アドフリミエロ
※本書の著作権利は作者である林仁にあり、許可無く引用や複製することを固くお断りします。




第4章

---- スケール・アプローチ ----

1 モード・スケールと対応コード
  & セカンダリー・ドミナント

        すべてのスケールを覚えようと努力の日々を送っているぺん太だが、それぞれの
        モード・スケールの使い方が良く理解できずに苦戦していた。

        ぺん太「マエさん、今日は早く終わるんでしょ?」
        マエ 「まあね!」
        ぺん太「良ければチョット一杯・・行きませんか?」
        マエ 「いいね!・・・でも、何か怪しいな?」
        ぺん太「いや、実はどういう時に何のスケールを使えばいいのか良く分からなくて・・」
        マエ 「モードとコードの対応ってことか?」
        ぺん太「そうです、それです!」
        マエ 「よし! そういうことなら、ぺん太のゴチということで!」
        ぺん太「やっぱし〜!」

        マエ 「プハー! 最初の一杯はやっぱ生ビールだな、ウメ〜! よし次は焼酎かな。」
        ぺん太「マエさん、酔っぱらう前に、お願いしますよ・・」
        マエ 「あっ、そうか! 今日のテーマね。じゃあ、これまでのスケールに対応している
            コードも含めて整理してみるか。」

        枝豆をつまみながら、マエストロの説明が始まった。


        ◎アイオニアン: メジャー系コード. 6th. メジャー7th. メジャー9th。
        ◎ドリアン  : マイナー7th. ツー・ファイブ(IIm7→V7)。
                  ☆ロック系のメジャーでもマイナーでも無いリフで構成されているような曲。
        ◎フリジアン : マイナー7th. 
                 *ロック系では半音の動きが入った、少し魔界系のリフで構成されたような曲。
                 *コードEとFを繰り返すフラメンコのような時にあえてCメジャーを押し通しても面白い
                 (その際G♯の音を加えるとスパニッシュ・モードと呼ばれるスケールになるが、
                  EのHMP5thビローを意識してもOK)。
        ◎リディアン : 1度以外のメジャー7th & メジャー9th.  メジャー系♯11th
        ◎ミクソリディアン: 7th. 9th. 11th. 13th. ☆(上のドリアンの項目と同じ)
        ◎エオリアン : マイナー7th.
        ◎ロクリアン : マイナー7th♭5

        ◯リディアン7th:メジャーKEYに於ける2度7thと♭7度7th(KEY=Cの場合、D7とB♭7). ♯11th
        ◯オルタード : 5度7th.(メジャーKEYでもマイナーKEYでも使え、テンション的には、-5、+5、-9、
                 +9、+11、−13などに対応している。)そして、7度7th。(KEY=Cに於けるB7)
        ◯HMP5thビロー:メジャーKEYでは3度7th. 6度7th。 マイナーKEYでは5度7th、
                 (特に♭9thとは相性がいい。)
        ◯ホール・トーン:5度7th. オーグメント・コード(+5). オルタードの使い方と似ているので、
                 オルタードとホール・トーンをつなぎ合わせたフレーズも多い。

        さらに焼き鳥を食べながらマエストロの説明が続く
        「今度はメジャーKEYでのダイアトニックに無いコード側から、対応するスケールを見てみよう。」

        1度7th → ミクソリディアン
        2度7th → リディアン7th.
        3度7th → HMP5thビロー
        4度7th → ミクソリディアン. リディアン7th.
        4度マイナーは、ほとんどのケースがマイナー6thで、メロディック・マイナーが最適。
                それ以外ではマイナー7thなどでドリアンを使ってもOK。
        5度7thはダイアトニック・コードのひとつだが参考までに → ミクソリディアン. オルタード. 
                ホール・トーン. (コンディミ、後で説明)
        6度7th → HMP5thビロー
        ♭7度7th→ リディアン7th.
        7度7th → オルタード

