「被団協」新聞 2001.5月

主な内容
1面 「緊急改善」求め中央行動  
2面  在外被爆者にも法適用を   原爆症認定の新基準協議  非核の世紀を-北林谷栄 核かくしかじか
3面  東、安井原爆裁判  各地の行動(岐阜、東京、神奈川−6月17日まで丸木美術館で被爆者の詞画展)
4面 相談のまど


「緊急改善」求め4月行動

  日本被団協の4月行動が、9日、10日の両日、衆議院第2議員会館を会場に行なわれました。
 9日には、「核兵器廃絶、原爆被害への国家補償、緊急要求の実現をめざす決起集会」が、全国の被爆者120人の参加で開かれました。
  田中煕巳事務局長が基調報告。原爆症認定制度の抜本改善について内藤雅義弁護士と伊藤直子相談員。原爆死没者の遺影収集について岩佐幹三事務局次長。在外被爆者問題について山本英典事務局次長が、それぞれ報告しました。
 集会では、原爆症認定申請が370件余も滞留していることに強い怒りが出され、在外被爆者問題で国会議員の懇談会ができることに期待の声が出ていました。
 日本被団協は、この行動で「原爆症認定制度の抜本的改善を求める要請」を発表しました。審査の遅れで相次いでいる死後認定を是正するため「疑わしきは認定せよ」「主治医の意見を尊重すること」「審議の迅速化」などが主な内容です。
 この要請を中心に、9日夕には坂口力厚生労働大臣に。10日には、厚生労働省要請、民主、共産、社民各党と衆参の厚生労働委員への要請が行なわれました。

坂口康生労働大臣に要請
 坂口力厚生労働大臣への要請が4月9日夕刻ありました。三重県被団協・嶋岡会長の要請に応えたもので、在外被爆者問題の解決、原爆症認定制度の抜本的改善問題で懇談しました。
 大臣は、3月16日の衆院厚生労働委員会で、在外被爆者問題での質問(中川智子議員)に「検討する」と答えたこと、原爆症認定問題では「科学的かつ迅速にですね」などとのべ、被爆者行政の改善への努力を約束しました。

民主、公明、共産、社民の各党と懇談
 政党要請で、民主党は金田誠一ネクストキャビネット厚生労働大臣が対応。在外被爆者問題の議員懇談会をつくる呼びかけ人になっていること、党内に被爆者問題のチームをつくって積極的に取り上げていきたいなどと答えました。
 共産党は木島日出夫、小沢和秋両衆院議員と小池晃参院議員が対応。
 原爆症認定の遅れにはすぐ対処すると、残留放射線被害を重視しているアメリカの被ばく軍人補償法の経験は生かすように努力すると約束。
 社民党は、中川智子衆院議員と藤田党市民委員会事務局長が対応。在外被爆者問題で二度、国会質問をしたこと、現行施策で改善すべきことは必ず取り上げる。超党派で被爆者問題に対処すると約束しました。
 公明党への要請は、4月24日となり、党市民活動委員会の山田修生部長が対応しました。

厚生労働省へ要請
 厚生労働省への要請は、4月10日午後、約1時間行なわれました。省側は、平成13年度予算で被爆者対策費が増えていることをあげて省側の努力を説明しました。
 被団協からは、原爆症認定作業が遅れて、異議申請から五年も放置されている例などをあげて「人道問題だ」と追及。「認定できるかどうか疑わしいときはまず認定せよ」と要求しました。
 広島、長崎なみの福祉事業が11都県で始まりましたが、福祉系サービスの利用料が立て替え払いをしてあとで還付をうける方式になっていて、その還付手続きが高齢者にむずかしすぎるため、一日も早く改善をと要請しました。



在外被爆者にも法適用を

 外国に住んでいる被爆者にも、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」を平等に適用させよう−−ということで、超党派の「在外被爆者に援護法適用を実現させる議員懇談会」が4月19日発足しました。
 会場の衆議院第2議員会館第1会議室には、国会議員16人、議員代理人の秘書ら18人、日本被団協と東京、神奈川の被爆者、支援団体員など60人が参集。
 韓国から、この日のために2人の被爆者が渡日しました。厚生労働省からも健康局総務課の課長補佐ら4人が傍聴。
 この会の呼びかけ人は6党8人の議員。あいさつに立った議員たちは、口ぐちに「法律には国籍条項も、居住地条件も、失権条項もないのに、外国にいるというだけで法の適用から除外されることはおかしい」とのべ、「差別のない21世紀にしたい」「責任を持ってこの理不尽を解決したい」などと意気込みを語りました。
 韓国の被爆者・金分順さんと李一守さんは、広島で被爆したときの苦しみと悲しみ、韓国に帰ってからも生活苦と偏見と差別のなかで「真っ黒な世の中に生きてきた」と涙して語り、「韓国の被爆者も同じ被爆者。私たちを見捨てないでください」と訴えました。
 支援団体を代表して、「韓国の原爆被爆者を救援する市民の会」の市場淳子会長があいさつ。
 懇談会は、呼びかけ人8人を世話人とし、金子哲夫議員が事務局長となって運営。当面は在外被爆者の実態調査、局長通達で排除された経緯などを調べ、早期に解決をはかることにしました。

