「被団協」276号  2002年1月

主な内容
1面 新春座談会-これからの被爆者運動をになう”若い被爆者”たち  
2面 在外被爆者検討会  米の臨界前核実験に抗議   「核かくしかじか」
3面  米と国連に要請団  
4、5面 座談会続き
7面 被爆者中央相談所講習会報告 読者からのたより
8面 「相談のまど」

現行法は適用せず 在外被爆者検討会の報告受け

 海外に住む被爆者への援護をどうするかで検討をすすめていた、厚生労働大臣主宰の「在外被爆者に関する検討会」は12月10日、報告書を大臣に提出しました。
 報告書は、委員の共通認識として「人道上の見地から、その居住地によって援護の程度の差をみることは不合理であるから、何らかの施策を講ずべきである」としたものの、具体的な措置について意見はまとまらず、委員の意見を並列し「適切かつ早急な施策を実現されるよう」求めるものにとどまりました。
 報告の順序も、現行の援護法によって外国居住者に金銭給付するのは不適切とまず枠をはめ、法律以外の方法として「基金による個人給付」「自治体との役割分担」「渡日治療支援」などの提案を併記しました。
 この報告を受けた厚生労働省は、「当面の対応」と含みをもたせつつ、被爆者健康手帳が日本国内でのみ有効であることを明記する等の法令上の整備を行なうと表明。概ね3年以内にすべての在外被爆者が来日して被爆者健康手帳の発行を受けることができること、健康上の理由から渡日できない者にたいしても申請に基づき被爆の事実認定を行なうとして、来日を希望する者に受け入れや行政機関との連絡調整、医療機関のあっせん、各種手続きの相談、経済的理由で来日が困難な者への旅費等の補助などの具体策を示しています。
 しかし、来日して手帳をとっても、けっきょくは日本に在住しないと各種の援護施策が受けられないことは従来と変わっていません。


米の15回目の臨界前核実験に各地で抗議

 米エネルギー省は12月12日(日本時間)、通算15回目の臨界前核実験の実施計画を発表。14日(同)にこれを強行しました。
 日本被団協は、ただちに 抗議・要請文 を米ブッシュ大統領あてに送付しました。
 また、秋田、宮城、東京、山梨、長野、愛知、三重などの各県が独自に抗議文送付や抗議行動を行ないました。
 長崎では平和祈念像前で座り込みも行ない、奈良ではABM条約脱退について併せて抗議しました。(12月17日までに日本被団協に連絡のあったもの)


日本被団協が米国と国連に要請団を派遣

 昨年6月の日本被団協総会で提起された核保有国への被爆者要請団派遣の第一陣が、12月3日から13日までアメリカを訪問。被爆者が直に米政府や国連に要請し、米国の平和運動、各種NGO組織との交流を深める行動となりました。
 訪米要請団は、小西悟日本被団協事務局次長を団長に、山田拓民さん(長崎被災協事務局長)、北島滋子さん(東京・東友会)の三人がチームを組んで出発しました。

米国務省へ被爆者が公式訪問
 ワシントン到着後、5日午前、要請団は米国務省を訪問。対応した同省軍備管理室日本部のグローモル参事官(防衛・核政策の専門家)と1時間あまり会談しました。
 要請団は、ブッシュ大統領あての要請書を手渡し、報復戦争をただちに止めること、核兵器廃絶の「明確な約束」を実行に移すこと、宇宙核戦争を招くおそれのある「ミサイル防衛計画」のとりやめなど、厳しく要求。グローモル氏は、「米国は核兵器の大幅削減に努力している。ミサイル防衛計画は、北朝鮮などのミサイルから日本を守るためにも必要」と核抑止政策を強調しましたが、要請書を大統領に届けると約束しました。
 国務省訪問のあと、米国最大の平和団体「ピース・アクション」本部でケビン・マーチン事務局長と懇談。同氏は、「全米の草の根で報復戦争反対の運動がある。とくに大学生の活動が活発だ」と語りました。ピース・アクションと日本被団協の連絡の強化を確認し合いました。
 また、反核の立場をもっとも鮮明にしている民主党のクセニッチ下院議員の事務所を訪問し、米国にいる核被害者救済の問題を議会で取り上げるなど、議員の尽力を要請しました。

米の平和運動、NGO組織と交流
 6日には、ボストンへ移動。ブランダイス大学やタフツ大学での集会など、連日開かれている市民の平和集会に参加して被爆体験を語り、核兵器廃絶を訴え、おおいに交流しました。
 9日からはニューヨークへ移動。婦人国際平和自由連盟、世界宗教者平和会議などの国際的なNGO組織を表敬訪問。非同盟諸国の先頭に立って核兵器廃絶の国連決議案を出しているマレーシア代表部をも訪問し、大使と懇談しました。
 11日、日本政府代表部を訪問して山本広行参事官と面談した後、国連広報局NGO担当責任者のポール・ホッファー氏に、手続き待ちの日本被団協のNGO登録を急いで欲しい旨を要請。引き続き、NGO軍縮委員会議長のバーノン・ニコルズ氏と2時間にわたって懇談しました。

国連軍縮局でかたい握手
 12日、今回の訪米の重要な目的のひとつである国連軍縮局を訪問。同局情報部のマイケル・カサンドラ部長が要請団を迎えてくれ、要請書をじっくり読んだあと「被爆者の働きは世界平和にとってたいへん貴重なものだ」と、要請団の一人ひとりの手を取って握手し、アナン事務総長に要請書を手渡すことを約束してくれました。
 会談後、今春に予定されている国連内での原爆展の会場下見、展示物の点検などに立ち会い、被爆者の果たさなければならない役割の重要さをしみじみと感じました。(小西) 

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