日本被団協は米大統領のABM条約離脱宣言について、次のとおり声明を発表しました。

2001年12月21日
日本原水爆被害者団体協議会
                                              代表委員 坪井 直
                                                 同   山口 仙二
                                                 同   藤平 典
                                              事務局長 田中熙巳

  声明 
  ブッシュ米大統領のABM条約離脱宣言について

 ブッシュ米国大統領は就任以来、京都議定書への署名とCTBTの上院への上程を拒否するなど、地球と人類を破滅から救おうとする世界の良心に真っ向から逆らう行動をとりつづけてきた。9・11同時多発テロ事件以来、犯人を探し出すとしてアフガニスタンに対する武力攻撃を開始した。
 国連と国際法にもとづく解決をもとめる世界世論に背を向けたばかりでなく、集束爆弾、クラスター爆弾など、きわめて非人道的な新しい兵器を使用して、多数の一般市民を巻き添えにしている。幾百万の市民がこの無差別攻撃によって住居と食料と生存の前提となるすべての富を奪われ、飢餓に瀕し、寒さに震えている。
 さらに14日、9・11事件以来2回目、通算15回目の臨界前核兵器実験を行い、引き続きABM(弾道弾迎撃ミサイル制限米ソ間条約)からの離脱宣言を行った。MD(ミサイル防衛)構想を防衛政策の柱にしたブッシュ政権にとってABM条約は大きな足かせになっていた。
 ABM条約を離脱することは、「ミサイル防衛」構想の一方的推進を意味する。それは宇宙への核拡散を加速し、これまでにもまして深刻な、新たな核軍拡競争に道を開くものである。人類にとっての貴重な共有財産である宇宙を核開発競争、さらには核戦争の舞台とすることは断じて許せない。
 被爆者が核兵器廃絶を訴えつづけて半世紀、ようやく全世界が核兵器廃絶の合意を見、米国をふくむ5大核保有国が自国の核兵器を廃絶することを明確に約束したのは昨年の5月のことだった。いったいあの「約束」は何であったのか。
 米国による史上初の核攻撃を生身で体験したわれわれ被爆者は、ブッシュ大統領のこの暴挙を厳しく糾弾する。
 MD防衛構想を直ちに中止し、新たな核兵器の開発をやめよ。
 核兵器廃絶の明確な約束をただちに実行にうつせ。


 「核かくしかじか」   核兵器廃絶