2002年7月22日

有事関連法案の廃案をもとめる声明

日本原水爆被害者団体協議会


 私たちは、広島・長崎で原子爆弾の被害を受けた被爆者の団体です。
 私たち原爆被害者は、政府の行為によってひきおこされた戦争の結果、アメリカが投下した原子爆弾のために、かけがえのない肉親、知人、財産を失ったばかりでなく、この57年間、原子爆弾に固有の放射能被害を中心に、からだ・くらし・こころの全面にわたって苦悩をかかえ、病弱や不安とたたかって生きてきました。無差別・大量に人間を殺傷する核兵器を「世界のどこにも二度とつかうな」「核兵器も戦争もない世界を」というのが被爆者の切実な願いであり、その証として原爆被害にたいする国家補償をもとめて活動しています。
 こうした被爆者の立場から、いま国会に継続中のいわゆる「有事関連三法案」の内容を見るとき、私たちは強い不安と憂慮を表明せざるをえません。同法案は、「武力攻撃事態」を認定すれば、他国とりわけアメリカ合衆国が引き起こす戦争に国をあげて協力する国家総動員態勢をつくりあげるという、日本国憲法をふみにじるにひとしい法案です。アメリカの戦争は、核兵器の使用を前提にしており、日本がアメリカの戦争に協力することは、新たな核被害者を世界につくりだすことになり、日本が核の加害者になるおそれがあります。さらに政府は、私たち被爆者に対する国家補償を拒んでいます。いまの有事法制のなかにも、民間の戦争犠牲に対する補償は何もふれられていません。政府は核を含む「武力攻撃事態」を容認し、それによっておきる犠牲をも「受忍」せよというのでしょうか。平和的生存権を明記した憲法のもとでけっしてあってはならない法律です。
 私たちは、この法案はきっぱり廃案にすべきものと考えます。現在、与党はこの法案を今国会で継続審議とし、次期国会で成立させる考えということが伝えられています。
 私たちは、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会が、全国各地の地方公共団体をはじめ多くの世論が反対や懸念を表明していることに謙虚に耳をかたむけ、英断をもって同法案の廃案を決定するよう、強く要求します。


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