アドフリミエロ
※本書の著作権利は作者である林仁にあり、許可無く引用や複製することを固くお断りします。




第3章

---- モード ----

        バンドの新曲デモを渡してあったマエストロからメールが入った。 ★新曲いいね〜! 雰囲気最高!
        でもギターのソロがもったいない、せっかくおいしいコードなのに!★  ぺん太は返信メールを
        途中まで打ってから、「やっぱ、直接聞いてみよう!」とマエストロの携帯を呼び出した。

        ぺん太「もしもし、マエさん! ぺん太です、メール有難うございました。今大丈夫ですか?」
        マエ 「あぁ、大丈夫だよ!」
        ぺん太「さっき貰ったメールのことで聞きたいことがあって・・」
        マエ 「そう来ると思ってたんだ! ★ソロがもったいない、せっかくおいしいコードなのに!★
            って、とこでしょ?」
        ぺん太「そこなんですよ! どういうことなんですか?」
        マエ 「それは今携帯じゃ、説明できないけど・・コードとスケールの関係を表す
            モードっていうものがあって・・・」
        ぺん太「やっぱし、モードか〜!」
        マエ 「まぁ、そういうことなんだけど、、明日終わってからで良ければ説明するよ!」
        ぺん太「すいません!宜しくお願いします。」

        携帯を切ったペン太は、専門学校の授業で貰ったプリントを引っぱり出して来た。
        「えぇ〜と〜、、あった、あった! 『モード』これだ!これ! よし、ちょっと予習していくか!」
        10分後には諦めて風呂に入る、ぺん太であった。


1 アドフリミエロ?? & マイナー・スケール

        パンチ「マエさんとのレッスン、いい感じで続いてるみたいだね。」
        ぺん太「そうなんだよ!これから核心に突入ってとこかな!」
        パンチ「そりゃ〜楽しみだね!ぺん太の変貌ぶりに期待してるから!」
        ぺん太「おぅ!頑張るよ!・・・ところで、マエさんは?」
        パンチ「もう大丈夫だと思うから、スタジオの方へ行ってみれば!」
        ぺん太「OK!分かった。」

        2本のギターを両手に抱えてコンソール・ブースの中へと入っていった。

        ぺん太「マエさん、お疲れさまで〜す!」
        マエ 「おつかれ!・・・おいおい!おれのギターまで持ってきちゃって(笑)」
        ぺん太「マエさん、昨日言ってた『モード』ってやつ。学生時代に貰ったプリント引っ張り出してきて、
            見たんですけど何が何やら?さっぱり分かんなくて・・?」
        マエ 「そうね! モードってちょっと厄介で、俺もしっかりと覚えるまでには
            何回も『あれ?何だっけ?』っていう経験があるよ。」
        ぺん太「なんか7つのスケールがあって、全部Cメジャーなんだもん!」
        マエ 「そう!その全部Cメジャーってところが又さらに分かりにくくしてるかもね?」
        ぺん太「そのへんを、ひとつ分かり易く教えて下さいませ。お願いします!」
        マエ 「じゃぁ、ゆっくりとやりますか〜!」

        いよいよ、この本のサブタイトルでもある「モード」のところまでやって参りました!
        ここは私(作者)からもマエストロ、いや!ミスター・マエストロに、じ〜〜っくりと
        説明をお願いしたいと思います。ではモード・マエストロさん、宜しくお願い致します!

        ♪モードとは
        これから説明するモードとは「チャーチ・モード」と呼ばれている7つのスケールを表すもので、
        一般的にモードと言うと、この「チャーチ・モード」のことを示している。
        ではモードって一体何なのかっていうと、アドリブなどで使うスケールの使い方を教えてくれる
        7人のそれぞれ個性の違う先生みたいなものだな!
        まずは、その7つのスケールを見てみよう! おっと!ぺん太の分かりにくかった例もあるので、
        全部Cメジャー・スケールとなるダイアトニックでとらえたもの(左側)と、7つのモードを
        Cだけでとらえたもの(右側)の両方を見てもらった方がいいかな!

