第二話  「 ド ミ ニ カ 編 」 

・其の一

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6時の飛行機でドミニカへ出発する。今度こそは絶対にヘラクレスをゲットしてみせると心に誓っていた?二人であった。飛行機はセスナを一回り大きくしたくらいのプロペラ機である。乗客はなんと4人、私と山内氏とドミニカ?のでっかいおばちゃんと赤ん坊のみである。山内氏は親切にもその女の人の荷物を運んであげていたのだが、後から「はしたじゃない重さだった!いったいなにが入ってるの?」と驚いていた。出発して20分あまりでドミニカ島が見えてくる、プロペラ機から見たドミニカ島は山だらけで道路も少なくかなり田舎の国に見えた。少し不安がよぎる、「こんな島で本当にヘラクレスを採集することができるのだろうか・・・」 プロペラ機が着陸体制に入った。空港はどこだろうと下に目を向けると1本の短いアスファルト路面が見える。「おいおい!まさかあそこじゃないだろうな?」飛行機がナナメに半ば強引にそこへ向かって行く。「マジかよ!こえ〜よ〜!」タイヤは悲鳴を上げながら無事着陸した。わたしの生涯で、飛行機がこんなに怖いものだと思ったのは初めての経験だった。入国手続きを済ませ、レンタカーを借りようと思ったがイメージしていたレンタカー屋が見当たらない。あるのはレンタカー屋につながると思われる電話機一つだけだった。私達が戸惑っていると入国の時の警官が「レンタカーを借りたいのか?こっちに来なさい。」と私達を連れて手続きと電話をしてくれた。言われるがままにタクシーに乗せられてレンタカー屋に連れて行かれることになった。なんだか普通の家みたいな所に車が何台か停めてあるどうやらここがレンタカー屋のようだ。一通り手続きを済ませ、エスクードのオートマを借りることにした。乗り心地は最悪で完全にショックが抜けている、ドミニカの道路は非常にバンピーで何度も天井に頭をぶつけたので少ない髪の毛がより少なくなったことだろう(TT)ちなみに道路を走っているのは90%が日本車だ、しかも右側通行でその点ではグアドループよりはずっと走りやすい。山内氏と話し合い今度は最初から聞きこみ作戦で行くことにした。首都ロゾーを超えたあたりで一人の青年に出会った。トレッドヘアーの背の高い黒人で名はコーネル、年齢は29才、私と同い年である。彼にグアドループで買ったヘラクレスの絵葉書を見せると森の中にいると言う。ガイド料を払うから連れて行けと言うと快く引き受けてくれた。彼を車に乗せ、ジャングルへと向かう。手前に車を止め、歩いて森に入って行くことになった。毒蛇や猛獣はいないとのこと、北海道の山を歩くよりずっと安全かもしれない、案外安心して歩ける森らしいが、悪いアリには注意との事。あまり良い靴を履いていなかったので何度も滑って転びながらもなんとかコーネルについて行く。コーネルが倒木を発見し蛮刀でどんどん削ってゆく、見たこともないようなスピードだ。日本人とはぜんぜんパワーが違う、あの蛮刀で襲われたらと思うとゾッとする。コーネルが見つけたと言うので見てみると小さなカブトらしき幼虫だった。残念ながらヘラクレスの幼虫ではなかったがとりあえず全て採集してゆくことにした。その後も何本もの倒木や立ち枯れを割ったが、出てきたのは全てこの幼虫だった。帰り道でコーネルが自らの蛮刀で手を切ってしまい病院へ直行、手当てを受け家まで送った。コーネルは夜もガイドしてくれると言うので、夜の七時にコーネルの家に迎えに来ることにした。

午後7時、コーネル宅に着く。コーネルが言うにはエコロジーハウス?らしい(私達からみればただの小さな家だが)。あたりはもう陽が落ちて真っ暗だ、「あっ、ホタルだ!」 「おお〜、本当だ!」コーネルが言うには現地では「ファイヤービートル」と呼ぶらしい、ふ〜ん、なるほど!。ヘラクレスが外灯に集まることをコーネルに説明して標高の高い所にある外灯を案内してもらったが残念ながらヘラクレスの姿を見ることはできなかった。時間は8時半、コーネルが昔通っていた学校へと向かうことになった。コーネルの学校は相当標高が高い所にあった。そこでコーネルの先生の家に行きヘラクレスのことについて尋ねると、この辺に生息しているとのこと、一気に期待が膨らむ。いったいどこのポイントに集まるのか?さらに詳しく尋ねると、

な、なんと!「そこの外灯下で5、6匹歩いているのを見たことがあるよ」

とのこと、慌ててコーネルと山内氏と3人で外灯下を入念に探したが見つけることはできなかった、しかしコーネルが次の土曜日までにもしヘラクレスがいたら採っておいてくれと先生に頼んでくれた。コーネルを家まで送り土曜日の昼12時に約束をして別れた。時間はまだ22:30、外灯周りはまだまだこれからと思い何本も山道に入ったがヘラクレスを見つけることはできない、最後にまた先ほどの先生の家のそばの外灯周りもするも残念ながらヘラクレスとのご対面は明日以降に持ち越されることとなった。今日は山の中に車をとめて寝る事にした、夜中に寒さで目がさめてヒーターを入れるほどドミニカの山の夜は寒かった。


