★「ソロギター・マガジン」第2号   2010年12月21日       

ギター1本で和音とメロディーを同時に弾く方法を追求するWEBマガジンです。アドリブや作曲も出来るようになりましょう。
                   
2010年11月20日 創刊
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第二回 循環コードとトップノート#2
「経過音?withリハーモナイズ、アンティシペーション?   
   Page1                    著者 能勢 祥二郎       2010年12月21日

★第2回です
 前回は循環コードでのヴォイス・リーディングとトップノートをメロディアスにつなぐアドリブへの応用方法を行いました。今回は「経過音」も使ってみましょう。例としてこんな感じに応用できます。さわりです。
        EX1-0

前回は刺繍音、ブロークンコードを使いましたが、経過音はあるひとつのコード内でコードトーン同志をつなぐ場合と、続くコードのコードトーンへつなぐのと2種類あります。英語ではPassing Noteです。それでは順を追ってディティールをぎんぎんに見て行きます。

★まずコード内でつなぐ場合を例にします。 ルートは低音で弾くとして、まず各コードの5thと3rdを結んでみます
この段階では別にどうということはありません。和音で鳴らしてから原型を単音だけで弾いてみます。単純なものです。
Cです。

        EX1-1

すなわちソ→ファ→ミですね。もちろんミ→ファ→ソと上がってもいいし、ミ→レ→ドでもド→ミ→ソでもかまいません。両端にコードトーンがあることが条件です。△7コードならソ→ラ→シ等も可能です。当然9thや6thも可能ですが、基本として今は5th→3rdで他のコードも統一してやってみましょう。

コードの進み方は前回同様C major(ハ長調、C Dur)でI→VI 7→IIm7→V7の繰り返しを例にします。日本語で唱えると「いちろくにーごう」ですね。
VIはminorではなくドミナントコードですのでドは#です(セカンダリードミナント)。のちのち♭9や♭13なども加えますが、今は「素のまま」で。
循環コードを例にとるのは、くり返せるので練習に適しているからです。そしてイントロやエンディングにはしょっちゅう出来てきますし、曲本体にも使われるからというのは前回書いたとおりですね。他にも循環させられる進行がありますが、おって登場します。

それでは他のコードA7, Dm7, G7 でも5th→3rdをおこなってみます。まだテンションもいれず、リズムも出さず、ポジションと指使いを確認する段階です。この段階をおろそかにするとあとで見失います。

        EX1-2

 5th→3rdに経過していくということは当然間に4thを弾くこととなります。4thはコード外音の中でも注意を要する音で、特にメジャーコード、ドミナントコードの場合は3rdと半音でぶつかりますので、長く伸ばすとディソナンスになります。ですが、それをおそれていてはメロディーが創れず、ブロークンコードだけ弾いてるようなことになってしまいます。弱拍で経過するだけなら可能とか、8分音符以下なら可能(スローバラードなら16分音符以下)ということで気を付ければOKです。これは、「じゃ弾いていいんジャン」てわけですが、あくまでもコードトーンと均一な価値ではなく、凍った湖の上で氷の薄いところを割れないように気を付けながら通り過ぎるみたいな意識を持ちましょう。
次にルート音とトップノートの5thをまず鳴らし、3rdに経過する骨格だけ弾いてみます。

        EX1-3

 するとCのソ→ファ→、A7の→レ→ド#でミが続いていることに気づきます。2回弾いても問題有りませんが、旋律の生命力を出すためにここでミは2回弾かずにそのままド#まで下がります。この場合次のコードへの経過音となるわけです。A7に変わった強拍で3rdにたどり着くようつないでいるわけですね。
 それで、早く到達した分、後ろにスペースができるので何か入れられます。ベースを動かしたり、和音で合いの手を入れてもいいです。ここではテンション入りのコードをいれてみます。

