日本被団協はアメリカ航空宇宙局(NASA)が10月13日に予定しているカッシーニ計画について要求書をアメリカ大使館を通じてクリントン大統領に送付しました。


1997年10月9日

アメリカ大統領

ウイリアム・J・クリントン閣下

日本原水爆被害者団体協議会

東京都港区芝大門1−3−5

TEL 3438−1897

FAX 3431−2113

アメリカ航空宇宙局のカッシー二計画の中止を要求する

 米航空宇宙局(NASA)は土星探査機(カッシー二)を10月13日ケーブカナベラル空軍基地から打ち上げる。7年の歳月をかけて土星の回周軌道に到達し4年にわたって土星の周りの回周を続け、さまざまな探査観測を行うことになっている。謎の多い土星について新しい発見が天文学者や科学者によって期待されている。

 しかし、この探査機には動力源として、放射性ブルトニウム238が使われることになっている。理由としては、土星は太陽から遠く、ほとんどの宇宙衛星に使われている太陽電池では力が足りないとしている。放射性プルトニウム238は長崎の原爆に使用されたプルトニウム239よりも数百倍の放射線の強さを持つもので、カッシー二には約33キログラムが搭載されるとされている。  

 このように危険なプルトニウムを大量に宇宙に打ち上げることについて、核物質による環境破壊に反対し、万一の事故によって生じる地球規模、人類規模での被曝障害を憂慮する市民、科学者、反核団体、環境保護団体などのカッシー二打ち上げ反対の運動が広まっている。

 核兵器の使用がもたらす人間的悲惨を身をもって体験した被爆者は核兵器の生産、実験の過程で被曝した世界中のヒバクシャと連帯しつつ、核兵器のすみやかな廃絶、核兵器の開発、実験、貯蔵など核兵器につながるすぺての動きに反対してきた。

 さまざまな生存被爆者を結集して核兵器廃絶の運動を続けてきた日本被団協は、核兵器への使用を目的としない核エネルギーの利用については一般的には反対してきていない。しかし、放射線の引き起こす障害について体験した被爆者として核エネルギーの利用に危惧の念を抱き、反対する被爆者も少なくない。核エネルギーの平和的な利用は100%の制御、管理が要求されるであろう。スリーマイルズ島やチェルノブイリの原発事故、最近の日本における動燃の事故などから見て、100%の制御、管理がいかに不可能に近いことであり、チェルノブイリの事故が広範な地域の人びとに長年にわたる深刻な放射線障害をもたらしたことには被爆者として深い同情の念を抱くものである。

 宇宙開発の技術には計り知れない進歩があり、多くの人工衛星を打ち上げ、人間を月面に着陸させ、地球に帰還さぜることも可能な時代である。しかし、これらが100%の制御可能な技術であり、100%の安全性を保証できるものはだれもいない。このようななかで33キロにも及ぶプルトニウムを宇宙に打ち上げることには、被爆者として反対せざるをえない。

 いったん事故が生じ、これだけ大量のプルトニウムが宇宙に放散されたとき、人類がうける放射線被害を推定した科学者によれぱ、地球上の人口の60%にあたる50億人が放射線障害を受け、数100万人の生命を脅かすことになり、放射性物質が地上に降下することになれば、3000万人がガンにより死亡し、深刻な遺伝的障害を人類に残すことになるだろうとしている。

 これ以上の被曝犠牲者をつくらないために、われわれは

 カッシーニヘのプルトニウム搭載に反対する

 カッシー二の打ち上げを中止することを強く求める。


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