        譜面14
        譜面14

        ◎アドフリミエロとは、すでにお分かりのことと思うがスケールの頭文字を順番に並べたものである。
         何も考えずにオマジナイだと思って覚えると便利だぞ! アドフリミエロ・・・アドフリミエロ・・・

        マエ 「ぺん太! 左側のモード・スケールを見てごらん。」
        ぺん太「あっ!これこれ! 全部Cメジャーのやつ・・これがよく分かんないんだ〜!」
        マエ 「じゃあ、これから説明していこう!」

        例えば、KEY=Cの曲があり、そのアドリブの部分がCmaj7→Am7→Dm7→G7という
        循環コードだとすると、この場合のアドリブ・スケールはCのメジャー・スケールを好きに弾いていれば
        音をハズすことが無い訳だ。それは何故かというとアドリブ部分のコードが全部KEY=Cの
        ダイアトニック・コードで構成されているからで(第1章-1参照)Cmaj7は1度、Am7は6度、
        Dm 7は2度、G7は5度というふうになっている。
        ではここで、こんな感じに考えてみたらどうだろう!

        Cmaj7   (1度=ア) の時に使ってるスケール → Cアイオニアン
        Am7   (6度=エ) の時に使ってるスケール → Aエオリアン
        Dm7   (2度=ド) の時に使ってるスケール → Dドリアン
        G7    (5度=ミ) の時に使ってるスケール → Gミクソリデイアン

        このようにそれぞれのコードからみたスケールを上の譜面に当てはめるとピッタリとはまるでしょ!

        ぺん太「そうか!コードからみて何のスケールを使っているか?ってことなんだ!」
        マエ 「そう考えた方が分かりやすいかな。この場合はCダイアトニックだから、
            すべてCメジャー・スケールだけどね! 本来は使ってるスケール上でドレミファソラシ
            (アドフリミエロ)の、どの位置にコードがあるかなんだ! でも今は1個ずつ分かりやすく、
            アドフリミエロを解明してみよう!」

        ◎アイオニアン  → コード・ルートから始じまるメジャー・スケール
        ◎ドリアン    → コード・ルートからみて1全音下のメジャー・スケール と同じ
        ◎フリジアン   → コード・ルートからみて2全音下のメジャー・スケール と同じ
        ◎リディアン   → コード・ルートからみて5度のメジャー・スケール   と同じ
        ◎ミクソリディアン→ コード・ルートからみて4度のメジャー・スケール   と同じ
        ◎エオリアン   → そのコード自体のナチュラル・マイナー・スケール 
                  (アイオニアンと同じ音の構成:6度マイナー=1度メジャー)
        ◎ロクリアン   → コード・ルートからみて半音上のメジャー・スケール  と同じ。