        マエ 「まぁ、こんなとこかな!」
        ぺん太「有難うマエさん! すごい参考になりました。 よ〜し、鬼に金棒だ!
            これで全部スケールは覚えたことになるんですよね?」
        マエ 「イヤ! 他にもあるんだけど、これだけでも十分対応できると思うから・・・、 あっ!」
        ぺん太「どうしたの? マエさん!」
        マエ 「忘れてた! ディミニッシュ。」
        ぺん太「ディミニッシュなら知ってますよ。 短3度進行(1音半『3フレット間隔』)ですよね!」
        マエ 「そうなんだけど・・じゃあ、ディミニッシュのテンション知ってる?」
        ぺん太「そんなの、あるんすか?」
        マエ 「さすが、ぺん太! 『そんなの』と来たか! このテンションを入れないで素直に
            短3度スケール弾いたんじゃ露骨になっちゃうでしょ。」
        ぺん太「あまり気にして無かったなぁ〜」
        マエ 「そうか〜。では、未来のスーパー・ギタリスト、ぺん太の為にディミニッシュのテンションを・・・
            あっ!」
        ぺん太「又ですか・・今度は何ですか?」
        マエ 「やばい! 今日は、かみさんと外食の約束してたんだ!」
        ぺん太「じゃあ、急いでテンションだけ・・」
        マエ 「ごめん!帰らなきゃ!」
        ぺん太「あ〜、マエさ〜ん!・・・」

        ♪又また突然ですが、練習曲で対応スケールを使い分けてみましょう。
         まずは譜面を見て、どこのコードで何のスケールを使うのかを確かめてから、
         スロー・テンポの4ビートで頑張って弾いてみよう!

        参考:Cダイアトニック・コード
             I   II   III  IV   V   VI   VII
            C△7  Dm7 Em7  F△7  G7  Am7  Bm7(-5)

                     練習曲(2)   Slow 4beat
        練習曲2


        何やら二人が譜面を見ながらしゃべってます。こっそり裏話を聞いちゃいましょう。
         ?「俺だったらE7はG♯の音を使うな〜」
         ?「でも、それだけじゃセカンダリー・ドミナントの変化音だ。 E7は3度7thだから・・」
         ?「HMP5ですか。」
         ?「それでしょ!」
         ?「C7はミクソでしょ?」
         ?「1度7thだもんな。」
         ?「Fm6は4度マイナーってことだから、Fのメロディック・マイナーで、」
         ?「そう、そう。」
         ?「あれ? これって、前にやった練習曲と似てますね。」
         ?「作者の手抜きかもな?」
         ?「でも、2カッコで変化があるな、、、」
         ?「おぉ、本当だ! ハハ〜ン、リディアン7thを使わせ・・・」
         ?「どうしたんですか?」
         ?「何か、人の気配が・・・」
         ?「気のせいですよ。」
        おっと! ここいら辺で退散しましょう。


2 コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール


        先日の穴埋めにマエストロはぺん太を食事に誘った。大喜びのぺん太はそれとは裏腹に、
        世の中の夫婦の仕組みも分かった気がした。

        マエ 「さぁ〜てと、何を食べに行こうか?」
        ぺん太「中華なんてどうですか?」
        マエ 「ラーメンか、・・」
        ぺん太「違うって! 中華料理!」
        マエ 「分かった、じゃあ居酒屋にしよう!」
        ぺん太「・・・なんで・・」

        ムカっ腹の立ったぺん太は、思いっきり食ってやろうとメニューを覗いていた。

        マエ 「え〜と、どこまでだったっけ? ディミニッシュ」
        ぺん太「テンションです!」
        マエ 「そんな怒るなよ、ぺん太! 機嫌を直してさ、まず生でいい?」
        ぺん太「それと、刺身盛り合わせ・・あとサイコロステーキも。」
        マエ 「枝豆も頼んでいい?」
        ぺん太「どうぞ!」

        注文が済むと申し訳なさそうにマエストロの説明が始まった。

        マエ 「ディミニッシュって短3度展開のスケールだけど・・」
        ぺん太「はい、でもそのままじゃ露骨だって、この前マエさんが・・」
        マエ 「そう!だから、テンションを覚えておくと便利かな・・と」
        ぺん太「どういう音の並びになるんですか?」
        マエ 「ディミニッシュ・スケールは、ルートから全音と半音、全音と半音という
            組み合わせで短3度の音程が成り立ってるんだよ。」
        ぺん太「ギターだったら、2フレット1フレット、2フレット1フレット間隔ですね。」
        マエ 「だね!これが分かれば、ディミニッシュ・コードへの対応はOKだ。」