        EX1-4

 次にDm7のラ→ソ→ファとG7のレ→ド→シを見てみます。するとファとレの間にを入れるとラ→ソ→ファ→→レ→ド→シとスケール音を順に下がった状態につなげることが出来ることに気づきます。これもただIonianを弾いただけじゃんと解釈していてはハーモニーの有機構造は習得できません。進行している最中のコードの3rdをターゲットにして経過音でパズルのようにつなげるわけです。
 この各コードの3rdは重要で、「テルツ」といいます。テレスのヘルツです。この「テルツ」ねらいのエクササイズはまた別の機会に詳しくやります。というわけでDm7とG7部分をつなげて弾いてみると・・

        EX1-5

 ところで3rdの中でもドミナント・コードの3rdはLeading Note(導音)で、クラシックの和声では最も重視しています。特別扱いです。これは半音上に吸い寄せられてトニックの主音に解決するからです。こういうのを限定進行といいます。
 もちろん現代的なポップスやジャズ・ボサノヴァでは必ずしもドに解決するとは限りません。メロディーはシに留まってメジャー7になったり、トニックの6のラに下がったり、ドを通り越して9thのレに行くこともあります。ペンタトニックでシは飛ばされてソ→ラ→ドと行ったり、ベースも代理コードのmやm に進んでドに行かない場合も多いです。ですが、音楽の発展の歴史を端折りすぎるとブラックボックス化してしまいます。まずもとの音の持つ性質を理解してから、変化球にしていくのが真の実力をつける本筋ですので、インスタントなペンタトニック利用講座に執着しないようにしましょう。
さらに、ファも半音で吸い寄せられてミに降り立ちます。ドミナントコードの7thにあたるわけですが、限定進行で解決先コードの3rdに行く限定進行なのです。
      
    つまりまずシ→ドに、ファ→ミに解決する「限定進行」の感覚をしっかり身につけることが重要なのです。

そこだけ抽出して弾いてみましょうか。まず単音で、次に同時に弾きます。ファ→ミ、シ→ドのどちらが上の音域になっても構いません。マイナーコードに解決する場合はミはフラットさせます。好きなように転調が可能です。

        EX1-6

 片方が下がり、片方が上がるので「反進行」もしくは「反行」と呼ばれます。英語ではContrary Motionといいます。この2音だけで、たとえばこのようなこともできます

        EX1-7

 どこでもドアです。関係調でも非関係調でも行けます。どの音だっけ?となかなか覚えられない人は「ファミリー・シード」と暗記すればいいでしょう。単純な状態としてでもエンディングでキース・ジャレット、パット・メセニーといった現代を代表する旗手が使ったりします。
 ところがジャズやポップスの未曾有に市販されている理論本でよくあるのですが、この心臓部をしっかり説明して例を示さずに、すぐダイアトニック・コードで4和音7th入りで7種類並列してしまうと、どの音がどういう意味を持っているのかが習得できないままになってしまいます。
 各声部の意味が分からずただコード名の指示に従って上がり下がりするだけになってしまうわけです。実際そういうケースが多く、単純なG7→Cを聴いても解決したかどうか分からない、という耳になってる人が多いのです。ほとんどの人が義務教育の音楽の授業で「起立(C)、礼(G7)、着席(C)」で耳に馴染んでいるはずなのですが。G7が鳴ったままだと頭を下げたままで座れなくなってしまいます。「聞こえるもの」と「意味」と「楽器の技量」とが結びついてないんですね。初心者のジャズセッションで、全く進行感も意味も持たない音を右往左往しているのはそういうことで、帰るべき家を知らないのです。
 一方ボブ・ディランの「風に吹かれて」「ミスター・タンブリン・マン」やマイケル・ジャクソンの「ベン」が今でも愛され聴かれ歌われるのは、解決感の骨格がしっかりしているからでしょう。「スタンド・バイ・ミー」やスティーヴィーの「心の愛」などもそうです。ですから基礎が出来ていない人がVIm 7やIIIm7 など副和音を7thで並べたりすると、和音のファンクションが薄まってしまい、ただ抽象的にそこに音があるだけになってしまうのです。
 すると「よくある進行だから」とか、「メロディーが上がるからコードも上がる」「たまたま押さえやすい」みたいにあさはかなことになってしまい、音そのものの意向を聴いていない、無理矢理動きを押しつけているだけになってしまいます。それぞれの音どこへ行きたいよ、と思っているか聴いてあげなくてはいけません。音ひとつひとつが生き物でどういう習性を持っていて、どういう遠足に連れて行ってあげるかを配慮しましょう。