        マエ 「このような考え方ができると思うんだけど!」
        ぺん太「なるほど〜! じゃあ、右側にあるもう1つの方のCドリアンは、、
            B♭のメジャー・スケールと同じで・・
             Cドリアン    →  B♭メジャー・スケール
             Cフリジアン   →  A♭メジャー・スケール
             Cリディアン   →  Gメジャー・スケール
             Cミクソリディアン→  Fメジャー・スケール
             Cエオリアン   →  Cナチュラル・マイナー
             Cロクリアン   →  C♯(D♭)のメジャー・スケール。と同じになる訳だ!」
        マエ 「そう! そういうことだ!」
        ぺん太「分かってきたぞ〜! 、、でもマエさん?」
        マエ 「何? バッチリだよ!」
        ぺん太「いや! モードは理解できたと思うんだけど・・・ ダイアトニック・コードだけで
            作られた曲にもモードは必要なの?・・・」
        マエ 「そこだよ!ぺん太。いい質問だ! ダイアトニック・コードだけで作られた曲の中では、
            あまりモード自体を意識するという感じではなく、むしろコードの流れとか響きを生かす音を
            使うように心掛けるんだ! では、どういう時にモードを意識するかというと
            ダイアトニック・コードから外れたコードが出て来た時だ。例えばセカンダリー・ドミナントの
            7thとか、、あれ?、、教えたっけ・・ まぁ、いいか! こういう場面でモードの登場!
            という事になってくる。」
        ぺん太「そうか! と言うことはダイアトニック・コードをしっかりと色々なKEYで把握してないと
            ダメなんだ?」
        マエ 「まぁ、その場で考えて分かればOKだけどね。」
        ぺん太「じゃあ、早速そのダイアトニック・コードから外れたコードが出て来た時の
            モードの使い方ってやつを教えて下さいよ。」
        マエ 「その前に以前やった6弦の3フレットからのGメジャー・スケール覚えてる?」
        ぺん太「はい、たしかフレットの動きが2弦ずつ一緒のやつですよね(第1章-2参照)」
        マエ 「そう、このスケールはAのナチュラル・マイナー・スケールと音が1つ違うだけなんだけど。」
        ぺん太「たしか、Fの音がF♯に半音上がるんですよね。」
        マエ 「その通り、でね、結論から言うとこのスケールをAのドリアンとして使うんだ」
        ぺん太「どういうことですか?」
        マエ 「例えばAm→D7というツー・ファイブのコードを繰り返してる時に、6弦5フレットの
            Amポジションを思い浮かべてAナチュラル・マイナーのFを半音上げたこのスケールを
            Aマイナーっぽく(チョーキング・ポイントも含めて)演奏する とAのドリアンにあたる
            Gのメジャー・スケールが弾けているという訳だ」
        ぺん太「え〜と、Gのメジャー・スケールを弾くというよりも、Aのドリアン・モードとして、
            Aマイナーっぽくとらえるってことですね・・」
        マエ 「そういうことだ! 特に半音上げたF♯からGへの半音チョーキングは、それだけで
            『ドリアン』って聴こえてくる感じだな! それとAマイナーとしてとらえた時の♭5にあたる
            E♭の音をブルー・ノートっぽく引っ掛けて使ってもOKだ」

        参考図8
        参考図8

        ◎5弦ルートでの12フレット近辺の音使いも同じようにAのドリアン・モードとしてとらえる。
         その時のフレット・ポジションは5弦10フレットからのGメジャー・スケールと同じ。

        ぺん太「そうか〜。そういう使い方があったんだ。」
        マエ 「ドリアンはロックでも頻繁に使うから覚えておいた方がいいよ! マイナーでもメジャーでも
            無くて、リフで構成されてるような曲は、まずこのドリアンを連想するからね。」
        ぺん太「マエさん、その時のドリアン・モードの使い方は?」
        マエ 「この場合は、その曲のKEY(ルート)フレットにさっきの使い方を当てはめればOK! 
            例えばKEYがGだったら6弦ルートで3フレットと15フレット、5弦ルートは10フレット、
            っていうことだね。」
        ぺん太「ドリアンの使い方は分かったけど、ドリアン以外のモードで使えるものもあるんでしょ?」
        マエ 「そうだな〜、ロックの場合はミクソリディアンなんかも良く使われるね。」
        ぺん太「いいぞ、いいぞ! マエさん、それも教えて!」
        マエ 「よし!のってきたぞ!」
        ぺん太「はい、はい!」
        マエ 「ミクソリディアンの分かりやすい使い方として、さっきのAドリアン・モードで使った
            Gのスケールを5弦5フレットのDがルートになるD7やD9のコードの時に使ってみようか」
        ぺん太「何でDなんですか?」
        マエ 「同じ5フレットでもルートが6弦と5弦の違いにあるんだ!」
        ぺん太「そうか! 分かったぞ、どっちも5フレットの音が1弦から6弦まで全部入ってるんだ!」
        マエ 「そう!すなわち、同じ5フレットをバレーとして考えることが出来る、これが大事なことで、
            違うのは6弦ルートだとドリアン、5弦ルートだとミクソリディアン。弾いているのは同じ
            Gメジャー・スケールだ!」
        ぺん太「イヤッホー!来たぞ、来たぞ〜!」
        マエ 「このミクソリディアンの場合もブルース・ペンタと同じようにマイナーの3度からメジャーの
            3度へ引っ掛けて弾いてあげると味が出てくるよ!」
        ぺん太「マエさん、他にこう弾いたらっていうのは・・・」
        マエ 「そうだな〜、このDミクソリディアンの場合だと、1弦7フレットからの半音チョーキング
            (6th→7th)なんかも有り難いって感じだな!」

