2003年3月20日
日本原水爆被害者団体協議会


アメリカのイラクに対する武力攻撃開始に原爆被害者として強く抗議し、直ちに戦争をやめることを要求する

 ブッシュ大統領は本日11時半(日本時間)イラクに対する武力攻撃開始を命令した。
査察の継続を求め、平和的解決を求める国際的世論に逆らっての、理由なき先制攻撃であり、この行為は、国連が定義した侵略行為以外の何者でない。
さらに、この先制攻撃が核兵器の使用も選択肢に入れたものであることは、ブッシュ大統領が昨年9月明らかにしたブッシュドクトリンで明白であり、核兵器が使用されることになれば人類破滅の核戦争への扉を開くことになる。
1945年8月、アメリカは広島と長崎に原子爆弾を投下し、二十数万余の、罪もない市民の命を奪った。その後地獄の体験を味合わされ、57年余を経た今日も放射線の後遺に苦しめられる被爆者は、ブッシュ政権の暴挙に怒りをもって抗議し、直ちに、攻撃を中止することを要求する。
戦争の世紀ともいわれる20世紀の惨禍を体験した人類が選択したのが国連憲章であり、憲章の精神にもとづく、法による国際秩序、平和維持であった。この努力にもかかわらず朝鮮戦争、ベトナム戦争を体験せざるを得なかった。しかし、絶滅だけを目的とする核兵器の使用だけは許さなかった。核兵器の使用を禁じ、核兵器の廃絶を求めてきた被爆者の声と世界の世論の力によって使用を押しとどめてきた。
イラクを含む「ならず者国家」に対して、核兵器の使用も選択肢に入れた先制攻撃も辞さないことを公然と表明するブッシュ政権は、国連憲章の精神をふみにじるものといわざるをえない。
アメリカが原爆を投下した当時のトルーマン大統領は、「アメリカの兵士数十万人の犠牲を救うため」といって、原爆投下を正当化した。この正当化論は今も続いている。今回ブッシュ大統領は「アメリカ国民を大量破壊兵器による犠牲から守るために」といっている。アメリカ人の生命救助のためには、他国民をどれほど殺戮してもいいという考えである。
イラクの大量破壊兵器保有を絶対に認めないアメリカが、世界最大の大量破壊兵器の保有国であることの矛盾をどのように説明するのだろうか。
 小泉政権はブッシュ政権の強権政策にたいして、終始支持を表明してきた。最後には、国民の戦争反対の声に逆らって、先制攻撃にも支持・協力を明らかにした。
戦争に協力することは戦争に参加することである。原子爆弾による惨禍を繰り返すことのないよう決意し、武力による行使は国際紛争を解決する手段としては永久に放棄することを定めた日本国憲法に違反する行為といわざるを得ない。
被爆者として、日本国民として、日本国政府が直ちに戦争に協力することをやめることを要求する。
 戦争の最大の犠牲者は、多くが子供、老人、女性であり、罪もない市民である。
戦争を直ちに停止することを要求する。


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