2002年12月18日
声 明  在外被爆者・郭貴勲裁判での判決確定にあたって
                         
日本原水爆被害者団体協議会
 大阪高裁が12月5日、韓国人被爆者・郭貴勲さんの裁判についてくだした判決について、本日、国が上告断念を発表した。われわれの要求と判決の内容からして、国が上告を断念はしたことは当然である。
 郭貴勲さんをはじめ、現在、福岡高裁、広島地裁、長崎地裁で審理中である同様の裁判の原告である在外被爆者、国内被爆者を支援し、韓国、アメリカ、ブラジルなどの在外被爆者団体とともに、被爆者はどこにいても被爆者との主張をかかげ、在外被爆者への原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(現行法)の適用を求めてきた日本原水爆被害者団体協議会は、政府の上告断念を歓迎し、郭貴勲さんにお祝いと敬意を表明し、ともにたたかってきた多くの仲間とともに喜びを分かちたい。
判決もいうとおり、「被爆者はどこにいても被爆者」である。広島・長崎での原爆被害は、無差別・大量の殺戮・傷害であり、被害を受けた人びとの本国は20数カ国におよんでいる。その被爆者たちが、終戦後、自国に帰国したことをもって、原爆被爆者でなくなるなどいうことはあり得ないことである。外国にいる被爆者に、果たすべき施策をしなかったのは、ひとえに日本政府の原爆被害の軽視、内外を問わず被爆者にたいする施策の怠慢以外の何ものでもない。
 このことが、司法によって糺されたことは、司法の良識が示されたものである。われわれ被爆者は、司法の判断に敬意を表する。しかし同時に、行政が、司法の判断を待つまで、施策を是正できなかったことに、深い失望の念を抱かざるを得ない。
 原爆被害は、かつて人類が体験したことのない、瞬時、無差別、大量、非人道な被害である。原爆の威力は、広島・長崎後、核兵器開発競争のなかで飛躍的に強大となった。今後もし、核兵器が使われるようなことになったら、地球上の人類の生存そのものを脅かすことになる。そのような被害のまえで、被害者の国籍がどこにあるかを論じること自体が無意味である。
 大阪高裁判決が、冷静に、核兵器被害の実態を見つめ、「被爆者はどこにいても被爆者」と判断したことは、人類の未来を見据えた判断と評価できる。
 高裁判決はまた、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」のもとで施行されている被爆者施策についても、被爆者がこれまで主張していた問題について、被爆者の主張を正当とする明快な判断を示した。
 このたびの上告断念によって、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」が、「原爆2法の国家補償的性格と人道目的をより強化する方向で一本化されたもの」とみる解釈が確定したことは、被爆者施策の全般にわたって、この視点が貫かれなければならないことを行政に義務付けた。このとは、原爆症認定行政についての厚生労働省のこれまでのありようを厳しく問うものである。また、健康管理手当についても、「医療給付を前提とするものではなく、日常十分に健康上の注意を払う必要があるため、健康管理に必要な出費に充てることを給付の本旨とする」とした。これは、健康管理手当を医療手当かのように見なして、更新手続きをきびしくしている行政に改善を促すものである。
 政府が、大阪高裁判決に従うことを認めたことを前提に、われわれは要求する。
  1 すべての在外被爆者に、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」を適用せよ
  2 健康管理手当の受給権を持ちながら不当に中断された在外被爆者に、中断時にさかのぼって、不支給分を支給せよ
 3 健康管理手当の不支給分の支給を求めている裁判も、大阪高裁判決に従って直ちに和解せよ。福岡高裁への控訴を直ちに取り下げよ
 4 健康管理手当の更新手続きについて、固定疾患と65歳以上の被爆者については更新手続きを廃止せよ
 5 被爆者健康手帳の取得と健康管理手当などの諸手当の申請を、来日しなくても、現住地でできるようにせよ
 6  唯一の被爆国の政府として、「ふたたび被爆者をつくらない」よう、世界に働きかけよ

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