        参考図9 Gメジャー・スケール。(ドリアンとミクソリディアンの使い分け)

         参考図9

        譜面15-1

        譜面15_1

        ※上記のようなツー・ファイブ(m→」7)の進行は、よくあるパターンだが、前半2小節が
         KEY=Gのm→」7であり、このような場合はAドリアンとDミクソリディアンを使うとは考えずに、
         ツー・ファイブの進行を見つけた時点でAのドリアン・モードを当てはめればOKであり、
         同様に後半2小節はGのドリアン・モードで対処できる。(= Cミクソリディアン)

        譜面15-2
        譜面15_2

        ※やはりこれもツー・ファイブの進行、今回は2小節目のD7が次の小節でDm7に変化して
         曲のイメージを変えるという、これもよくあるパターンだ。 前半2小節はAドリアン、KEY=G。
         後半がDドリアンを使って、KEY=Cということになる。


        ぺん太「よーし!やる気出て来たぞ〜!」
        マエ 「ペン太、意欲満々のところ悪いんだけど、アドフリミエロの他にも、
            その兄弟のようなスケールがあって、、」
        ぺん太「えっ!まだ有るの〜・・」
        マエ 「色々あって申し訳ない! って何で俺があやまるんだ!?」
        ぺん太「それって、どんなスケールなんですか?」
        マエ 「マイナーのスケールを使うんだけど! どちらかと言えばそっちのスケールの方が
            アドフリミエロよりジャジィーでお洒落な雰囲気を持ってるんだよ。」
        ぺん太「ナチュラル・マイナー?」
        マエ 「いや! ナチュラル・マイナーの他にもマイナー・スケールがあるのは、ぺん太も知ってるだろ?」
        ぺん太「はい! でも何か中近東というか、アラビアンな感じで、あまり使えないっていう
            イメージがあって、、」
        マエ 「確かに! 素直に使うと個性が強すぎるかもしれないけど、それが使い方次第で
            全然違うものになるんだ! 実は7th系のコードで使うと本領を発揮してくれる頼もしくて、
            おいしいヤツなんだよ。」
        ぺん太「アドフリミエロよりも?」
        マエ 「・・何て言うのかなぁ〜、、、 アドフリミエロは7thとかのコード転回に沿った
            スケール感を教えてくれるもので、それぞれおいしい音を持っていたりするんだけど、、
            そのコードの中に溶け込むって言う感じかなぁ〜。  それに比べると、さっき言った
            マイナー・スケールを使う方は、同じ7thとか9thっていうコードでもまったく違う
            アプローチでマイナーを弾いちゃうんだから、存在感あるよね!」
        ぺん太「その存在感あるやつ、ひとつお願いしま〜す!」
        マエ 「バ〜カ! そんな簡単にいかないの!」
        ぺん太「やっぱし、そう来たか・・」
        マエ 「まずは、3種類のマイナー・スケールをしっかりと覚えないとね!  では、KEY=Aでいくよ。」

        譜面16 Aのマイナー・スケール3種類
        ◎これまでにも何度か名前が上がっている『ナチュラル・マイナー・スケール』

        譜面16_1

        ※このスケールは平行調の関係と同じであり、Aナチュラル・マイナー=Cメジャー・スケールとなる。
         (♯や♭がつかない)

