「被団協」新聞 2004年5月

主な内容(全8面)
1面 東裁判厚生労働省が控訴 がんばれ被爆者 
2〜3面 東裁判判決について証言者・弁護士の声 NPT準備委員会に代表団派遣  「核かくしかじか」 
4〜5面 集団訴訟の動き 提訴から1年
6面 第10回被爆者問題研究会開かれる 2005年国際市民会議について 
7面 コスタリカで被爆証言
8面 「相談のまど-原爆の認定書は治癒で返還」 平成15年度中央相談所事業について


東裁判 厚生労働省が控訴

 東数男さんの原爆症認定裁判で国は4月12日、東さんの訴えをみとめた東京地裁判決を不服として、控訴を強行しました。
 日本被団協など4団体は同日声明を発表。75歳の高齢で控訴審に耐えるのも心配な東さんが必死で求めた大臣面会を拒否して控訴したことは「暴挙であり、被爆者の生命と健康を軽視する姿勢を示す」と強く抗議しました。
 3月31日の判決後東京の支援組織「おりづるネット」など幅広い団体や個人が立ち上がり、国の控訴断念を求める行動を連日展開しました。
 厚労省前では、「ピースバード」の若者を中心にランチタイムアクションが毎日つづけられ、国会前座り込みや有楽町マリオン前で宣伝行動も。
 1日の国会要請には被爆者60人(首都圏ふくむ)に全国弁護団も参加、衆参両院の厚生労働委員など80人に働きかけました。これを受け8日の参院厚労委では井上美代(共産党)福島瑞穂(社民党)両議員が質問で大臣に東さん面会と控訴断念を要求。大臣は東さんの名の読み方も知らず、判決を読んだと思えないトンチンカンな答弁で要求を拒否、怒りをかいました。
 この連日の行動に参加した被爆者はのべ750人。配ったビラ1万5000枚、ジョー・オダネルさんの写真「焼き場の少年」ポスター200枚、ポストカード3000枚が普及活用されています。画期的な大闘争は、完全勝利の地裁判決内容とともに、被爆者支援の世論を広げ、全国でたたかわれている原爆症認定集団訴訟に大きな励ましを与えるものとなりました。

「被爆60年―がんばれ被爆者」
 まもなく被爆60年。高齢化し、なお集団訴訟運動をすすめる被爆者に各界の方が励ましを贈ります。第1回は映画監督の新藤兼人さんです。

 国の威信をかけて国はすすんで被爆者を守れ  新藤兼人(映画監督)

 被爆者手帳をもっているのに病気が原爆症と認められない、それで裁判になったと聞き、とてもふしぎに思います。
 原爆は残虐で非人道的な兵器であり、被害も特別です。放射能を受けどんな病気になるかわからない被爆者を守らなくてはならない。だから手帳を出すんでしょう。「あなたは被爆者」と認め手帳を交付した瞬間、責任が国に生じると思います。私は国に、「原爆症と認定しないなら、それではなぜ手帳を支給したのか」と聞いてみたいですね。
 これは国家の威信にかかわる問題です。遺骨の収集、残留孤児の救済もそうですが、国は、要求されるまでもなく、みずから進んで、「被爆者はまだいませんか、保護に洩れはありませんか」と最後の1人まで探し出して救済するのが本来です。そうしてこそ私たち国民は国を信頼し、国家は世界に威信をもつのです。
 私は、原爆投下の1秒間に何が起きたかを描く映画を計画しています。広島・長崎で何万人死んだといっても、数字で原爆はわかりません。
 映画で広島を再現して、壊したい。ものすごい熱に焼かれ、だれをうらむかを考えるひまもなく死んでいく人間を描くつもりです。原爆はいったい何をしたのか、映画でこそ伝えられる。人類を滅ぼす核兵器はあってはならないことを、全世界の人に見せたい。
 私も広島生まれ、看護婦の姉は尾道から救援に入り被爆しました。私としては死ぬまでにどうしても撮りたい作品です。
 原爆では多くの方が慰めてもらうこともなく亡くなりました。被爆者のみなさんは、その人たちの代表として生き残っておられる。どうかお元気でがんばってください。

集団訴訟の動き 提訴から1年
 原爆症認定集団訴訟は昨年4月の提訴から1年を経過しました。運動は全国各地に広がり、4月には「集団訴訟運動を支援する全国連絡会」も結成されました。各地の裁判のうごきとともに、広島、長崎、熊本から寄せられた原稿をご紹介します。

(支援する会結成の記事)
 「支援する全国ネット」発足
 東京・日本青年館で4月11日、「原爆症認定集団訴訟を支援する全国連絡会」結成の会が開かれました。
 集まったのは中央団体や各地の支援組織の代表など85人。日本被団協代表委員の藤平典さんが「集団訴訟に国民の声を結集しよう」とあいさつ、事務局次長の岩佐幹三さんが経過報告しました。
 つづいて、竹内英一郎弁護士が「東裁判判決と集団訴訟」のテーマで講演。「訴えが裁判所に届いたことに確信をもち集団訴訟に生かそう」と訴えました。
 各地の支援組織がそれぞれの地域での裁判の状況や活動を報告し、「聞きとり・語りつたえ運動」にとりくんでいる東京・北区や千葉から取り組みの紹介も。弁護団からは各地の裁判の進行状況や今後の問題について説明を聞きました。
 討議では、連絡会が全国の交流・情報交換の場なのか、運動を全国展開する機関なのか、その性格付けをめぐって活発に意見交換。これらの討議をふまえて、関係団体と協議し、整理・調整することを前提に、支援組織を立ち上げました。
 その後、関係者や関係団体と意見交換を重ね、被爆者援護の国民世論を喚起し、全国的な支援運動を促進させ、各地の運動交流をはかる組織として、名称を「原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク」(略称・全国ネット)とすることが確認されています。
 「全国ネット」は、各県の支援する会や準備会、集団訴訟運動を支持する団体・個人で構成。日本被団協および賛同団体で「運営事務局」を設けて運営し、団体・個人による会合や全国の支援組織の交流会などを開催していくことにしています。
 「全国ネット」の連絡先は日本被団協です。

今後の裁判日程
 5月7日 大坂地裁  5月13日 鹿児島提訴  5月19日 広島地裁  
 6月4日 静岡地裁  6月8日 仙台地裁    6月14日 札幌地裁  6月17日 名古屋地裁  6月18日 熊本地裁

全国からの相談に対応  平成15年度事業を終えて (社)被爆者中央相談所  
 
 被爆者の高齢化が一層すすむ中、平成15年度被爆者中央相談所の事業は、被爆者相談110番事業、地方相談指導事業、相談事業講習会、相談員研修会の4つの事業を中心に事業を行われました。 これらの事業は、日本自転車振興会の競輪補助金によって行なわれました。
1、被爆者相談110番事業
 全国の被爆者、家族、関係機関などからの相談に、医師、ソーシャルワーカー、弁護士が応じました。
 原爆症認定申請、被爆者健康手帳の申請、健康管理手当の更新、介護に関する相談等が寄せられました。
2、地方相談指導事業 
 被爆者のしおりの発行、専門員による指導、5地区での指導事業が行なわれました。
3、相談事業講習会
 全国8地区で相談事業講習会を開催しました。
4、全国相談員研修会
 高齢化した被爆者の健康不安に対応するため、医師から「高齢者が注意するべきこと」などの研修を受けました。
 
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