       
ヘラクレスの棲む森  ドミニカ国

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今日は朝から違う方向で聞き込み調査をすることにした。ロゾーを越え、北へと向かう。峠に差し掛かり、茶屋らしきところで休憩することにした。とりあえずのどが渇いたのでジュースを注文する。そこにたむろっている人たちに尋ねるがウッドペッカーがどうとかこうとか言っていて訳がわからない、その中で背の小さな一人の男性がこれを採って来れば良いのか?と金を要求してきたが、まだドミニカに来て間もないのでとりあえず断った。


       
茶屋でのひとコマ  ドミニカの少女

茶屋を後にしようとすると少年二人を下の家まで送っていってくれとの事、少年二人を乗せ下っていくと、果樹園を経営しているらしい家のところで止めてくれとの事。私達もおりて食料を調達することにした。ここで運命的な出会いをする。旦那のスティーブンと奥さんのジネットだ。


       お世話になったスティーブン一家

この日は、バナナやグレープフルーツなどを買い込んでさらに先へと進むことにした。ずっと北のほうまで行きカリブリゾートの看板を過ぎる。途中、ひとりの青年をガイドに雇った、陽気なカリビアン(エロエロカリビアン?)のジミーである。すっかり日も暮れてきたがカブトムシの採集はこれからである、ジミーがヘラクレスを見たというところへ向かう。ジミーは、ヘラクレスのオス同士のケンカを見たことがあるという、わたしたちもそんな場面に是非出くわしてみたいものだ。1時間ほど車を走らせその場所へ着いた、あいにくの雨模様だ。ここは、果樹園の中らしいが、大きな倒木がいくつも倒れている、「こういうところについているんだ」とジミーは言い、倒木を壊したり倒木に中の劣化した部分を手でかき出している。雨に濡れながら、泥だらけになって私達よりも一生懸命探してくれている、なんだか申し訳なくなる位だ。かなり探したが見つけることができず、帰路につく、途中、車の外から「バンッ!」という爆発音が!巨大なカニを踏み潰してしまった、アーメン(−−;。


  爆発したのは多分このカニさんの仲間、ゴメンネ・・・

しかし、その後はジミーのエロ話で盛り上がった。ジミーの夢はドミニカ中自分の子供で一杯にすることだそうだ。別れ際にジミーと明朝に約束をしてまた、昨日のポイントへと車を走らせたが結局今日もヘラクレスを見つけることはできなかった。

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今日は、朝からジミーと聞き込み&採集をする。


 
ジミーとジミーの姉とその娘 右はジャッキー・ヤマウチ  ヘラクレスの集まるらしい巨木

ジャングルの中へ入ったり、夕べの果樹園の辺りで材割をしたが巨大なクロツヤムシとその幼虫と小さなカブトムシかコガネの幼虫しか採集できなかった。ジミーと別れて南へと車を走らせる。しばらく行くと茶屋が一軒二軒とある、また入ってジュースを一本ずつ飲みながら茶屋の主人にヘラクレスの話を持ちかける、すると、ちょっと待っていろと言って奥のほうへ入ってしまった。まさかヘラクレスを持っているのだろうか?茶屋の主人はなんとヘラクレスの死体を4匹持ってきた。これには私も山内氏も驚きを隠せなかった。


    なんと、一番左の個体はブルーヘラクレス

山内「三日目にしてここまで情報が集まった、もうちょっとだね!」 ひで「そうですね、ヘラクレスに近づいて来ましたね」 ひで「このヘラクレスは、どこで採集したんですか?」と茶屋の主人に聞くと、なんとすべてこの茶屋の前で採集したとの事、しかし個体数は少ないらしくめったに採れないとの事。やはり数が多い虫ではないらしい。山内「これは、いくらなら売ってくれるのか?」と聞くと茶屋の主人は「これは売れない。」とのこと、でも二人が相当物欲しそうにしていたのか、角折れのオスを一匹プレゼントしてくれた。ご主人に御礼を言って茶屋を後にする。すぐ近くにもう一軒、茶屋があるので情報収集にでもなればと思い入ってみることにする。ここでは、一人のカリブインディアン系の女性がカウンターに立っていた、これが私達のドミニカでの採集をエンジョイさせてくれるマファーとのはじめての出会いだった。「ハロー」、マファー「どこから来たの?」 ひで・山内「日本からです」 マファー「日本人は、映画の中では悪いやつばかりよ!」とけげんな顔をする。 ひで・山内「日本人は、悪いやつは少ないんだ、本当だよ」と言ったが、このときはあまり信じてもらえなかったようだ。これは、山内氏がクンフーの達人ぽい顔をしていたからに違いない。 マファーにヘラクレスの絵葉書を見せて見たことがあるかと尋ねると、「Sometime walk!」と茶屋の前を指差して言っている。やはりヘラクレスはこの辺りに棲んでいる。ただ、「Sometime」はいったいどのくらいの頻度を示すのだろう?しばらく周りの林をちょっと見て、またマファーの店に戻るとこんどはご主人が居た、シャイアンである(いじめっこのジャイアンではない)。彼らには後々本当にたくさんお世話になる。シャイアンは、すごく雰囲気の良いマスターで非常に温厚で聞き上手な男性で人に好かれるタイプだと思う。店の常連もいい人ばかりなので拠点をここにすることにした。シャイアンレストランでサンドイッチとチキンを食べてスプライトを飲む、これが私達の日課?となった。夜食のサンドイッチも作ってもらい日が暮れたところでまた外灯採集へと向かう、この日も結局ボウズで山の中に車をとめて寝る、そして凍えて目を覚ます。これも日課となってしまったようだ。ヘラクレス採集への道は険しい・・・


   左からシャイアン、シャローン、マファー、シャミカ

 

・其の弐へつづく

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