日本被団協は郭貴勲裁判の国の控訴に抗議して以下のような声明を6月15日発表しました。

2001年6月15日
日本原水爆被害者団体協議会

声 明

原爆郭貴勲裁判の控訴に抗議する

 1945年8月、徴兵によって強制連行され、広島の爆心地から2km地点で原爆に被爆した在韓被爆者郭貴勲氏が国と大阪府を相手に起こした健康管理手当の継続支給を求める訴訟において、大阪地方裁判所は、2年8か月にわたる審理ののち、6月1日、原告郭氏の主張を全面的にみとめるきわめて明快な判決を下した。
 判決は、
「原子爆弾被爆者の援護に関する法律」およびその前身である旧「原爆2法」には、死亡によるばあいの外、被爆者の健管理手当その他の給付について「失権」の規定はない。したがって郭氏が在日中に支給を受けていた健康管理手当を、国が郭氏の帰国と同時に打ち切ったのは、法律によらない恣意的な措置であって不当である。また、日本にいるかいないかで被爆者を差別するのは、憲法第14条(法の下の平等)に反する恐れがある
とのべている。
 国が郭氏への健康管理手当支給打ち切りを正当なものとみなす根拠として示したものは、法律の条文ではなく、1974(昭和49)年7月の厚生省公衆衛生局長通達だけである。
 大阪地裁判決は、国側の主張を完全にしりぞけ、法によらない被爆者行政の不当を断罪した。そこにはもはや一点の争う余地も残っていない。
 この判決は、朝鮮半島、南北アメリカをはじめ世界各地にあって、原爆がもたらした「からだ」「こころ」「くらし」の苦しみに耐えて生きている数千人の原爆被爆者に希望の光をもたらすものであった。被爆から56年、差別と偏見のなかで老齢に達した被爆者たちは、政府がこのこの判決を受け入れてこれまでの苦しみの償いをしてくれることを切望していた。それにもかかわらず、国は、被爆者と国民の「控訴するな」の声にさからい、郭氏の痛切な願いをしりぞけてあえて控訴した。
その控訴理由は、判決でも指弾された行政当局による恣意的な制度運用を維持しようとするものであり、社会的にも法律的にも何らの正当性をもちえないものである。
 われわれは、政府の郭氏および在外被爆者にたいするこの不当で冷酷な措置に怒りをこめて抗議する。われわれは、政府による被爆者差別、人権蹂躙をきびしく糾弾する。
 かかる事態を招いたのも、現行法が、国家補償法でないことによるものである。
 われわれは、あらためて戦争責任にもとづく国家補償の被爆者援護法を要求する。 


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