「被団協」291号 2003年4月

主な内容
1面 イラク攻撃開始に被爆者が抗議 集団訴訟運動に支持・賛同
2面 原爆症認定集団訴訟運動第4次申請  在外被爆者裁判    「核かくしかじか」  
3面 都道府県だより-各地でイラク攻撃反対行動  被爆者・青年往復トーク
4面 「相談のまど」-被爆者の諸手当について 相談所事業について


米英のイラク攻撃開始に被爆者が抗議 「私たちのような被害者をつくるな」

 アメリカのイラク攻撃開始にたいし、被爆者は言い知れぬ悲しみと怒りをいだき、全国各地で抗議の行動にとりくんでいます。【関連3面】

抗議の座り込みに700人――広島

 アメリカがイラク攻撃を開始した3月20日、広島県被団協(藤川一人理事長)は、この暴挙に抗議して、広島県原水禁、広島県平和運動センターと原爆ドーム前で座り込みを行ないました。
 座り込みは正午から午後7時までの7時間におよび、昼休みや仕事帰りの労働者、原爆ドーム前でハンガーストライキををしていた学生、修学旅行で来ていた高校生や外国人の観光客などが次々に参加。のべ700人が行動に参加しました。
 広島県被団協の坪井直事務局長(日本被団協代表委員)は、「アメリカにイラクを攻撃する資格はない。原爆の惨禍を知る者として、戦争は絶対に容認できない」と訴えました。
 これまで、攻撃反対を訴えてきた私たちにとってアメリカの戦争行為は残念でなりませんが、しかし、ここで落胆するのではなく、核兵器の使用を許さず、戦争止めよ、核兵器なくせを訴えてゆきたいと思います。(清政文雄)

心はひとつ「戦争やめよ」―雨のなかで行動

 日本被団協は、戦争開始の報を受けただちに抗議の声明を発表。25日に東京、千葉など首都圏の被爆者を中心に、渋谷駅前で街頭宣伝行動を行ないました。
 雨の降りしきるなか、被爆者のほかに支援者らが駆けつけ、60人が参加。「原爆と人間展」パネルをかかげ、戦火の下の自分の体験を語りながら被爆者がつぎつぎに訴えました。
 行動には、飛び入りでビラまきに協力してくれた若者、被爆者の父とともに参加した二世の姿もありました。
 「インターネットで見て知った」と母親といっしょに参加した八歳の男の子は「ぼくは戦争はいやです。やめてください」と発言し、大きな拍手を受けました。
 行動のあと、二班に分かれて米・英両大使館に抗議文を届けました。



原爆症認定集団訴訟運動 

各界の著名人から支持・賛同が寄せられる

 集団訴訟の第一次提訴が迫るなか、被団協のよびかけにこたえ、運動への支持・賛同が寄せられています。
 2月に要請し3月28日までに寄せられた個人・団体は431。個人には大江健三郎(作家)、上條恒彦(歌手)、外山雄三(音楽家)、千葉正子(医師)、松井康浩(弁護士)、堀孝彦(名古屋学院大学名誉教授)、舟橋喜恵(広島大学名誉教授)、中川作一(法政大学名誉教授)、中鉢正美(慶応大学名誉教授)、小川政亮(社会保障法)、増田善信(気象学)、毛利子来(小児科医)、中島篤之助(元中央大学教授)、福家俊明(三井寺長吏)、肥田泰(全日本民医連会長)、安斎育郎(立命館大学国際平和ミュージアム館長)、武田隆雄(日本山妙法寺僧侶)など各界の著名各氏がふくまれています。
 また、「1945・8・15以前に生まれた日本人は天皇家を含め、いまも生き続けています。だからこそ、原爆症で苦しむ人のことは日本人全部の問題です」小山内美江子さん(脚本家)、「亡くなってから2年たって何が認定なのか! 57年たっていまだに人道的でない切り捨て! 悲しみと怒りと唯一の被爆国の人間として恥ずかしいと思っております。多くの人々に知って欲しいです」中村梅之助さん(俳優)などのメッセージが添えられています。