 もともとは西洋音楽も古い時代には単旋律(モノフォニック)だったのが、まず二つのパートが平行に動くようになっていきました(平行オルガヌム)。800年ほど前。それが時間をずらしたり、反対方向に動いたり、より自由に絡むようになっていったわけです(クゥントゥラ・プンクトゥス、英語でCounter Point)。すなわち対位法。そしてシ→ドという解決にファ→ミという別の動きも同時に進行させて解決感を得たい、その結果上降&下降が同時に動く「反進行」がうまれ、美しい、そのファはドミナント音のソから数えて7番目の音だ、ということでセヴンス・コードが生まれたわけです。これは、難しくトライトーンとか言う前に、まず旋律の意味です。それぞれの音の主従関係や引力がその動きを欲しているので、むしろモードです。それが3声、4声と増えていきました。バッハの曲が現代でも美しく深遠に感じられるのは、和声より対旋律を中心に作られているからですね(ポリフォニック)。楽器の構造も進化しより緻密になっていきました。それを、鳴った瞬間に縦に見たらソシレファになっているということで形式化して和声という考え方が発展し、1700年代にフランスのフィリップ・ラモーによって大系づけられたのです。それがのちにコード(歌うChoral→複数でChords。暗号codeはないので勘違いしないように)という考え方につながるわけです。
 というわけで解決するはずのドがシのままというのはバロック音楽や中世まではありません。どのコードにも機械的に1.3.5.7と重ねたわけではないのでC△7やAm7といったコード設定は無かったわけです。使われる場合も、前の和音に7thの音があらかじめ「予備」で鳴らされてからとか、この音に解決すべしという制限があったのです。のちに伝統和声で出来ることの限界が来て、教会音楽からも離脱していき、ラヴェル、ショパン、ドビュッシーといった人たちが付加和音や偶成和音、係留音、保続音、オスティナート、コンポジットスケールなどを駆使して色彩感や印象を表現したあたりから許容されるようになっていったのです。
 アメリカ・ヨーロッパなど海外ではキリスト教徒が多いので子どもの頃から毎週日曜日に、伝統和声の使われた賛美歌、聖歌を歌ったり聴いたりを何百年もくり返してきて、もとから体にあるのですね。歌唱力に長けたシンガーは聖歌隊やゴスペル育ちの人が多いのはご存知でしょう。当然「聴音」も優れているわけです。カントリーも骨格にこれを持っています。だからノラ・ジョーンズやテイラー・スゥイフトが高評価で受け入れられるわけです。
日本はそういう素地がありませんから、この部分は後天的に学習・体得する必要があるわけです。メインページHeal-jamのコメントでたびたび書いているとおりです。
 ただ、今ここでこの和声の基礎部分を説明したりエクササイズが長いと、早く都会的なサウンドにしたいな?、みたいな短絡的な欲求のある人はモチベーションが下がってしまうので、今回もシまでは行ってますがドに行ってません。そのかわりベース音がドに行ってます。


 ・・・ということを踏まえた上で若干リズムを出してみましょう。メロディーが低い音に来るときは伴奏音は3音や2音でも構いません。それでは各コードをゆっくりつなげてみましょう。次のようになります

        EX1-8

  これをもとに、多少リズミカルに弾いてみます。
 
        EX1-9

  ベースをこうするとジャジーになります。

        EX1-10

各コード2拍目に次のコードの半音上または半音上を弾けないか考えてみるわけです。つまりその小節内のコードを一生懸命説明するよりも、次のコードへアプローチする流れをボトムにも作るわけです。トップが雲の流れなら、川の流れです。
 さらにスムーズで美しい流れを作るのに、このボトムと経過で動いてる最中の音をトップノートとしてコードを考えるとこのようになります。

