「被団協」262号 2000.11月

主な内容
1面 日本被団協全国代表者会議 被団協が中央行動 全国相談員研修会
2面  被団協、弁護団、市民団体が相次いで政府交渉   コラム「核かくしかじか」
3面 各地で相談事業講習会  安井原爆裁判 提訴1周年  
4面 相談のまど「介護保険料」


「21世紀 被爆者宣言」を提案 − 日本被団協全国代表者会議

 日本被団協全国都道府県代表者会議が、10月30、31の両日、東京・水道橋の全水道会館で開かれ、42都道府県から百人の代表が参加しました。
 山口仙二代表委員のあいさつで始まった会議の最重点は、「21世紀 被爆者宣言」案の発表です。
 田中煕巳・宣言委員会委員長が、約3,500字の「宣言」全文を朗読して提案、あわせて討議の論点を報告しました。
 「宣言」には、三重県被団協から文書提言があったのをはじめ、「被爆者の言葉で人類史的課題を発信しよう」など活発な発言があり、来年の総会までに立派に仕上げていこうと確認しました。
 原爆松谷裁判については、松谷英子さんがお礼のあいさつ、安原幸彦弁護士が判決の意義について特別報告しました。
 被爆の実相普及では、日本生協連の天野晴元さんが外国へ「原爆と人間展」パネルを贈る運動を報告、各地の経験が生き生きと交流されました。
 原爆被害への国家補償を求める署名、緊急要求署名は、核兵器廃絶要求運動とメダルの両面だなどと論議されました。
 在外被爆者問題では11月13日に、四カ国の被爆者が参加して国会議員説明懇談会が開かれることも報告されました。

「宣言」のポイント

 「21世紀 被爆者宣言」(案)は、まず、「核兵器も戦争もない21世紀をめざす」ことを宣言しています。
 原爆投下で死の街に変わり、半世紀たったいまなお被害がつづいているなかで、広島と長崎の被爆者は国の内外で核兵器廃絶を訴え「核兵器も戦争もない21世紀」を世界の声にしてきたことを高く評価しています。
 こうしたなかで、アメリカに追随し準核保有国になっている日本の姿勢を、はっきりと核兵器廃絶の側に立つように迫っていくことが、被爆者の責務だとのべています。
 原爆被害への国家補償を実現させる運動では、最大の犠牲者である死没者への補償を重点に、生存被爆者、在外被爆者、外国人被爆者への適用を要求しています。
 さらに、国際法違反の核兵器を使ったアメリカ政府に賠償を要求していることが特徴です。

中央行動

 全国代表者会議参加者による中央行動は、11月1日、100人が参加して行なわれました。
 今回は、@国連総会への日本政府案で核兵器廃絶国際条約締結を提唱すること、A「核兵器の使用と威嚇は国際法違反」の立場から被爆者に国家補償をすること、B原爆症認定で機械的適用をしないこと、C在外被爆者への現行法の適用−です。
 公明党は斉藤鉄夫衆院議員、保守党は小池百合子衆院議員、共産党は小泉親司参院議員、外務省は高田課長補佐が対応。 また、衆院厚生委員、と外務委員、参院国民福祉委員と外交防衛委員全員に要請しました。

全国相談員研修会

 原爆被爆者中央相談所の「被爆者全国相談員研修会」が10月30日、東京都内で開かれ、42都道府県から76人が参加しました。
 研修会は、相談所の岩佐幹三、山田玲子両理事の司会ですすめられ、はじめに肥田舜太郎理事長があいさつしました。
 肥田理事長は、被爆者が高齢化するなかで、運動には必ずしも明るい見通しは持てないが、残る余生を世のために尽くす覚悟で、被爆者だけが果たせる役割をおおいに発揮し、みんなでがんばろうではないか、と呼びかけました。
 つづいて伊藤直子相談員が、介護保険導入後の特徴的な問題点、原爆松谷裁判勝利後の厚生省の動きと認定申請を強化する取り組み、福祉事業の具体化の各県での進展などを報告。これをふまえて各地からの報告や質問・意見が活発に交わされました。
 とくに介護保険問題では、この制度自身に多くの弱点があり、被爆者だけでなく一般の高齢者と協力し合って、共通する要求の実現をはかることの重要性が指摘され、各地での具体的な事例を洗い出す作業が呼びかけられました。