第4次いっせい申請

 3月6日、原爆症認定の第4次いっせい申請が行なわれ、14都道県から29人が申請しました。
 昨年7月の1次いっせい申請から252人が申請したことになります。いっせい申請以外でも244人が申請をしており、これまでに全国33都道府県で申請運動がとりくまれています。
 第1次、2次の申請者については、多くの申請に早々と却下決定が出されています。いっこうに現行の認定審査方針を変えようとしない厚生労働省の冷たい被爆者援護行政がつづいています。

第1次提訴 甲斐さんら決意

 平成9(1997)年1月に原爆症の認定申請を行ない、6月に却下され、異議申立てを行なっていた愛知県の甲斐昭さん(本紙290号「人生かけて」参照)に、今年1月厚生労働大臣は異議申立ての棄却を決定しました。これに対し。甲斐さんは提訴を決意。4月中旬に名古屋地裁に提訴する予定です。
 長崎でも同様に異議申立てが棄却された被爆者が4月中の提訴を決意。さらに2人がいっしょに提訴する予定です。また、札幌地裁で前立腺ガンで裁判を行なっている安井晃一さんは、新たに申請した皮膚がんが却下されたため、追加提訴を決意。他にも2人の提訴が予定されています。



在外被爆者裁判 広瀬さん勝訴

 出国を理由に健康管理手当を打ち切ったのは不当として、長崎市の日本人被爆者・広瀬方人さん(73)が国と長崎市を相手に受給資格の確認などを求めていた裁判で、長崎地裁(川久保裁判長)は3月19日、広瀬さんの訴えを認める判決を言い渡しました。
 判決は、「出国しても被爆者の地位を失わない」というこれまでの在外被爆者裁判の司法判断をふまえ、会計法や地方自治法を理由に「5年以内」という支給の有効期限を過ぎて提訴したとの国側の主張については、「国が手当について消滅時効を主張することは権利の乱用として許されない」と退けました。
 広瀬さんは1994年に10ヵ月間、日本語教師として中国に滞在。その間の手当打切りにたいして、2001年9月に提訴していました。
 国は27日、判決を不服とし控訴しました。

李在錫さんも勝訴
 3月20日には、離日後の特別手当支給打ち切りは違法として、国と大阪府に支給継続を求めていた韓国人被爆者・李在錫さん(70)の裁判で、大阪地裁(山下郁夫裁判長)は、李さんの訴えを認め、国に特別手当て支給を命る判決を言い渡しました。



介護、原爆症の相談なお多く  平成14年度事業を終えて (社)被爆者中央相談所

 公益法人として発足してちょうど25年目を迎えた被爆者中央相談所は、平成14年度被爆者相談110番事業、地方相談指導事業、相談事業講習会、相談員研修会の4事業を中心に事業を行いました。
1、被爆者相談110番事業
 全国の被爆者やその家族から電話、手紙、来訪、メールなどで相談が寄せられ、医師、ソーシャルワーカー、弁護士が相談に応じました。相談は生活、健康、法律の活用など多岐にわたりました。中でも介護保険サービスや原爆症の認定申請に関する相談が多く寄せられました。
2、地方相談指導事業 
 被爆者のしおりを発行し全国の被爆者世帯の配布しました。地方での指導事業は静岡県、鹿児島県、岡山県、千葉県、熊本県の5カ所で実施しました。
3、相談事業講習会
 北海道、青森県、茨城県、富山県、和歌山県、岡山県、香川県、福岡県の8地区で開催しました。
4、相談員研修会
 原爆症認定申請について、医師、弁護士、ソーシャルワーカーから研修を受けました。
 
 これら4事業は、日本自転車振興会の競輪補助金によって実施されました。 

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