        EX1-11

 単純な旋律なのに大分ジャズっぽくなったでしょう?こういうのをリハーモナイズといいます。この場合はたまたま途中の旋律をトップノートとしてボトムとの間の内声で発生したものですから偶成和音の部類に入るでしょう。ここからは字面だけ読んでもおそらくつかめないと思います。実際にギターを持って指で押さえたときに意味が分かります。もし具体的にコードネームを言うとしたなら、1拍ずつ・・

   C△7→G#dim→ A7→C#dim→ Dm7→ A♭7・13→ G7→D♭7→ Cとなります。

 この中でG#dimはA7へ行くためのドミナントすなわち E7/G#とも言えます。G#dimとしてはトップのメロディーがなのでdim♭13とかdimオーギュメントと言うのが正確ですが。
E7で「見る」と第一転回形でボトムのG#音はテルツ(3rd)でリーディングノートですから、先ほど説明したシはドに行く限定進行が満たされるわけです(実音ではG#→A)。 伝統和声で言うなら「度のV度九1転」となります。
 4弦ファの音はEの半音上、つまりテンションで言うなら♭9で、ボトムとの間に長7度のインターバルになっているのがみそです。
残り拍はすでにEX1-4においてテンション和音を入れることになっていたのでA7に♭13なり♭5なり♭9なり好きなものを入れてDmに行きます。EX1-11の例ではさっきの手法を使ってC#dimにしてます。これはA7の♭9であるB♭音(4弦)を鳴らし、ベース音をルートの変わりに次に来るDmの半音下にしてると自動的にディミニッシュ・コードになるのです。偶成和音でパッシング・ディミニッシュの一種です。もとのコードネームで言うとA7・-9/C#でノンルート。やはりテルツをボトムに持ってきてるわけですね。伝統和声で言うと「II度のV度九根省1転」となります。

 そしてDmに解決した後2拍目にA♭7の13が来ます。これは何者か?
 これはトップがファになる瞬間で、ベースがDm7からG7に行くために半音上A♭の時で、3弦ではDm7の7th=ドが鳴っている状態です。このドはA♭から見ると長3度にあたる音なのでルート、Major3rd、6th、が鳴るわけだからA♭6と呼んでもいいですね。偶然そうなっているので偶成和音です。

   4弦はどうしようかな。F#を弾いてみます。・・・お前はどこから来たんだ?
 これは次がG7なのでその7thのFへ半音上からアプローチしてみようかなというわけです。低音のA♭もこのF#も半音で接近しているクロマチック・アプローチで、CもこのあとGの3rdシに行くわけですから、半音でずるっと下がります。トップのファも裏拍ながらミに下がるのです。で、A♭から見ると短7度です。結果、下からA♭、F#、C、Fが鳴ることになり、この状態にコードネームを与えればA♭7・13というわけです。7thが入った瞬間6thはテンションの13thに数えなおされるからです。
 3弦Cは解決予定のGを一時的に主音として見ると4度のファにあたる音、4弦F#はシの導音、つまり「ファミリー・シード」のコンビが形成されています。だからGへ向かう流れが促進されるわけです。


★ところでこの和音をぎんぎんに観察してみると、実はD7系と言えることが判明します。つまりこのファミリー・シード・コンビは、F#音がDから数えると長3度(テルツ)で、C音はD7の7thだからです。トップのミは9th、ではボトムのA♭音は?Dからは♭5にあたります。
 つまりコードネームを言うなら「D7・9・-5/A♭」でノンルートです。伝統和声で言うと「V度のV度九根省下変」。このD7解釈はどこから来たか?低音がA♭なんだからA♭7の13でええやんけと思われるでしょうが、「行き先」がGなのでG調でのドミナントを見ているわけです。
 本来のトニックCではなくGを一時的にトニックとしてドミナント・モーションを行う。これを「セカンダリー・ドミナント」といいます。その中でもこの場合行き先のGは本来のドミナントとしてCへ「帰る」働きを果たすわけなのでドミナント・コード続きとなる。それでこの流れを「ダブル・ドミナント」と言います。クラシックでは「ドッペル」といいます。転調ではありません。半終止でもありません。副です。
 常套手段としてしょっちゅう出てきますが、冒頭から登場する曲も多く、「Love Me Tender (原曲オーラ・リー)」、スティーヴィーの「可愛いアイシャ」でIsnt She Lovelyのリーの小節、ボサノヴァ「イパネマの娘」、シカゴの「Saturday In The Park」イン・ザの小節、Jazzスタンダードなら「But Not For Me」などです。リハモではなくメロディー自体が♭5で登場するものも多く、ボサノヴァ「デサフィナード」や「Take The A Train」等があげられます。
 というわけで、ドッペルの状態になっているため、ハーモニーのしくみからはD7・9・-5/A♭ですが、言うのも長ったらしいし、書いてあるのを見てとっさに弾くのもいやでしょう?ですので「A♭7・13」のほうが簡素でいいし、たんに「A♭13」でもいいので、言うにも紙面節約にもいいのです。

