「被団協」280号  2002年5月

主な内容
1面 集団訴訟について 被爆者−青年往復トーク 
2面  NPT再検討会議準備委員会   ブラジルの被爆者も提訴
3面 若者「親善大使」のアメリカリポート  米・ブッシュ大統領への要請はがき運動  
4面 「相談のまど−長崎の被爆地域拡大」


集団訴訟−東海・北陸ブロックで学習会

 4月20日、日本被団協東海・北陸ブロックの「原爆症認定申請・集団訴訟についての学習会」が名古屋市内で開かれ、ブロック7県から60人を超える被爆者、医師、ソーシャルワーカー、支援者が参加しました。
 東海・北陸ブロックでは、今年2月のブロック会議で集団訴訟運動に取り組むことを決定。各県が「認定申請のための調査票」を被爆者に送り、対象者発掘などの取り組みを進めています。
 会議では、日本被団協の岩佐幹三事務局次長・集団訴訟推進委員長が「今なぜ集団訴訟なのか」と問題提起。被爆者が意思を固め、まわりに法律家や医師、科学者、支援者を結集し、国民に訴える大きな運動にしていこうと呼びかけました。
 沢田昭二名古屋大学名誉教授は、厚生労働省が認定基準としている「原因確率」(寄与リスクともいう)の誤りや「黒い雨、放射性降下物、残留放射線による体外被曝、放射能を含んだ食べ物などによる体内被曝をまったく考慮していない」ことなど、現行の認定のあり方を批判しました。
 宮原哲朗弁護士は、「松谷、京都と二つの裁判の勝利に被爆者は希望を見た。しかし国は姿勢を変えなかった。そこで集団で裁判をおこし、被爆者援護行政を変えようというのが集団訴訟運動」と意義を語り、伊藤直子中央相談所相談員は、原爆症の「認定申請」について報告しました。
 これを受け、参加者から質問や意見が次々と出されました。
 現在意義申立てをしている愛知県の甲斐昭さんは、「入市被爆のためか甲状腺悪性リンパ腫で却下された。意義申立てがだめだったら裁判で死ぬまでがんばる」と決意。静岡県の荻沢さんも、「7年前に胃ガンで3分の1を切除したが、その時は3km被爆なのでダメだと思い認定申請はしなかった。昨年食道と肺にガンが見つかり、脳にも転移していた。治療の効あり今脳の腫瘍は消えている。集団訴訟運動は原点を追及する運動。アメリカの核にやられた日本が、今有事法制で核の加害国になろうとしている。被爆者の生きた証としてがんばりたい」と決意を述べていました。



NPT再検討会議準備委員会で要請

 日本被団協は国連NGOに正式登録後初めて、4月8日から18日まで国連本部で開かれたNPT(核不拡散条約)再検討会議準備委員会に対する働きかけのため、4月6日から14日まで小西悟事務局次長をニューヨークに派遣しました。以下はその報告です。
*  *  *
 NPT準備委員会参加の187カ国代表に、米国による核兵器使用の企みをやめさせ「核兵器廃絶の明確な約束」を実行するよう、被爆者の願いを強く働きかけることを目的に訪米。合わせて、9〜10月の国連本部での原爆展開催について、国連軍縮局広報部およびNGO(非政府組織)軍縮委員会との意思疎通を図りました。
 7日午後、参加した各NGOが協力して「作戦会議」。来年のNPT準備会議への議長報告案は米、英、仏の抵抗で難航している、各国代表に面会してNGOの要望を伝えよう――と話し合い、行動を開始しました。
 NGOの意見書を187カ国代表に渡すため、国別の封筒に入れる作業が行われ、私は日本被団協の資料(各国代表への要請書、ブッシュ大統領への要求書、21世紀被爆者宣言など5点)をすべての封筒に入れました。それからは連日、会議、要請、訪問、電話連絡と、目まぐるしい活動の1週間でした。
 8日午後、NPT会議準備委員会が始まると、被団協の要請書も入ったNGOの封筒が、二日のうちに全代表たちの手に渡りました。
 会議の合間にサランダー議長(スウェーデン大使)、ダナパラ国連軍縮担当事務次長と面談。両氏から「被爆者の訴えには大きな意義がある」と激励を受けました。
 原爆展については、国連軍縮局のカサンドラ広報部長、NGO軍縮委員会のニコルズ会長と数時間懇談し、被団協が主催者となって成功させることを意志統一しました。
 国連NGOに加盟後初の国際活動は手ごたえ十分でした。(小西悟)



ブラジルの被爆者ら新たに提訴

 在外被爆者の実態を調査するため3月25日から4月5日まで、ブラジルと米国を訪問した田村和之広島大学教授と足立修一弁護士が、帰国後その結果を記者会見で発表しました。
 それによると、ブラジル・米国ともに在外被爆者は高齢化しており、医療面での要望が非常に高くなっていること、しかし日本政府が今年度から実施する「在外被爆者支援策」は「渡日」を前提にしており、高齢化したり、医療を要する状態になった在外被爆者にとってはそれ自体が負担になること――などが報告され、現地で日本と同様の医療が受けられるよう、医療費の給付などが必要と指摘しました。
 ブラジルのサンパウロ市では、懇談した被爆者たちから「日本政府の支援策に失望した」との声も強く、少なくとも7人の被爆者が、3月1日に広島地裁に提訴した在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長につづいて提訴したい意向を表明しました。
 森田さんの第1回口頭弁論は、5月9日に広島地裁で開かれます。

米国の被爆者も声明

 米国原爆被爆者協会は4月12日、日本政府の「在外被爆者の援護に関する当面の対応」に対する要請書を出しました。
 これによると、日本政府が決めた在外被爆者への支援策に「本当に落胆」したとし、渡日を前提にした施策は高齢化・病弱化した在外被爆者の実態に合わないと指摘。在外公館(大使館、領事館など)を通じた現地での援護施策を要求しています。要請書は、「本当に被爆者を助ける施策を出して下さい。心からお願い致します」と結んでいます。



米・ブッシュ大統領への要請はがき運動
 
 「つたえよう ヒロシマ ナガサキ」が、米ブッシュ大統領に「核兵器を使うな、核兵器をなくせ」の声を届けるハガキ運動を提起し、カラーチラシを兼ねた英文ハガキを作成。70円切手を貼るだけで送れます。
▼1枚20円(送料別)/日本被団協まで。

このページのトップへ


戻る