        ◎ここからは初登場のスケール、まずは『ハーモニック・マイナー・スケール』

        譜面16_2

        ※このスケールはナチュラル・マイナースケール上の第7音が半音上がってメジャー7th(G→G♯)
         の音に変化しているのが特徴であり、ミ・ファ・ソ♯・ラ・ソ♯・ファ・ミと音を上下してみると、
         ぺん太の言ってた中近東風なサウンドに聞こえてくる。

        ◎3種類の最後に登場するスケールは『メロディック・マイナー・スケール』

        譜面16_3
           譜面16_4

        ※このスケールは、ハーモニック・マイナースケール上の第6音が半音上がったもの(F→F ♯)となる。
         最初に戻ってナチュラル・マイナースケールから比べてみると第6音と第7音が半音上がった
         スケールであり、ちなみにメジャー・スケールの3度の音を半音下げた(マイナー・バージョンにした)
         スケールと考えることもできる。(高いラから下がって確認してみよう)

        ※上行ラインと下行ラインが違っているが(下行ラインはナチュラル・マイナー)、これは今迄の
         慣習みたいなものであり(クラシックとか)、後で出てくるこのスケールを使うものに関しては
         下行ラインもメロディック・マイナー・スケールそのものを使ってOKである。

        ※後に説明するが、この「メロディック・マイナー・スケール」と「ハーモニック・マイナー・スケール」
         は変幻自在?とまではいかないが、色々な角度からコードにアプローチすることができる為、
         その都度使い方や呼び方も変わるが、とても重要なスケールであり、ギタリストにとっては、
         これらのスケールが上手くコードと、からんだ時には、もう「俺ってジャズ屋さん!・・・」
         ってな気分にさせてくれる。


        マエ 「ぺん太。とりあえず、この3種類のマイナー・スケールを覚えないと、例によって・・」
        ぺん太「いろんなKEYで! でしょ。」
        マエ 「よくできました!」


2 メロディック・マイナー・スケールと
    ハーモニック・マイナー・スケールの応用
& ホールトーン・スケール


        「このアラビアンなスケールをどうやって使うんだぁ〜?」という謎を早く解きたい気持ちで一杯の
        ぺん太は、マエストロの休みを半日買収することにした。

        ぺん太「マエさん、何にします?」
        マエ 「そうだなぁ〜、何にしようか?・・おっ、あれなんかいいんじゃない!」
         商店街の街灯に、もたれ掛かるように『うなぎ』の文字が風になびいていた。
        マエ 「おれ、うな重特上!」
        ぺん太「おれ、、は・・・えぇ〜い!こうなったら俺も、うな重特上!」
         頭の中で5千円札が飛んでいった。
        マエ 「あぁ〜、うまかった!ぺん太、ごちそうさん。」
        ぺん太「いいえ、腹も一杯になったことだし、じゃあ!そろそろ・・・」
        マエ 「よ〜し、次は食後のコーヒーだ!」
        ぺん太「えっ!」
        マエ 「軽くケーキ・セットぐらいにしといた方がいいぞ!」
        ぺん太「・・・・・」
         もう、どうにでもなれとヤケになるぺん太であった。
        マエ 「やっぱしケーキは苺ショートだな!」
        ぺん太「そうですか!・・」
        マエ 「ぺん太は、デザート食べないんだ?」
        ぺん太「あっ、お腹、お腹が、もたれてきちゃって・・・」
        マエ 「けっこうデリケートだね・・あっ、ところで今日やるスケールのことだけど、」
        ぺん太「ちょっと待って下さいよ〜! 今、頭を切り換えますから・・さあ、これからだ、
            忘れろ、忘れろ!・・」
        マエ 「何ブツブツ言ってんの! まぁ、いいや。新しいスケールを教える前に
            復習しておきたいんだど・・」
        ぺん太「何ですか?」
        マエ 「リディアンって、どんなスケールだっけ? う〜ん、デザートの後の一服は格別だな!」
        ぺん太「リディアンですか? え〜と、たしかコードからみて5度のメジャー・スケールと同じですよね。」
        マエ 「その通り! 別の考え方としてリディアンというスケールは、メジャー・スケール上の
            4度(ファ)を半音上げたスケールと考えることもできる。」

