クワガタ用語集


はじめに



クワガタの累代飼育技術は、ここ十数年の間に急速に進歩をとげてきました。これは、「開発」と言う名の「自然破壊」によって数を減らしその希少価値が商業的に注目され、当時のバブル景気の波に乗って価格が高騰し、営利目的での飼育技術研究が盛んに行なわれたオオクワガタの存在によるところが大きかったことは周知の事実でしょう。自然とふれあい自然を理解する楽しみであるはずのクワガタ飼育に関する技術が、「自然破壊の進行」と「お金の魔力」によって進歩をとげたと言う現実には、複雑な思いですが・・・。その経緯はともかく、累代飼育技術の確立はクワガタ飼育という分野を「子どもの遊び」から「大人も楽しめる趣味」へと昇華させてくれました。以前であれば、「採りました(又は買いました)。暫く生きていました。死にました。」というだけであったクワガタの飼育過程は、累代飼育と言う概念と技術の導入により、採卵・孵化・幼虫育成・蛹化・羽化・成熟・交配・そしてまた採卵と、飼育下ではありますが生命の営みの全過程を観察できる非常に魅力的なものへと大きく変貌をとげたのです。

この様に、累代飼育が可能となったことによって、クワガタ飼育を楽しむ人たちの底辺は大きく広がりました。一つの趣味として、社会的に認知されてきたと言っても過言ではないでしょう。インターネット上ではクワガタのHPがたくさん見られ、その電子掲示板においては初心者の方が諸先輩方に教えを請う場面が多く見られます。昆虫専門店にも初心者と思われる方々が次々と来店し、店員さんに質問の嵐を浴びせている光景も珍しくはありません。ところが、初心者が先輩からものを教わる場面で妨げとなるものがあります。それは、その分野独特の専門用語の存在です。「前蛹って何ですか?」と聞かれて、「終令幼虫蛹化するための準備段階で、蛹室を作って体が伸びた状態のことだよ。」と答えても、「終礼幼虫?」「八日?」「洋室?」となり、これを一つ一つ説明していくのは容易なことではありません。また、全くの初心者の方から「F1って何ですか?」とか「菌糸瓶は何ヶ月ごとに交換すべきですか?」などと聞かれた場合、「その質問にある程度正確に答えるには30分ほどかかるけど、最後まで聞く気ある?」となってしまうのは、私だけではないでしょう。ある専門用語の意味を正しく手短に説明しようとすると、他の専門用語の使用が避けて通れないのです。また、初心者の方が専門書を読んで勉強しようにも、専門書の文面にあっても同様な言葉が多用されており、意味が理解できずに興味を削がれることが多いのは、筆者も過去に経験してきた事実です。

本稿は、このような広辞苑などで調べてみても全くらちがあかない専門用語や、パソコンの日本語変換機能がカバーしてくれないような難解な業界用語などを、初心者の皆様にもなるべく解りやすく解説することによって初心者と上級者の間の垣根を少しでも低くし、多くのクワガタ狂の健全で速やかな誕生と成長に微力なりとも寄与できることを祈念して執筆するものです。この目的から、本稿が単なる用語集としての用途にとどまらず、初心者の方々のための入門書としてもご活用いただけるものとなるよう、各用語の解説文中には用語の意味のみならず、その用語の用いられ方やその用語に関連した周辺知識をも紹介するよう努めました。ただし、これらは筆者の生息する北海道という極狭い地域での生活の中で得た知識に基づくものですので、あくまでも「北海道における」「クワガタ用語」として読んでください。北海道以外の地域の方には当てはまらない説明もありますし、「クワガタ用語」としての意味の他にも「一般的日本語」として、また「学術用語」としての別の意味が存在する言葉もあるということです。

また、解説文の内容においては一般的に認知された見解を中心とするよう心掛けましたが、筆者の独断と偏見に満ちた私見が多分に見え隠れする部分があるようにも思われます。読者の皆様におかれましてお気づきの点がございましたら、下記アドレスまでご意見・ご質問などお寄せ頂ければ、可能な範囲で対応させていただき今後の改訂版執筆の際の参考とさせていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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