        譜面26
        譜面26_1
         譜面26_2
        ※上は5弦スタート、下が6弦スタート。
         譜面26_3


        料理が運ばれて胃袋が少し落ち着くと、二人とも本来の音楽好きに戻っていた。

        マエ 「じゃあさ!・・ぺん太はCのディミニッシュ・コード知ってる?」
        ぺん太「それくらい知ってますよ!」
        マエ 「そのディミニッシュ・コードの中でも、1弦が8フレ、2弦が7フレ、
            3弦が8フレ、4弦が7フレットのコードをイメージしてくれる。」
        ぺん太「はい、・・OKですよ!」
        マエ 「それって、ベースがCならCディミニッシュだけど、ベースが半音下のBだと
            何て言うコードになる?」
        ぺん太「えっ、ベースがBですか?」
        マエ 「そう、B! 7フレットのバレー・コードを思い浮かべてごらん。」
        ぺん太「う〜ん・・あっ、分かった! ♭9thだ! B7の♭9th!」

        参考図10
         参考図10

        マエ 「正解! この2つのコードは同じ構成音で出来てる訳だ。」
        ぺん太「え〜と、B7の♭9thと・・Cのディミニッシュ・・あ〜、同じだ!」
        マエ 「同じコードだったら、同じスケールを使ってもいいと思わない?」
        ぺん太「・・と、言うと・・」
        マエ 「B7の♭9thというコードの時に、Cのディミニッシュ・スケールが使えるってことだよね!」
        ぺん太「なるほど!」
        マエ 「このディミニッシュ・スケールの使い方が、コンビネーション・オブ・
            ディミニッシュ・スケールと呼ばれ、普通のディミニッシュ・スケールとは区別して使うんだ。」
        ぺん太「コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール」
        マエ 「略してコンディミ! それで、♭9thっていう全てのコードに対応してるというよりは、
            オルタードやホール・トーンと同じで、5度7th(ドミナント7th)などで使うと
            有効な感じだね!」
        ぺん太「5度7thで! ・・それは、どうして?」
        マエ 「うん、♭9thっていう音を、テンションとして捉えたスケールに変化してる訳だな、
            もともと5度7thは、7thだけでも十分な役割を果たしてるんだけど、更に♭9thという
            テンションを加えたことで、より一層5度7thの存在を強調することになるからね。」
        ぺん太「う〜ん! 奥が深い! マエさん、この場合のディミニッシュ・スケールは
            どうやって使ったらいいの?」
        マエ 「この場合は、ディミニッシュ・スケールを半音下の7thコード・スケールとして
            扱うことになる。 例えば5度7thでは、そのコードのルートから半音と全音、半音と全音、
            の間隔(短3度)で音程が並ぶ訳だ。」

        譜面27
        譜面27_1
         譜面27_2
        4弦7フレット→7th       9フレット→ルート    10フレット→♭9th
        3弦7フレット→mir3rd(♯9th) 8フレット→maj3rd   10フレット→♭5th(♯11th)
        2弦7フレット→5th       9フレット→6th(13th) 10フレット→7th
        1弦7フレット→ルート      8フレット→♭9th    10フレット→♯9th

        ※このスケールのテンションは以上で分かるように、オルタードとミクソリディアンが
         混じったようなスケールで、音の使い方によってはいい意味でのカッコイイ摩訶不思議系な
         フレーズが出来る。

        譜面28 B7、コンディミ・フレーズ
        譜面28
        (タブの数字が見ずらくてスイマセン。ドの音は1弦の8フレ、レ♯は3弦の8フレです。)

        ぺん太「5度7thって色々なスケールを持ってるんですね!」
        マエ 「そうだね、それだけ重要なポジションにいて、様々な角度からの解決方があることになるね。」
        ぺん太「よ〜し! しっかり覚えて使いこなしてやる。」
        マエ 「そうだ!その勢いで頑張ってくれ! これで、ぺん太に教えるスケールとモードは終了だ!」
        ぺん太「そう言われると、何か淋しいような、不安のような・・」
        マエ 「あとは、コードをいかに捉えるかという意味で、テンション・コードや分数コード、
            そして裏コードも理解しないとね!」
        ぺん太「分数コードって聞いただけで、難しいコードってイメージが・・」
        マエ 「大丈夫! 良〜く考えれば、テンション分析できるから。」
        ぺん太「あと、 裏コードって何?・・・」
        マエ 「まあ、それもゆっくりと、」
        ぺん太「マエさん、じゃあ次回はコードを教えて!」
        マエ 「よし! もうひと踏ん張り頑張ろうか。」
        ぺん太「はい!」


        ウワー! 来たぞ〜! 大詰めまでやって来たぞ〜! 残すところ第5章のみ・・・
        さぁー、頭を抱えている諸君は、どしどし質問メールを送ってくれたまえ! 待ってま〜す。



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