日本被団協は9月17日、アメリカ政府の臨界前核実験計画に抗議し、大使館を通じて次のような文書をクリントン大統領に送りました。     


1998年9月17日

アメリカ合衆国大統領 ウイリアム・J・クリントン閣下

                       日本原水爆被害者団体協議会 

                                             代表委員  伊東  壯                                               代表委員  伊藤 サカエ                                              代表委員  山口 仙 二                                              事務局長  藤平  典  

  臨界前核実験計画に抗議する

 報道によると貴国は、私たち原爆被爆者の命がけの願いと世界の世論にさからって、またしても臨界前核実験を強行しようとしている。それも、今9月下旬から2005年までの7年間、毎年4回のペースで継続実施する計画であるという。

 貴国はすでに、ありあまる核兵器を所持している。その殺りく規模は、地球上のすべての人間を、何度も皆殺しさせることのできる量である。これ以上の核兵器がどうして必要なのか。一体どんな核兵器を開発、製造しようとしているのか。

 われわれ被爆者は、貴国の大量殺人計画の進行を座視することは到底できない。

 しかも貴国は5月に、インド、パキスタンが行なった地下核実験を、口をきわめて非難し、制裁を加え、脅迫さえした。その舌の根も乾かぬうちに、自国の核実験計画の公表である。

 21世紀を前に、核兵器廃絶への世界世論が大きく高まっているとき、これに逆行して、包括的核実験禁止条約(CTBT)の網をくぐる、狡猾で欺瞞的な手段によって核兵器の保有と開発、「改良」をつづけようとしていることは、世界世論に敵対する、国際法違反の暴挙である。

 貴国の核実験によって、あらたな核兵器開発競争が激化し、地球環境の急速な悪化と、核戦争による人類絶滅の危機が深刻化し、取り返しのつかない事態になることを、われわれは許すことはできない。

 私たちは全人類の名において貴閣下に要求する。

  臨界前核実験の計画をただちに中止せよ。

  他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

  核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

  期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。


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