        譜面17
        譜面17

        マエ 「本日のレッスン、その1。 リディアン7th」
        ぺん太「リディアン7th?」
        マエ 「そう、リディアン7th。ただのリディアンでは無く、リディアン7th」
        ぺん太「どういうスケールなんですか?」
        マエ 「リディアン・スケールの第7音が、文字通り半音下がったスケールだ」
        ぺん太「良く分からないな〜」
        マエ 「OK!じゃあ、ここで楽器を使わずに頭の中で考えてみよう。」
        ぺん太「え〜・・!」
        マエ 「大丈夫だって、冷静に考えれば理解できるから。 じゃあいくよ! F7というコードがあって、
            この時にFリディアンのスケールを使うとすると、音の並びはFからみて5度である
            Cのメジャー・スケールと同じになる。ここ迄はいい?」
        ぺん太「はい、OKです!」

        譜面18
        譜面18

        マエ 「♯も♭も付かないドレミファソラシドのファからスタートして、オクターブ上のファまでが
            Fリディアンになる訳だけど、その中で7度の音、すなわちEの音が半音下がってE♭になる、
            それがリディアン7thだ!」

        譜面19
        譜面19

        ぺん太「なんか分かったような気がするんだけど、実際に音で聞いてみないとリディアンと
            リディアン7thの違いが分からないかも?」
        マエ 「いいの、いいの! 今はリディアンとリディアン7thの違いそのものは重要じゃないから。
            それよりもリディアンとして使ったCのメジャー・スケールのミの音が半音下がったんだけど、
            この音はCのスケールからみるとメジャーとか、マイナーを決定する3度の音だよね?」
        ぺん太「はい!」
        マエ 「と、いうことは、3度の音が半音下がってCのマイナー・スケールに変化したことに成る訳だ。」
        ぺん太「ちょっと待って下さいよ! Cのメジャー・スケールがマイナー・スケールに変化したと、、
            はい、ハイ、はい。理解、理解! でもマエさん、マイナー・スケールは3種類ありますよね?」
        マエ 「はい、待ってました!そこが大事なんだ! では質問その2? 
            3種類あるマイナー・スケールの中でメジャー・スケールの第3音を半音下げて
            マイナー・バージョンにしたスケールは何マイナーでしょうか?」

        譜面20
        譜面20

        ぺん太「え〜と、それは、、、6度も7度もメジャーと同じ音の並びになってるから、、
            はい!分かりました。」
        マエ 「はい、ぺん太君」
        ぺん太「メロディック・マイナーです!」
        マエ 「正解! さあ、結論が見えて来ました。すなわち、リディアン7thとは5度の
            メロディック・マイナーと同じスケールで、開始音が、その第4音から始まるスケールと
            考えることができるってことだ。」
        ぺん太「えっ、第4音からですか?、え〜と、この場合だとコードFの5度だから
            Cのメロディック・マイナーでド・レ・ミ・ファ。 ファからスタートか! なぁ〜るほど!
            でも単純に5度のメロディック・マイナーを弾くって考えてもいいんですか?」
        マエ 「はい、考えちゃって下さい!」

        譜面21 Fリディアン&Fリディアン7th
        譜面21

        ◎コードの立場から見たこのスケールには7th、9th、#11th、13thなどのテンションが含まれている。
         対応するコードは、メジャーKEYでの2度7thや♭7度7thなど。


         支払いを済ませたぺん太は、財布の中を覗いて溜息をついてから外へと出た。
        マエ 「お茶も飲んだし、そろそろスタジオに行くか?」
        ぺん太「よ〜し!・・でもマエさん、スケールって何か不思議で面白いですね。」
        マエ 「それにしても、いい天気だ!」
        ぺん太「聞いちゃいない!」
        マエ 「なぁ、ぺん太! 今メロディック・マイナーを使ったろ。」
        ぺん太「はい、、」
        マエ 「となると、次は・・?」
        ぺん太「ハーモニック・マイナーですか?」
        マエ 「あっ、パチンコ屋だ!」
        ぺん太「だめだ!」