出席した国会議員 (順不同、敬称略)
民主党=金田誠一、山井和則、今井潔(参院)
公明党=斉藤鉄夫
共産党=中林よし子、瀬古由起子
社民党=金子哲夫、日森文尋、山内恵子、中川智子、今川正美、山口わか子、菅野哲雄、横光克彦
無所属=黒岩秩子
秘書、代理人
自民党=谷畑孝、河野太郎、宮沢洋一、田村憲久
民主党=田並胤明、田中甲、中村哲治、竹村泰子(参)、菅川健二(参)
公明党=海野義孝(参)
自由党=佐藤公治
共産党=小沢和秋、小池晃(参)
社民党=植田むねのり、葉山峻、北川れい子、山本正和(参)



原爆症認定の新基準を協議
 
 厚生労働省は4月16日、疾病・障害認定審査会の被爆者医療分科会を開き、原爆症認定についての新しい審査方針を協議しました。
 これは、昨年の原爆松谷裁判での最高裁判決、京都高安裁判での大阪高裁判決で、これまで厚生労働省が認定の基準としてきたDS86に疑問が投げかけられため、「より適正に認定をおこなう必要性」(健康局総務課・青柳課長の話)から、新基準を広島大学などに依頼していたもの。
 主任研究者の広島大・児玉教授は、原爆放射線がガンなどの疾患の発生にどのようにかかわっているかの「寄与リスク」を、放影研が行なっている12万人寿命調査データをもとにまとめたと報告、疾病別の寄与リスク表を発表しました。
 これには、被爆線量の多寡で、年齢ごとに疾病の発症率が違う状況が統計で示されています。
 厚生労働省はこれをうけて、新しい審査方針を決め、5月の医療分科会に提出することになりました。


東京、北海道での原爆裁判

 東数男原爆裁判の第8回口頭弁論が、3月27日行なわれました。
 内藤雅義弁護士が、原爆症認定の実態について「これまでにも、C型肝炎での認定事例が数多くある」ことなどが詳しくのべられました。
 安原幸彦弁護士は、証人として、肥田舜太郎医師、斉藤紀医師、沢田昭二名古屋大学名誉教授、それと東さん本人の4人を申請しました。
 裁判長は、国・厚生労働省にたいし、これまでに弁護団が提出した8通の準備書面への反論書を次回には提出するように指示しました。
 4月4日に開かれた、「原爆裁判の勝利をめざす東京の会」役員会では、証人尋問が決まれば東京地裁の大法廷での審理に切り替えるように申請すること、そのためにも東裁判での公正裁判を求める署名(現在7,400人分)、個人・団体の会員の拡大に努力することが確認されました。

安井裁判
 安井原爆訴訟の第8回口頭弁論が4月9日、札幌地裁で開かれ、66人の傍聴者、11人の弁護団が出席しました。
 今回は、専門家として名古屋大学名誉教授の沢田昭二さんが意見書を提出。安井さんの広島での足跡をたどって被曝線量を克明に計算し、初期放射線を「110ないし200センチシーベルト」浴び、これはDS86の「約10倍ないし18倍」としています。
 一方、国側は安井さんが広島でおそわれた猛烈な下痢は「精神的原因による」と述べるなど、苦しまぎれの反論に終始しつつも、争う姿勢はくずしていません。
 次回弁論は5月28日の予定です。



中国平和協会と懇談

 中国人民平和軍縮協会と日本被団協との懇談がありました。
 3月30日午前、東京・浜松町の島嶼会館で、中国側は宦団長ら6人、日本被団協は藤平典代表委員ら4人が参加。
 日本被団協からは、中国の核実験被害の調査、「原爆と人間展」パネルなどをつかって、中国内での被爆の実相普及を要望しました。

訪日代表団の名簿
 宦 国英さん(団長・中国人民平和軍縮協会副会長)
 馮 徳育さん(調整委員)
 陳 都明さん(研究員)
 劉 玉民さん(編集委員)
 文 徳盛さん(通訳)
 杜 根起さん(研究員)

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