被団協、弁護団、市民団体が相次いで政府交渉

 日本被団協代表理事と厚生省の交渉が10月6日に行なわれました。
 被団協は、健康管理手当の更新手続きの廃止、原爆症認定の改善など10項目を要請しました。
 これにたいする厚生省の答えで具体的なことが3つありました。
 1つは、長崎の被爆地拡大問題。
 2つは、被爆二世の健康診断受診期間が、12月から翌年2月までだったのが、10月から2月までの5カ月間に延長されたこと、二世検診の希望者が五割も増えて、委託を受けている日本公衆衛生協会の財政がパンク状態になっていること。
 3つは「福祉事業」の実施を希望する9都県については来年度概算要求に盛り込んだが、これからの希望県は14年度予算になることです。
 9都県とは、東京都と三重、岐阜、和歌山、福井、岡山、山口、鳥取、島根の各県。
 このほか、北海道、奈良が希望しています。

被団協、弁護団が合同で「松谷謝罪」重ねて要求

 日本被団協と原爆裁判弁護団による2回目の厚生省交渉が10月27日に行なわれました。
 これは、松谷英子さんにたいする厚生大臣の謝罪などを求めた8月29日の厚生省交渉で、省側の対応が不十分だったことから再交渉になったもので、松谷さん本人と弁護団の横山茂樹団長、日本被団協・藤平典代表委員ら14人が参加しました。
 しかし厚生省側は今回も、「松谷さんへの対応は、8月4日に国会で、厚生大臣が『松谷さんのご苦労につきましては、本当にお気の毒であったと思います』と答弁している。これがすべてだ」と答えるだけでした。
 原爆症認定の基準を今後どうするかは、医療審議会で検討中であることを明らかにしました。

国連決議で要請

 「つたえよう ヒロシマ ナガサキ」の事務局団体は10月26日、国連ミレニアム総会で日本が核兵器廃絶に積極的な役割を果たすよう、政党と外務省に要請しました。
 今年の国連総会への日本政府提案は、昨年までの「究極廃絶」論が国際的に否定されたためにひっこめ、「核兵器の全面的廃絶への道程」という案にかえ、核軍縮をすすめて廃絶にいたる道筋をのべています。しかし、「核兵器廃絶への明確な約束」の実行を強く迫るものになっていません。
 このため「つたえよう」では、「すみやかな核廃絶」のための実効ある提案、核廃絶への国際的協議の開始、NGOの意見の聴取を要請しました。
 民主、公明、共産、社民各党への要請には、日本被団協、日本青年団協議会、日本生協連、世界大会実行委員会が参加。
 外務省では、佐野利夫軍備管理軍縮課長が「政府は、核兵器廃絶だけを考えていない。安全保障からの観点もある」と、核抑止力の立場であることを明らかにしました。


安井原爆裁判 提訴1周年集会

 北海道被団協の安井晃一さんがおこした原爆裁判で、10月14日に「訴訟一周年のつどい」が開かれ、16日には札幌地裁で第5回口頭弁論が行なわれました。
 「つどい」は、安井原爆訴訟支援連絡会が主催したもので、全道から114人が参加しました。 松谷英子さんの勝利のあいさつ、名古屋大学の沢田昭二名誉教授の記念講演、安井裁判の経過報告、安井さんのあいさつなどがあり、「国の原爆症認定行政を根本から変えるために全力をつくそう」と決意しあいました。
 第5回口頭弁論では、高崎暢弁護団長が「松谷判決を真摯に受け止めて国は早期解決をはかれ」と強く主張しました。
 弁護団はまた、安井さんの被爆後の病気、低線量被爆と残留放射能被爆を証明する三通の準備書面を提出しました。
 次回は11月27日。

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