        休日のスタジオはメンテナンスの為にパンチがいるだけで、ロビーのテーブルに置かれた
        ラジカセからは汗が出そうなラテンのリズムが流れていた。

        パンチ「おはよう! どうだった接待の方は?」
        ぺん太「うな重と、ケーキセット。あともう少しでパチンコ屋!」
        パンチ「えっ、パチンコ屋?」
        ぺん太「いや、何でもない。それよりメンテの方は?」
        パンチ「あぁ、このまま何事も無ければ、あと1時間ってとこかな。」
           「おぉ〜い、パンチ! ちょっとこっちへ来てくれ!」
        マエストロがコンソール・ブースの中で叫んでいる。
        パンチ「ハ〜イ!今行きま〜す! あと3時間かも・・ 」
        しばらくしてマエストロがロビーにやって来た。
        マエ 「さ〜て、次のヤツをやりますか〜。」
        ぺん太「はい、お願いします。」
        マエ 「じゃあ、残りのメロディック・マイナーをやっちゃおうか。」
        ぺん太「まだあったんすか?」
        マエ 「ありますよ〜! さっきのリディアン7thが理解できたんだったら、
            こっちの方がやさしいかもね。」
        ぺん太「今度はどんな名前なんすか?」
        マエ 「オルタード・スケールって言うんだけど、5度7thコードの時に良く使われる
            メロディック・マイナーのスケールで、、」
        ぺん太「ちょっと待って下さいよ! 曲のルートからみて5度すなわち、ドミナント7thの時ですね。」
        マエ 「そう!その時にドミナントの半音上のメロディック・マイナーを弾くこと。 
            簡単に言えばそれがオルタード・スケールだ。」
        ぺん太「例えば、KEYがEだったら、、5度はBで、その半音上はC。ってことは
            Cのメロディック・マイナーを弾けばいいってことすか?」
        マエ 「そうだね。理論的なスタートの音はBからになり、この場合はBオルタード・スケールと
            呼ばれることになる。要はメロディック・マイナーの第7音からのスケールになる訳だな!」
        ぺん太「だっ、だから5度の半音上のメロディック・マイナーを弾けばいいんでしょ!」
        マエ 「そんな、怒るなよ!」
        ぺん太「だって、さっきから第何音からのだとか、何度の位置から見てとか、
            そんなのばっかしなんだもん・・・」
        マエ 「今度はベソかよ〜・・・」

        譜面22 Bオルタード・スケール&Cメロディック・マイナー。

        譜面22

         ※このスケールを5度7thのコード側から見ると盛り沢山のテンションを含んでる
          強力な奴だってことが分かるはずだ!


        Bオルタード・スケール
         参考図22_1

         ※実際のプレイでは、半音上のCメロディック・マイナーをイメージすれば楽だね!


        マエ 「じゃあ、ここいら辺でハーモニック・マイナーの出番かな!」
        ぺん太「出た!アラビア風スケール、ハーモニック・マイナー!」
        マエ 「先にスケールの名前から言うと、ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・
            ビロー(HMP5thビロー)って言って、ちょっと長いんだけどね。」
        ぺん太「ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・ビロー、、 噛みそう!」
        マエ 「簡単に説明するとハーモニック・マイナーを完全5度下で使うってことだ。 
            これが全然アラビアンじゃ無いんだな。」
        ぺん太「完全5度下って?・・」
        マエ 「例えば、コードEの場合のHMP5thビローはAハーモニック・マイナー・スケール。 
            コードAの場合のHMP5thビローはDハーモニック・マイナー・スケールになり、
            完全5度下というよりは、コードからみて4度(サブ・ドミナント)の
            ハーモニック・マイナー・スケールを使うって覚えた方がいいかもね!」
        ぺん太「これって、前に出て来たドミナント・モーションと同じ考え方ですよね?」
        マエ 「偉いな、ぺん太! 良く覚えてたね。」
        ぺん太「では、サブ・ドミナントのハーモニック・マイナーってことで、いいっすか?」
        マエ 「・・・・はい!」

        譜面23
        譜面23

        ◎このHMP5thビローはマイナーKEYの5度7thからトニックに解決するような場合にも多く使われる
         (E7→Amなど)。又♭9thコードとは仲良しで相性も良い。

        ※では、実際にフレーズを弾いて、雰囲気を確かめてみよう!