 一方ジャズやボサノヴァを学んでいる人間は骨格のコードさえ書いてあれば、それをもとに好きなようにテンションを入れたりアドリブのスケールを導き出して弾くので、ただD7と書いてあれば、ドッペルが起きてるなとすぐ判断して自分の即興を入れられます。むしろA♭7・13と書いてあると、あれ?曲特有のハーモナイズが施されてるのかな、と思って枠が狭くなる。でも・・ジャズでクンフーをちゃんと積んでいる人はこうした知識や経験則をすでに持ってるので、ああ、ドッペルの「裏」ね、と瞬時にプロファイルして対応できるわけです。ってことで表記方はお好きなほうを選べばいいのです。
 さてこで登場した「裏」(うら)ですが、本来「Substituted Chords」といいます、でも t が3回で日本人は言いにくい。ジョ-・パス氏は教則ビデオで連発してますが。それで「サブコード」と略す人もいますが、サブは下の、とか予備の、という意味があり、サブドミナント、サブメディエントという単語がすでにあるので、混乱しやすい。あれ、Fの仲間?とか。代理コードという意味でも、C△の替わりにAm7やEm7、F△の替わりにDm7を頻繁に使いすがそ、そういうダイアトニックのものとは全く違う。そこで「裏コード」という呼び名を発明した人がいて、使いやすいので定着したのです。
 これは何も暗黒街で使われる謎の暗号でも、18才未満は使ってはいけない和音とかいう怪しいものではなく、オクターブのちょうど半分、♭5の位置関係で反対側なので「裏」なのですね。日本とブラジルみたいな関係。どちらから見ても減5度の関係になってます。減5度というのは伝統和声では悪魔の音として忌み嫌われてきましたが、それでも解決先の半音上にバスが来る「ナポリの6度」が近い状態です。私は「ナポ6」と呼んでいます。ということで、面白いことにどちらをルートと見ても「ファミリー・シード」のコンビが入っているのです。ルートが逆になり、同じ音なのに3rdが7thに、7thが3rdになる。つまりこのコンビが居て♭5音があるとたいてい「裏」ッかえせます。それでジャズを学んだ人間は経験則から次のコードの半音上のドミナント7thコードを弾くクセが付いていると思います。だからジョー・パス氏もしきりに「ダぁーミナンセヴン」とくり返し言い、原型はこのフォームだよと単純なGとかDとか鳴らしてみせるわけですね。

 次にG7にたどり着いて何するか。本来の「ダぁーミナンセヴン」なのでいろんなオルタード・テンションを入れてお楽しみ頂けるわけですが、せっかく覚えた「裏コード」を使ってみようではありませんか。
      さてGの裏は?・・・

 答えはD♭です。Gから♭5の音、このD♭は「行き先」の半音上でもあることは理解できてるでしょうね?
これをルートにして、セヴンスにするとよろしい。でもただ適当に7thコードでナインスなどを無神経に4音弾くのでは、よくある「なんちゃって本」になってしまいます。ソロギター表現を追求するマガジンで今回のテーマは「経過音」を精密に解剖しているさなか、そしてトップノートは5th→3rd で「本当のシ」の音に来てます。セカンダリーや転調ではなく正統ドミナント・セヴンス・コードのテルツにして主調第音すなわち導音の担い手「Si(発生イタリア)」別名「Ti」!。 
 このお方が3弦に来てらして、4弦「Fa」と鉄壁のコンビで、裏の「D♭」をサポートに得るとなれば他に何を欲するというのだ?
深夜アニメ「一騎当千」でいえば孫策伯符に玄徳の龍コンビ、そこへ関羽雲長がいる状態みたいなもんだから最強でしょう。
   ということでこういう場合は3音でいいわけです。ジョー・パスさんも良くそうされております。
もし4声にしたいとか、さらにテンション使えないんすか?とか蒙チャンか子龍にも参加して欲しいンすけど、という方はもう少々お待ちを。
ここまでを整理するともとのコードと比較して・・

