「被団協」新聞  2001年3月

主な内容
1面 日本被団協、ノーベル平和賞候補に   「福祉事業」の全国化すすむ
2面  ネバダ集会報告   「核かくしかじか」  軍隊のない国コスタリカを訪れて
3面  原爆症認定制度の是正を
4面 相談のまど


日本被団協をIPBがノーベル平和賞に3度推薦

 日本被団協が、2001年度の「ノーベル平和賞」の候補に推薦されました。1985年、94年につづく三度目の推薦です。
 推薦したのは、国際的非政府組織(NGO)で、ノーベル平和賞授賞(1910年)団体で、ノーベル平和賞推薦の資格を持っている「国際平和ビューロー」(IPB、本部ジュネーブ、コーラ・ワイス会長)です。
 推薦理由は「半世紀にわたり核兵器廃絶を世界に訴え、運動をつづけてきた」「21世紀最初の年に被爆者が世界に果たしてきた役割を評価すべき」など。
 日本被団協が最初に推薦を受けた85年には、国際反核医師の会(IPPNW)が授賞。94年のときは、日本被団協とパグウォシュ会議のロートブラド議長が共同推薦されましたが、イスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機構アラファト議長に授与されました。
 藤平典代表委員の話「ノーベル平和賞に三度も推薦を受けるとは名誉のかぎりです。これからも推薦にふさわしい活動をしたいと思います」

 IPBにたいして、日本被団協をノーベル平和賞に推薦するよう要請したアメリカの地域団体の推薦活動があったと伝えられています。 この団体は、「被爆者/被団協をノーベル平和賞に推薦する西部マサチューセッツ委員会」です。
 同委員会は昨年12月、ノーベル平和賞に推薦資格を持つIPB、ロートブラッド議長、パグウォシュ会議、IPPNWに、「被団協をノーベル平和賞に推薦していただくにあたっての要請」と、「推薦するにあたっての声明」を発表しました。
 「人類社会と平和にたいし被団協がおこなってきた貢献を認識することは、私たちの道徳的責任です。被団協への平和賞授与は、核兵器廃絶を支持することも意味します」と。

ノーベル平和賞とは
 ダイナマイト発明し、巨万の富を築いたスウエーデンの科学技術者アルフレッド・ノーベルの遺志によって1900年に設立された財団が毎年、平和、物理学、化学、生理学・医学、文学、経済学の6部門で個人、団体に授与している賞。賞金は約1億3,000万円。これまでに600余の個人・団体が受賞しました。



「福祉事業」の全国化すすむ

 全国どこにいても、広島・長崎両県市に住んでいる被爆者が受けている施策と同じ施策を実施してほしいという、各県被団協の要請で、介護保険の福祉サービスへの助成を具体化する自治体が増えてきています。
 これは、「原爆被爆者の援護に関する法律」の「福祉事業」を、介護保険制度と組み合せて実施しているものです。
 平成13年度当初予算案に計上されたのは、岩手、東京(6,800万円)、神奈川(3,339万円)、静岡(1,000万円)、三重(1,050万円)、京都、鳥取(877万円)、島根、山口、岡山。
 宮城、岐阜、福井、奈良、和歌山などは、補正予算となる見込です。

 心配されているのは、この制度の宣伝です。
 全国にさきがけて、昨年6月実施に踏み切った鳥取県の場合、被爆者数700人の約1割を助成対象者とみました。
 被爆者の場合、介護保険の医療系サービスは全額公費負担なので、自己負担がある福祉系サービスへの助成となります。 県では訪問介護の低所得者分、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(特養老人福祉施設入所サービス)への助成として877万円を補正予算に組みました。
 しかし利用者は意外に少なく、今年1月段階で人数は70人ですが、使った予算は300万円でした。「このままでは予算削減になる」と、県当局は県被団協の宣伝を期待しています。県被団協では、「被爆者がまだまだ元気であることを示すもの」ともいっていますが、被爆者有利のせっかくの制度なので、全県の被爆者に徹底を図ることにしています。



