1998年12月25日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン閣下

日本原水爆被害者団体協議会  

                                           代表委員 伊東 壯
                                           代表委員 伊藤 サカエ
                                            代表委員 山口 仙二
                                            事務局長 藤平 典

臨界前核兵器実験に抗議する

 貴国は、12月12日(日本時間)、5回目の臨界前核兵器実験を行なった。われわれは12月11日、貴大統領にたいし実験の中止を要求したが、これを無視しての実験強行である。

 貴国が投下した原爆によって家族を殺され、自分も後障害に苦しんでいるわれわれ被爆者は、貴国の度重なる核兵器実験に満身の怒りを込めて抗議する。

 貴国は臨界前核兵器実験はCTBT(包括的核実験禁止条約)に違反しないと言い張っているが、核兵器の性能維持と新型核兵器の開発につながる実験であることになんら変わりはない。しかも、この実験を2005年まで、毎年4回のペースで継続実施する計画であるという。

 また、水爆の原料であるトリチウムの生産の再開を明らかにした。これは核軍縮に逆行するものであり、これをただちに撤回すべきである。

 貴国は、インド、パキスタンが行なった地下核兵器実験を、口をきわめて非難し、制裁を加え、脅迫さえした。イラクが大量破壊兵器の査察を拒否したことを口実に、国際世論にさからって武力行使さえ行なった。しかし、ロシアの臨界前核兵器実験には、まったく口をつぐんでいる。弱小国には核兵器の実験も所有も許さないが、自国とロシアには実験も、開発も、保有も、使用も許されるとは、何という身勝手さであろうか。核大国の横暴としかいいようがない。

 私たちは全人類の名において貴閣下に要求する。

1 臨界前核兵器実験の計画を中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。

5 水爆原料となるトリチウムの生産再開を止め核軍縮を進めよ。


                           98年12月25日

ロシア連邦共和国大統領  ボリス・N・エリツィン閣下

日本原水爆被害者団体協議会

                                           代表委員  伊東 壯                                              代表委員  伊藤 サカエ                                            代表委員  山口 仙 二                                            事務局長  藤平  典

臨界前核兵器実験に抗議する

 貴国は12月24日、ノバヤゼムリヤ核実験場で臨界前核兵器実験を、今年9月14日から12月13日までの間に5回も行なったことを明らかにした。この実験を来年も数回予定しているという。

 われわれ広島、長崎で原爆被害を受けた被爆者は、激しい怒りをもって抗議する。

 貴国は、臨界前核兵器実験はCTBT(包括的核実験禁止条約)に違反しないといっているが、この実験が核兵器の性能維持と有効使用を前提にしていること、新たな核兵器開発につながることは周知のことである。貴国の行為は、CTBTに抜け道をつくり、CTBTの空洞化を進める以外のなにものでもない。

 貴国内には、ソ連時代に行なわれた核兵器実験による放射能被害者が、数百万人もいると聞いている。実験によって汚染された土壌は、正常に回復するには数百年かかるといわれている。この土壌の上で植物や動物も、残留放射線被害を日毎、夜毎受けつづけている。核兵器実験は、自国の国民をも殺傷し、自然環境を破壊している。核兵器が製造、実験、保有、使用のすべての面で、自国の安全保障にとっても有害無益であることは、この一事を見ても明かである。

 われわれ原爆被害者は、世界のどこであっても、新たなヒバクシャがつくり出されないことを願って、次のことを要求する。

1 臨界前核兵器実験をただちに中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。


核兵器廃絶へ  トップページ