  C△7→ C△7→  A7 →  A7 → Dm7 → Dm7→ G7→ G7 → C  という単純なものが・・

  C△7E7/G# A7 → A7/C# → Dm7  D7 G7→G7-5 → C   という解釈で2拍目が替わり・・

  C△7G#dimA7 C#dim Dm7 A♭7・13 G7D♭7→ C  とリハモされたわけです。

勘のいい方はすでにお気づきのことと思いますが、太字がコードの変わる強拍で、ここはそのまま残っているということです。
そして変えられた2拍目のうち緑がセカンダリー・ドミナント、紫がdim解釈、赤が裏コードです。そして重要なことは、コード進行で好き勝手に変えたのではなく、経過音メロディーを活かし、ボトムの流れとの間に生まれた和音ということです。旋律をスポイルすることなく有機的な流れを作る手法で、日本の教則本には出てこない手法ですね。しかも逐一音付きで。
トップを雲の流れに例えるなら、2番目の音は風のながれ、3番目は川の流れ、ボトムは地下水の流れととらえてもいいでしょう。こうして自然の流体の動きを音で表現してみたい、それが私の考えるソロギターです。


★さて、さきほどラストのD♭7、4音に出来ないかな、と感じた人、まずボトムにルートのGを加えると、こういう音です。
        EX1-12

 ボトムのソが続いてやや面白味に欠けるかも。蒙ちゃんだったらよかったけど、周瑜公瑾あたりな感じ。そこではじめのGのほうをテルツにしていつもの紫の手法、Bdimとするとこうなります。 
        EX1-13

 これでもいいのですが、いっそのことこうしたら?

        EX1-14

 ちょっとォ?何してくれちゃってんの?かっくいいじゃん。って感じたらジャズに向いている人です。
途中コードの響き確認できるようゆっくりにしたりベースラインだけにして弾いてあります。
これをもし具体的にコードネームを言うとしたなら、1拍ずつ・・

   C△7B♭7-5 A7 E♭7・9・#11 Dm7 → A7・-13 → A♭7-5 → G7-5 → C#△7となります。

これは先ほどから行っているディミニッシュに読み替える部分も、伝家の宝刀「裏コード」でリハモしたわけですね。この中でB♭7-5はA7へ行くためのドミナントすなわちE7の裏で、E♭7はA7小節でもともとDmに行くためのドミナントだから裏っかえして、入れたければトップにもともとのルートA音を入れても良い。するとA音はE♭から数えると増11度(増4度のオクターヴ上)だから#11thです。メロディーが空いた拍なので5音まとめて弾いても、抜粋しても、アルペジオにしてもかまいません。
 さて、問題はDmに行った後です。これまで太字、つまりもとのコードの変わり目1拍目はいじらなかったわけですが、ついに正式ドミナントのG7が変更されました。それもG7の転回形とは違うようですぞ。積極的にリハモしてるのですね。ここをA♭dimにするのもありですが、さっきのリハモだとすでにこの拍A♭になっているので続いちゃう。そこで目先を変えてみました。太字拍に色がつきましたね?何色?赤です。ということは裏コード。
トップは変えずにG7にも4音与えてよ、というオーダーをかなえるためルートを入れてG7-5にしたけれど、今一華がないぞ公瑾、そこでベース音に動きをつけるため、はじめのほうのG7を改造したい、ところが、トップは5thのレで、半音上下の-5や♭13が使えない。すぐとなりの音でディソナンスになるからだ、むぅ・・ルートと完全五度は教会音楽では完全な協和音ですけども、硬い響きだな・・。でもボトムを♭9に上げてA♭にすることはできる。しまった、この前の拍、すでにA♭になっているんだった。ンじゃさかのぼってそのA♭を考え直してみよう、という具合に後ろから流れを逆にたどっていく訳です。それでDm2拍分とトップをぎんぎんに観察します。するとテルツのファをA7の♭13と読み替えることが出来る。しかしすでにA7からDmに解決した後だど。・・ンじゃまたA7に行ってみる?という発想です。1本いっとく?みたいな。いったんマイナーコードに来たのをまたドミナントに戻って解決し直す、というやつで、サンバで良くあるヤツですね。これだ!そしてDmに戻るけどトップはレすなわちルート音だから、マイナーコードじゃなくてもいいってわけでドッペルのD7にしちゃえばG7拍に食い込んでても許してくれるだろう。おまけに裏コードにしちゃえ。というわけで本来G7の1拍目がD7に、そして2拍目は裏のA♭7-5になったわけです。これによってボトムがA→A♭→Gとクロマチックで地下を流れてくれる。蒙チャン(呂蒙子明のことね)、前の拍で来たか、ありがとう。