        譜面24 HMP5ビロー・フレーズ
        譜面24


        マエ 「さて、最後にもうひとつ!」
        ぺん太「ちょっと待ってマエさん! 何か色んなスケールがいっぱい出て来たから頭の中が・・・」
        マエ 「分かる、分かる!ぺん太のメモリーは増設出来そうもないし・・」
        ぺん太「どういう意味ですか!」
        マエ 「いや!何でもない。 じゃあ、今日はここでやめる?」
        ぺん太「え〜、どうしようかな、本当に最後?・・・」
        マエ 「本当に最後だから・・・お願い!」
        ぺん太「しょうがないな〜!」
        マエ 「うれしい!・・・って 何か変だな。 まっ、いいか! 
            本日の締めくくりは、これまでとはまったく違ったタイプのスケールで、
            6音階で構成されたスケール、その名もホールトーン・スケール。」
        ぺん太「聞いたことあるぞ、その名前! でも今は頭が・・ウ〜、こんな大事な時に!」
        マエ 「・・独りでやってろ! でも、ちゃんと聞いてろよ!」
        ぺん太「ハイ!」
        マエ 「このホールトーンも強力に存在感のあるスケールで、すべてが1全音の間隔で並んでいる。
            ギターだと2フレット間隔になる訳だ。対応するコードは5度の7thや
            オーグメント(+5 )で、特に5度7th+5の場合は、さっきやったオルタードと
            絡めたりしてもOKだ。ホールトーンとしての使い方は2フレットずつ順番に音を
            弾くのでは無く、ランダムに弾いた方が『っぽい』雰囲気が出る。」

        譜面25 Bのホールトーン

        譜面25

         譜面25_1

        ◎フレット・ポジションの覚え方としては、ダイアグラムでも分かるように1弦ルートから
         2フレット間隔で3音下がると(7、5、3、フレ)2弦は今使わなかったフレット 、
         (6、4、フレ)同様に3弦も(6、4、フレ)、4弦は1弦と同じ(7、5、3、フレ)、
         5弦は又その間の(6、4、フレ)、6弦は戻って(7、5、3、フレ)となるのが、下行ライン。
         ではBホールトーンのラインをまとめてみると。

         下行ライン                     上行ライン
        [1弦、4弦、6弦 → 7、5、3、フレット。 ]‖[ 1、4、6弦 → 7、9、11、フレット]
        [2弦、3弦、5弦 → 6、4、  フレット。 ]‖[ 2、3、5弦 → 8、10、  フレット]


        マエ 「どう? わりと覚え易いでしょ!」
        ぺん太「はっ?・・まぁ!」
        マエ 「ダメだ、こりゃ! 相当来てるわ!」
        ぺん太「大丈夫、大丈夫! 一応メモは取ったから、え〜と・・・帰って寝よう!」

        久し振りに頭脳労働をして疲れたぺん太は、無表情のまま振り返るとドアへ向かった。
        後ろから聞こえたマエストロの声で、少しクールになると同時に、現実に引き戻された。
        「今日はごちそうさん!」


        ♪いきなりですが、練習曲です
        2小節目のE7と2カッコのA7はHMP5ビローを、4小節目のC7はミクソリディアン、
        8小節目のG7ではオルタードを使い、3連のスロー・ブルースで弾いてみよう。

        練習曲1


        ハイ! 第3章はここまでです。 徐々に手応えを感じて来てる貴方!
        上手くなっている証拠ですよ! その調子で第4章も待っててね〜!!
        (質問や感想など、メール待ってま〜す。)



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