ネバダで抗議の唱和

 1951年1月27日にネバダ核実験場で行なわれた最初の核実験から50周年を記念する3日間(2001年1月26〜28日)、アメリカ被曝退役軍人連盟(AAV)が主催する各種の行事・行動に、日本代表団として中山高光(日本被団協代表理事=団長)、遠藤泰生(愛友会事務局長)の日本被団協代表2人、ほかに梶原靖子(牧師・兵庫)、佐々木藤子(沖縄戦体験語り部・東京在住)、中山真弓(高光妻)の3人が参加しました。
 26日は、ユニタリアン教会で午後・夜2回のフォーラムが開かれ、被曝兵士や平和活動家が「プエルトリコで劣化ウラン弾演習の被害が出ている」「沖縄基地被害者との交流を準備中」「ブッシュ政権下での平和運動」などを発言。遠藤(広島被爆)と中山(長崎被爆)は被爆証言とともに日本での運動を紹介し、会場には「原爆と人間展」パネルが展示されました。
 27日は、吹きつける寒風のなか、30人が核実験場基地前で抗議集会。核実験のコード名と実施日を記した幅1m、長さ20mの横断幕が掲げられ、核実験禁止、基地撤去を求めました。
 28日は、AAVと日本被団協の懇談。アンソニー・ガリスコ会長が、「世界被曝退役軍人連盟(IAAV)で、核兵器被害補償を要請する各国キャラバンにとりくみたい」と提案。まず日本から実施したい旨にたいし、持ち帰り検討したいと答えました。
 なお、代表団はAAVに「原爆と人間展」パネルなどを贈呈。ガリスコ会長の孫で14歳のレジーナが私たちに詩を贈ってくれました。



原爆症認定制度の抜本是正を

 昨年の原爆松谷裁判、京都原爆訴訟の勝利を、今後の裁判に生かしていくための「第3回原爆裁判交流会」が、2月3日、東京のコーププラザ会議室で開かれました。
 松谷訴訟弁護団から中村尚達弁護士と支援する会の役員、京都原爆訴訟弁護団から尾藤廣喜弁護士と原告の高安九郎さん(仮名)、東京の東裁判弁護団から内藤雅義弁護士ら四弁護士と東友会役員、札幌の安井訴訟弁護団から高崎暢弁護士ら3弁護士と原告の安井晃一さん、それに日本被団協と日本生協連の代表が参加しました。
 会では、最高裁判決とと大阪高裁判決で、DS86としきい値の機械的適用の誤りがくり返し指摘されているのに、国側は東裁判でも安井裁判でも改めようとせず、同じ誤りにあくまでもこだわっていることを、きびしく批判する意見がつづきました。
 また、昨年の8月以降、原爆症認定作業がストップし、300件もの申請が認定も却下もなされないままに滞留していることも明らかになりました。
 弁護士からは、「人権の行使が妨げられていることを、見過ごすことはできない」などの意見が出され、集団訴訟を起こすことも検討されました。
 日本被団協からは、「原爆症認定制度の抜本的改善のために」(下記)の提案が出されました。
 会では、判決の成果を広げ、国側の不当な対応を改めさせ、日本被団協提案を具体化するために、政治と世論に訴えて運動化していくことが確認されました。

  日本被団協の提案
 日本被団協提案の「原爆症認定制度の抜本的改善のために」は、「真に被爆者の立場に立った原爆症認定制度の確立」を求めています。
 基本的な立場は、「疑わしきは認定」を原則とすること、したがって、原爆放射線との関係を否定できないことが明らかながんについてはすべて認定する。認定作業をする審議会に被爆者、弁護士を参加させる。審査の遅れをなくすために審議会を月に一回は開催すること。審議内容を公開すること――などを求める内容になっています。

東原爆裁判第7回口頭弁論

 東京の東数男さん(72歳)が、肝機能障害で原爆症認定を求めている裁判の第7回口頭弁論が、2月9日、東京地裁で行なわれました。
 肺がん手術の後障害で休養中の原告・東さんに代わって、朝子夫人と長女の由紀子さんが、東京、千葉の被爆者、支援者31人とともに傍聴に参加しました。
 国側は、長崎・大橋三菱兵器工場での東さんの被爆線量は150ラドだ、肝機能障害が起きるのは1000ラドだから東さんの障害は原爆と関係ないと主張しています。
 この点について弁護側は、「1000ラドというのは致死量で、肝機能障害を起こす前に人間は死んでしまう」と、国側のでたらめな主張に真っ向から反論しました。次回は3月27日。 

 東さんの裁判について「被爆の実態に即して公正な裁判を」の署名運動が始まりました。連絡先は東友会へ。


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