★これで循環するわけですが、いつかはトニックに解決して終わる。その時トップがただ主音のドじゃ、イマイチだなと感じる人もいると思います。同じ楽器内でボトムとオクターヴになっちゃうし。次のEX1-15と16を聞き比べてみましょう。
まず15の、ひとつめがG7-5の4音からストレートにCへ(ド、ミ、ド 3音)。ノーマルの終止形。
ふたつめはトップはドだが6のラを混ぜてる。押さえにくいな。少し色彩は出ますな。(ド、ミ、ラ、ド)
みっつめはトップ自体を6のラにしてみました。可愛い感じですね。3声。(ド、ミ、ラ)
最後はこれを4音でということでボトムにGを添えます。ちょっと重いですね。クラシックギターなどでブリッジ寄りピッキングで弾くと使えるとは思います。
        EX1-15
人にも寄りますが、もう少しモダンさが欲しいかもと。そこでこのドというものをぎんぎんに観察するわけです。△7の響きはきれいだが、やはり和声法としては3弦のシの限定進行を成就させてあげたい。そこでトップはそのままで逆にボトムを近づけて長7度にしたら?とコロンブスの卵的発想に至る。つまり半音上の△7コードだ。弾いてみよう。G7-5からC#△7に行きました。

        EX1-16
来ターッ、いいね。ここで趙雲子龍が来てくれたか、さすが(笑)。ふたつめはボトムにG#を添えて4声です。そのあとC△7に戻ってもいいし戻らなくてもよい。
あらためて整理すると・・

  C△7→ C△7 →  A7 →  A7  →   Dm7 → Dm7→  G7 → G7 →  C  という単純なものが・・

  C△7E7/G# A7 →  A7/C# →  Dm7 →  A7 →  D7 → G7-5 → C という解釈で2拍目が替わり・・

  C△7B♭7-5 A7 E♭7・9・#11 Dm7 → A7・-13 → A♭7-5 → G7-5 → C#△7 とリハモされたわけです。


★前回の刺繍音、今回のリハモEX1-11と今のEX1-15と、ベースラインとコードだけにしたりなどを組み合わせてちょっと弾いてみます。
        EX1-17

★アドリブなのでまだ説明してない要素がいろいろ入ってます。アンティシペーション、ダブルストップ、2拍3連など。でもシングルラインの8分弾きではなく、ハーモニーのトップとボトムを活かした弾き方です。

★それでは今度は逆に3度を先にして5度へ経過してみましょうか。
各コードの3rd→4th→5thで

C ミ→ファ→ソ  A7  ド#→レ→ミ  Dm ファ→ソ→ラ  G7 シ→ド→レ

というのが骨格になります。Page2へ続く。

   ★この続きは数日後に次のページで。おなかいっぱいでしょう?17こも音源つけてるし。今回はクリスマスプレゼント特大号ということで。
   数日後にこちらへどうぞ→第2号のpage2

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