金は、寄付した人が所属する地元の被団協にも半額還元されていますので、地元の活動資金にもなっています。募金の訴えは7月と12月にさせてもらうことになっています。中央と地方の被団協運動を支え発展させるため、募金にぜひご協力ください。  



 「誓い」「追悼」銘板に明記 − 広島・平和祈念館で最終報告

 広島、長崎に国が建設を予定している「原爆死没者追悼平和祈念館」の開設準備検討会の最終報告案が9月10日にまとまり、厚生大臣に提言として提出されることになりました。会には伊東壯委員も出席しました。

 最終報告では、この施設について「国が施設をつくるという点にもっとも大きな特色があり、当然そこには核兵器廃絶への努力を誓うという意義も含まれている」と評価し、「国でなければできない事業」を行なう必要があるとしています。

 広島の祈念館では、死没者や遺族などの手記、体験記などを収集し、主として「こころとことば」によって被爆の実相を伝えます。

 施設の名称には「国立」であることを明記し、設置理念を銘板にかかげます。碑文は別項。

 死没者名の刻名掲示は困難だとし、手形や人型で死没者の数を示す、その数は広島、長崎両市が国連に提出した推計値を使い、昭和20年末までの死者数、広島14万人、長崎7万人を示します。

 外国人と昭和21年以降の犠牲者については説明を加え、原爆被害の特殊性を明らかにすることにしています。

 遺族の申し出があれば死没者の氏名、写真・遺影を登録し、簡単な操作で検索できるシステムを設置し、閲覧に供します。  追悼空間のイメージも示されました。

 管理運営は国以外の機関が担当し、経費は全額国負担、入場料は無料、複写などは実費負担、開館日は年300日程度としています。

 広島の祈念館の碑文

 「原子爆弾死没者を心から追悼するとともに、その惨禍を語り継ぎ、広く内外へ伝え、歴史に学んで、核兵器のない平和な世界を築くことを誓います。  国立広島原爆死没者追悼平和祈念館

 長崎の祈念館の碑文

 「昭和20年(1945年)8月9日午前11時2分、長崎市に投下された原子爆弾は、一瞬にして都市を壊滅させ、幾多の尊い生命を奪った。たとえ一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない心と体の傷跡や放射線に起因する健康障害を残した。

 これらの犠牲と苦痛を重く受け止め、心から追悼の誠を捧げる。  原子爆弾による被害の実相を広く国の内外に伝え、永く後代まで語り継ぐとともに、歴史に学んで、核兵器のない恒久平和の世界を築くことを誓う。

                               国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 

 被爆者減が予算に反映 − 厚生省 99年度予算概算要求

 厚生省の来年度予算にたいする概算要求が8月末にまとまりました。

 今年の最大の特徴は、これまで増え続けていた被爆者対策費が、20億円減っていることです。 その内訳は、諸手当の減額分が約3億円、医療費の減額分が約16億円におよんでいます。

 被爆者数の急減が、ついに予算面にまで表れてきたのです。

 広島、長崎に建設する原爆死没者追悼平和祈念館関連予算は、両市分合計で41,200万円が計上されました。

 計画では、広島の祈念館は来年度は29,000万円で基礎工事、2000年度と2001年度の2年間に34億円かけて2001年完成。長崎の祈念館は、2000年着工で2003年完成を目指します。


 「平和像」運動に「サポーターの会」 − 高校生のアピールにこたえる大人たち

 「核兵器のない21世紀を青年たちの手でつくろう」との思いを込めて、高校生たちを中心に始まった「世界の子どもの平和像」運動を支える「サポーターの会」が、9月15日、東京・渋谷のウイメンズプラザで結成されました。

 会には、広島でアピールを出した大井赤亥くんら高校生平和ゼミナールのメンバーなども参加。「平和像」をつくる壮大な夢を語りました。

 サポーターの会は、こうした子どもたちの運動を物心両面で支え、世界中に非核の夢を広げていく大人たちの会です。会員には、藤平典日本被団協事務局長ら被爆者も多数参加しています。

会費は年間一口1,000円、事務所は東京都目黒区三田2−3−8 橋本左内さん。 


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