日本被団協は9月29日、アメリカの臨界前核実験強行に対し渋谷駅頭で抗議行動した後、アメリカ大使館前で訴え、次のようなクリントン大統領への抗議文書を渡しました。

 また、ロシアの臨界前核実験計画の中止を求める文書をロシア大使館を通じてエリツィン大統領に送りました。 


         

1998年9月29日

アメリカ合衆国大統領

ウイリアム・J・クリントン閣下

日本原水爆被害者団体協議会

                                              代表委員  伊東 壯

                                              代表委員  伊藤 サカエ

                                              代表委員  山口 仙二 

                                              事務局長  藤平  典   

 臨界前核実験計画に抗議する

 貴国は、私たち原爆被爆者が9月17日に中止を要請したにもかかわらず、9月27日、臨界前核実験を強行した。しかも、この臨界前核実験を2005年までの7年間、毎年4回のペースで継続実施する計画であるという。

 貴国はすでに、ありあまる核兵器を所持している。その殺りく規模は、地球上のすべての人間を、何度も皆殺しさせることのできる量である。その核兵器の破壊力を研ぎすまし、核抑止力を強調し、さらに新たな核兵器開発にもつなげていこうとする、このような大量殺人計画の進行に、われわれ被爆者は激しい怒りをもって抗議する。

 貴国は5月に、インド、パキスタンが行なった地下核実験を、口をきわめて非難し、制裁を加え、脅迫さえした。その舌の根も乾かぬうちに、自国の核実験計画の公表である。

 21世紀を前に、核兵器廃絶への世界世論が大きく高まっているとき、これを無視して、包括的核実験禁止条約(CTBT)の網をくぐる、狡猾で欺瞞的な手段によって核兵器の保有と開発、「改良」をつづけようとしていることは、世界世論に敵対する暴挙である。

 貴国の核実験によって、あらたな核兵器開発競争が起きる恐れがあることをわれわれは指摘していたが、さっそくロシアが臨界前核実験再開を示唆した。われわれは、ロシア政府に対しても、臨界前核実験を中止するよう要求する。

 私たちは全人類の名において貴閣下に要求する。

1 臨界前核実験の計画をただちに中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。


                            98年9月28日

ロシア連邦共和国

ボリス・エリツイン大統領

日本原水爆被害者団体協議会

                                              代表委員  伊東  壯

                                              代表委員  伊藤 サカエ

                                              代表委員  山口 仙 二

                                              事務局長  藤平  典

臨界前核実験の中止を要求する

 報道によると、貴国の原子力担当の高官が、アメリカ合衆国が行なった臨界前核実験に対抗して、ノバヤゼムリヤ核実験場で、近く臨界前核実験を行なうと言明したと伝えられている。

 貴国は、臨界前核実験はCTBT(包括的核実験禁止条約)に違反しないといっているが、臨界前核実験が、核爆弾の性能維持と有効使用を前提にしていること、新たな核兵器開発につながることは周知のことである。

 広島、長崎でアメリカが投下した原爆で被害を受けたわれわれ原爆被害者は、世界のどこであっても、新たなヒバクシャがつくり出されることを許すことができない。「ノーモア ヒバクシャ」はわれわれ被爆者の悲願である。

 貴国内には、ソ連時代に行なわれた核兵器実験による放射線被曝者が、数百万人もいると聞いている。実験によって汚染された土壌は、正常に回復するには数百年かかるといわれている。この土壌の上で植物や動物も、残留放射線被害を受けつづけているのである。核実験が、自然環境を破壊することは、この一事を見ても明かである。

 われわれは、これ以上の核実験ヒバクシャがつくり出されないことを強く期待し、次のことを要求する。

1 臨界前核実験の計画をただちに中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。  


トップページ  核兵器廃絶へ