「被団協」新聞 1997.7月号より

日本被団協が第42回総会−43都道府県から130人参加

 日本被団協の第42回定期総会が、6月8、9の両日、東京・本郷のホテル機山館で行なわれました。

 総会には、43都道府県の代表ら130人が参加。7政党、8国会議員、10友誼団体と、韓国原爆被害者協会から祝辞祝電が寄せられました。

 総会で藤平典事務局長が提案し、採択された97年度運動方針は、「21世紀へ向けて日本の非核化、核兵器廃絶と原爆被害への国家補償の実現」を柱としています。

 核兵器なくせの運動が世界的に広がっている一方で、核保有国の核兵器に固執する姿勢は変わらず、新型核兵器の開発さえすすめられています。

 こうした情勢のなかで核兵器廃絶の運動を促進するために、被爆の実相を徹底的に普及していくことが確認されました。

 日本被団協が企画・制作した新しい原爆展パネル「原爆と人間展」を、全国津々浦々で開催するよう自治体や他団体に働きかけ、被爆者も積極的に参加して証言し、語りついでくれる若ものたちをつくっていくことが強調されました。

 原爆被害への国家補償の実現の課題では、国が死没者への償いを拒んでいる不当さを国民に知らせ、自治体首長・議長の賛同署名を積み上げていくこと、当面、長崎原爆松谷訴訟の勝利に向かって全力を挙げることにしました。

 「私たちをとりまく状況」と96年度の活動報告をしたのは、小西悟事務局次長でした。この1年に核兵器廃絶への世界世論が大きく盛り上がったことについて「『ノーモアヒバクシャ』をひとすじに訴えつづけてきた40年を超える私たちの運動は確実に実を結びはじめました。歴史の歯車は、確実に前へ向かって動いています」と、確信を込めて報告しました。

 そして、日本政府について、「原爆投下を『国際法違反』といわない日本政府だからこそ、原爆被害への国家補償を拒みつづけているのだ、原爆被害への『受忍』を押しつけているのだということが鮮明になってきた」とのべました。

 この1年の日本被団協活動については、国際司法裁判所の「勧告的意見」を学習し確信を深めたこと。ニュージーランドやアメリカへの遊説が実相普及に大きな役割を果たしたこと。総選挙でのアンケートが、援護法を改正する運動の足がかりをつくったこと。自治体首長・議長の賛同署名獲得で東海ブロックがきわだった活動をしたこと。インターネットのホームページが、これまで日本被団協と係わりのなかった層へ影響を与えていることなどを報告しました。

 2日目の冒頭に、長崎原爆松谷訴訟の原告・松谷英子さんが挨拶、最後までたたかう決意と、福岡高裁への公正判決要請への支援を訴えました。- 松谷訴訟結審

 活動報告案と決算案、運動方針案と予算案には34人の質疑・討論があり、決議案を含め全会一致で採択されました。

 総会第1日が閉会後、参加者による懇親会が開かれました。各ブロックごとに参加者の紹介や合唱・独演の余興を披露。料理のテーブルを一周する「東京音頭」と「大阪音頭」のおどりの競演、全員参加の「炭坑節」のおどりもあり、大いに盛り上がりました。

 「活動報告案」を補足して、伊東壯代表委員が、「原爆死没者追悼平和祈念館」開設の検討経過を報告しました。

 建設場所、施設計画が示され、開設の理念については広島市長案が出されていること。死没者の銘板については、日本被団協は全犠牲者を対象とすべきだと主張しているが、プライバシーを理由に反対意見があって調整がすんでいないこと。厚生省は近く中間報告を出したいといっていることなどを報告しました。

 「活動報告案」の補足報告として、「95年被爆者調査」の第一次報告が田中煕巳前調査委員長からなされました。

 「被団協」新聞3月号にはこの中間報告が紹介されていますが、被爆距離が4キロの人にも、脱毛があったことが明らかにされ、注目されました。

 今度の解析では、原爆ぶらぶら病があったと答えた人が、全回答者の3分の1もあること、その内訳も、急性症状を経験した人がぶらぶら病経験者の84%を占めていることが注目されました。

 現在の暮らしでは、独り住まいが長崎の17%を最高に、東京16%、近畿ブロック14%、大阪、福岡10%と、被爆地と大都会に多いことも分かりました。

 困ったときの相談相手では、15%が「いない」と答え、寝たきりになっても相談相手がいない人が43人いました。

 調査委員会では、さらに多角的に検討し完成させることにしています。

   総会の翌10日、日本被団協は、総会参加者と首都圏被団協の被爆者ら45人で、政府・国会要請行動を、新役員の挨拶をかねて行ないました。( 新役員の紹介

 厚生大臣と衆参両院厚生委員には、@特別葬祭給付金の請求期限の延長、A健康管理手当の簡素化、B在外被爆者への法の適用、C福祉事業の具体化、 D被爆者援護法を国家補償の法律に改正せよ−と要請しました。 

 外務大臣と衆参両院外務委員への要請は、@アメリカにたいし未臨界核実験の中止を迫ること、Aアメリカに核兵器廃絶国際条約の締結を迫ること、Bすべての核兵器廃絶のためのイニシアチブをとること、C原爆被害の実相を国際的に知らせるため、原爆展を国の責任で開催すること−の四項目を要求しました。


核兵器のない21世紀への祈り込め−吉永小百合さん、朗読CD発売−

 原爆詩の朗読で構成した吉永小百合さんのCD「第二楽章」が完成、6月23日、朗読会が東京・銀座の山野楽器ホールで行なわれました。

 テレビカメラが7台、記者たちが100人近く詰めかけた会場で、吉永さんは、峠三吉の「ちちをかえせ ははをかえせ」の詩から、「お母ちゃんの骨はさびしい味がする」とうたった林幸子の「ヒロシマの空」、栗原貞子の「生ましめんかな」、子どもたちの詩4編を、静かな口調で、情感込めて朗読しました。

 吉永さんは、日本にしかない原爆詩を、何とか若い人たちに伝えることができないかと、当初は自費出版も考えたといいます。ビクターの話が決まってから2年がかりで600編の詩を読み、12編を選びました。有名な詩もありますが、作者の生死も住所もわからない作品も選ばれています。

 吉永さんはいいます。「核兵器のない、平和な21世紀を願って、祈るような思いで朗読しました。1人静かに聞いてもらって、心のどこかに残してもらえればいいと思います」と。

 発売元はビクターエンタテイメント。税込みで2,940円。全国のレコード店にあります。


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